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乾燥機から出した洗濯物のタオルの山に埋もれ暖をとる終わらない残業の冬の夜

 終わらない残業の業務内容内訳の9割が洗濯っていう職種はまあまあ珍しいのではないかと。
そこそこ忙しい専門会社所属の湯灌・納棺師の残業はそんな感じです。

 回しても回しても終わらない洗濯機と、これ以上回したらたぶんオーバーヒートする乾燥機に絶望的な目線を送りながら業務を強制終了してきました。してきたけど、明日早朝出勤したら終わっていない(そりゃそうだ)洗濯物に絶望しながら業務を開始することになります。
 繁忙期がくると繰り返される日常です。
 この約10年でいったい何万枚、何十万枚のタオルを洗濯し続けてきたのか……これをしたためる未来が分かってたらカウントしたのに。残念です。
ちなみに葬祭業にも繁忙期ってのがありまして(あまり縁起良くないけど)、だいたい例年11月後半~3月頭ぐらいまででしょうか?
 お察しの通り、冬場は高齢者の死亡が急増するからです。寒くなるとどうしてもね……
 ただ、今年は異様な異常気象で気温が下がらなかった事もあり、年始ぐらいまでいいのか悪いのか暇でした(といっても社員1人あたりの1日平均4件が3件になる程度)
 そしてその反動というか先週ぐらいから急に冬になってしまったからか、いつもならじわじわくる繁忙期がある日突然どかんと始まってしまい……
現在、絶望するくらいの洗濯地獄です。
 あと腰がしぬ……

 湯灌・納棺師の業務って実は実際の納棺業務に就ている時間はそんなに多くありません。雇われだとより顕著で、だいたい1日のうち3分の1ぐらいあればいいでしょうか?もしかしたらもっと少ないかも?
残りは移動に費やす時間と準備片付け他雑用、事務作業、ミーティング、新人がいたらトレーニング……

 施行に出るまでの間は事務所で待機していますが、その間もなんかしらの準備などをして過ごしています。ほら、現場で100%のパフォーマンスを発揮せんといかん(やり直しがないので要するに失敗できない)ので、かけうるヘッジはよく分からんものまでかけるのよ。結局よく分からんままで放置されたりするけど。

 慎ましやかにしめやかに楚々とした所作で悲しみの空間をつくり出す(かなり大きく出たけどまあ間違ってはいない)私たちですが、水面下では全力バタ足で汗ダラダラ流しながら働いております。

 ところで、実際にその場に立ち会った人以外はあまりよく知られていないだろう湯灌や納棺の儀式ですが、湯灌はその名の通り故人様に最期のお風呂(シャワー浴)に入ってもらう儀式です、その後着せ替えやお顔を整えたりして納棺。対してお身拭い(古式(拭き)湯灌ともいう)やタオル清拭、お顔を整えたり着せ替えのみでお風呂(シャワー浴)は入らず納棺するのが、俗に言う納棺師による納棺。
 違いといえばそのくらい、また、その儀式に従事する人は雇われの場合両方兼ねてる場合が多いです。
 葬儀社さんがプラン(金額)で分けてたりするので。
 ただ、湯灌の場合は基本2人か3人ひと組なので、フリーの方は湯灌やらない場合(やっても古式(拭き)湯灌)が多いです。1人でも倍の時間を費やせばシャワー湯灌も出来なくはないだろうけど、湯灌車(介護の入浴介助車みたいなやつ)中古でも結構いいお値段するから初期投資にはリスクが高いですしね……
 どちらの形にせよ基本は身支度を整えたのち、納棺までご遺族に付き添いお手伝いします。

 で。
 故人にお風呂に入ってもらったらどうなるか……
 繁忙期には永遠に終わらない洗濯残業の国の住人になります。
 お風呂入るから、あがったらタオルでお身体拭くのよ、当たり前だけど。
故人さんはもう亡くなっているので当たり前ですが動けないので、私たちが拭きあげをします、もちろんタオルで。
 着せ替えの為に浴槽からのご移動ももちろん故人様は自分でできないので、タオル担架でお布団にお連れします、でっかいバスタオルで。
 お身体洗ってる最中は、ご遺族は基本お立ち会い前提なので故人様剥き出しは恥ずかしい倫理的にもアレなので、お身体にはお肌が見えない様にカバーや大判バスタオルをお掛けします、うちの会社はバスタオル……でっかいやつね。
 一件の湯灌・納棺が終了した時点でだいたいどこの業者も大判バスタオル2~3枚、フェイスタオル7~12枚くらいの洗濯物が出来上がります。
うちの営業所は忙しいと1日20件ぐらいが連日続いたりする(車5台~6台)ので、全ての車が帰社後に出来上がる洗濯物は20×13枚=260枚以上……それを帰社後に洗濯し始めて翌日以降のタオルの準備にあてていきます。
ちなみにうちの営業所にある洗濯機は3台(大容量だが家庭用)、乾燥機はガス乾だけど1台(家庭用)です。
 終わるわけないじゃん……

 職員皆が皆、さすがに洗濯のために残業出来ない(というか洗濯機の台数を考えたら1人2人で充分)ので、だいたいその日の夜間電話当番の人が順繰りに会社に残る感じです。
 ひたすら洗濯機回して営業所とか倉庫に干しまくって乾燥機回しまくって畳んでまた洗濯機回してまた干して……エンドレス…でもってeternal…

 そんな状況ですが、明日の私の出勤時間は午前6時(規定始業は7時30分だけど)です。
 いま帰ってきたのですけどね。

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