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結婚の時代的変遷

 以前,ある自治体から婚活者に対する講演依頼を受けていたのですが,諸事情により講演できなくなりました。話そうと考えていた内容は以下です。

1. 結婚の時代的変遷
2. 婚活の実態

 上記の話のうち,今回は1についての記事です。講演の際に使用予定であった資料をもとに文章化しました。

生涯未婚率の推移

 色々なところで言われているのでご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが,生涯未婚率は年々増加しています(図1)。1970年頃まではほぼ全員が結婚していたので「皆婚時代」と言われるほどでした。ですが,1980年代から徐々に生涯未婚率は増え始め,2015年現在では,男性の約4人に1人,女性の約7名に1人が生涯未婚です。ちなみに,生涯未婚率とは50歳時の未婚率なので,50歳以降に初めて結婚する人はほとんどいないという前提でそう呼んでいます。

生涯未婚率の推移

図1. 生涯未婚率の推移。国勢調査より。1925,1935,1955,1965,1975年の高知県の値は前後の年の平均を代入。

 高知県の生涯未婚率の推移に関しては,基本的に全国よりも高い水準で推移しています。全国で生涯未婚率が増え始めた頃から,その開きが大きくなったことも見てとれるかと思います。

 これらの推移と社会的な出来事との対応を示したのが図2です。皆婚時代と呼ばれた時期はほぼ高度経済成長期に対応し,生涯未婚率が徐々に増えていったのが不景気の時代に対応している様子が窺えます。

生涯未婚率と社会的出来事

図2. 生涯未婚率と社会的な出来事。

 図3は年齢別未婚率の推移ですが,この図からも不景気の時代に,特に若い年代で結婚していない人が増えている様子が窺えるかと思います。そして,1985-1990の間に20代後半の女性の未婚率がグッと上昇しているかと思いますが,この時期に何が起きたかというと,男女雇用機会均等法の成立,専業主婦の保険料免除,労働者派遣法です。広い意味での雇用環境の変化は若い女性に大きなインパクトを与えたという見方ができるかなと思います。

未婚率の推移

図3. 年齢別の未婚率。国勢調査より。

 ちなみに,現在40歳の人が生まれた1980年は若い男性で未婚率が高いものの,30代,40代の人の未婚率はそこまで高くないという時代でした。40歳前後の婚活者の方は自分が幼い頃に生きていた時代と,自分が結婚年齢に達した時代とで,自分の現在と同年齢の人が結婚しているかどうかに大きなギャップが生まれている世代と言えます。結婚できないことは本人に帰属されることではなく(たとえば,コミュニケーション能力がないなど),時代による環境変化があるという点は頭の片隅に入れておいてもいいことかと思います。

 このように未婚化は徐々に進んでいますが,これも「結婚」という枠組みを狭い範囲に押しとどめていることが一因としてあるかもしれません。結婚は同居して,男性側に嫁いて,いずれ親との同居も考えて...みたいなように,「結婚」のかたちを絞ってしまうと,結婚するという決断は難しいものになります。現代は,そもそも結婚しないという非婚という選択肢だけでなく,週末婚(週末だけ一緒にいる),別居婚・通い婚(住む場所を別々にして時々通う),共生婚(友人同士での結婚,恋愛はいわゆる浮気・不倫で満たす),シェアハウス家族(家族とその他の人々とで一緒に暮らす)など,様々な「結婚」のかたちが現れています。選択肢を広げる方向で自分の「結婚」を考えてみると,何か新しい活路が見えてくるのかもしれません。

※ 余談:生涯未婚率は20-30%で安定する可能性もあるという発表を最近伺いました。それを踏まえると,「結婚」のかたちの多様性はますます受容されていく可能性があるかもしれません。


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