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アイドル番組と大人の事情

韓国のアイドル育成サバイバルオーディション番組『プロデュース101』が、昨晩のデビューメンバー11人の確定・発表をもって終了した。最終回は生放送で、私はネット配信でリアタイ視聴してしまったので超寝不足である。順位発表のドラムロールが長すぎて、3時までやってたんだもん。

私の推しの中には生き残った子もいたけど、残酷な落ち方をした子もいて、それはもう大人がこんなことやっていいのか、というような人生の弄び方で、海外からお気楽に視聴しているだけだった私のようなおばちゃんでも後味が悪く、胃が重くなり落ち込んでいるので、本人や家族はどんな気持ちだろうと思うと余計に鬱い。

番組的な盛り上がりのために合格人数を発表直前になって変更し、そのために本来なら生き残りの順位だったのに落とされた子。「悪魔の編集」と盛んに批判されるほど変な切り取り方をして、性格悪い子みたいに放映されちゃった子。放送期間の途中にもいろんな批判があって、その都度さまざまな議論が芸能欄を賑わせ、番組は社会現象化した。

視聴者投票は空前の盛り上がりをみせ、最終回でセンターに輝いた子の得票数は、現役アイドルのちょっと微妙なレベルのグループのファンクラブの会員数を軽く飛び越えるようなものになった。これは局としても看過できない数字だろうし、手抜きのない花道が用意されたデビューとなる見込み。この番組で選抜された子たちのグループは、この夏から期間限定で活動し、一年半後に解散する。

この短期間モデルというのも、商売としてはうまい。話題性とファンの熱が冷めないうちにガンガン売って、熱狂のピークをすぎる前に解散。リスクは最低限、あがりは最大限。しかもその期間中は、番組を作った局の専属契約なのだ。関わる大人はみんなウハウハである。

私は夕ニャンにもAKBにも朝ヤンにも興味ない勢で、少し前に流行ったお笑い系のグランプリとかもてんで見てなかったので、いわゆるサバイバル系のオーディション番組を継続してみたのって、これがほぼ初めてだった。私は性格的にすぐ大人の事情を勘ぐってしまうから、我を忘れては乗り切れない、みたいなとこもあったし。

それでも、そういう大人の事情に乗っかって踊るアイドルの卵たちと、その子たちをデビュー組に当選させようとするファンによるガチの選挙活動の狂騒曲は、側で見てると面白かったし、中にはまるで自信がなくて下ばっかり向いてた子が、番組で仲良くなった子たちに勇気付けられ、ぐっと成長してアイドルらしくなっていくなんていうドラマもあって、こういう番組も悪くないなーと思ったりもした。

メンバー選抜のために仮のグループを組んでのパフォーマンス合戦が行われ、youtubeでの再生回数があっという間に300万回を超えたりだとか、そういう動きが今どきは別の国にいてもある程度リアルタイムで追えるので、余計面白いのだ。

そんな感じで徐々に番組にはまって行き、こんな大勢見分けがつかないとか言ってた参加者の顔を覚え推しちゃんもできて、ついには韓国語なんかわかりもしないのにリアタイ視聴までした最終回で、推しの一人がトラウマになるレベルでのどん底突き落としにあったので、私の目は今死んでいる。

その子は、主に事務所の力不足が原因でどうにも中途半端な売れ方に留まっていた現役アイドルグループのリーダーだった。グループ活動を事務所の意向で突然中断されて、デビューしてたのにもう一度「練習生」という身分に落とされ、再度デビューを目指せと言われて番組に出演。

爆発的には売れてない、とはいえ音楽番組で一位になったこともあるし、そんなグループがわざわざ活動停止して参加…?というので、そこそこ話題になった。この子たちが私の推しグループと同じ事務所だったので、この番組にもちょっと興味を持った、というのがこの番組を知ったそもそもの流れだったのだ。

本人たちは崖っ淵、でも視聴者からはプロが出るなんて反則だとコテンパンに叩かれ、番組の一番最初の方で行われた実力判定テストの評価も現役アイドルだったのにイマイチ、というほんとに悲惨な始まり方だった。本人たちも「なぜ自分たちはここにいるんだろう」と呆然としている感じは否めず、この子たちが晒されるの見るのがつらいから見るのやめよう、と思うレベルで惨かった。先生役で出演していた同じ事務所の先輩女性タレントが、あまりに可哀想だといって涙を流すシーンまであったほど。

だけど、私の推しちゃんそのいちは、逆風に晒され、理不尽な叱責を受けても決して他人のせいにせず、黙々と練習してて、素人同然の低レベルのクラスの参加者の子たちにダンスも歌もラップも教えてあげ、他の事務所の候補者の子たちからも慕われて、そういう人柄が番組で放送されるうちに人気ランクをあげていき、途中集計ではランキング一位にもなってた子だった。私もぶっちゃけ顔とかさほど好みではなかったのだが、あまりにもいい子なので推さずにいられなくなった、みたいな感じだったのです。

なのに最終回、蓋を開けてみると、当落はギリらしいと見られていた同じグループの別の子が生き残り、当確とみられていた推しの子が落ちた。グループから参加していた4人のうち、合格者は1人に留まった。

最終回の投票締め切りの段階で、おそらく番組側がファンを煽る目的で、当落線ギリギリの子たちを「この子たちがギリで落選しそうだよ」と紹介した結果、ファンの投票行動に影響を与え、大番狂わせのどんでん返しに繋がったのでは、という分析がなされている。

グループの中でただ一人選ばれてデビューが決まった子のあまりに辛そうな泣き顔と、番組ディレクターの要らん煽りで落ちた子の、悟りきったかのような穏やかな微笑みを見てたら、胸が詰まっちゃって。

でもこれをひっくり返したら、もっと前の段階でいろんな大人の事情で落ちた子たちのファンだって黙ってない。彼らはこれからこの結果を受けて、別の道を歩き出さなきゃならないのだ。推しちゃんは最初のデビューが十代だったので、まだ22歳とかなんですよね。とはいえ兵役がタイムリミットな韓国では彼らに残された時間は長くはない。

考えてみると、どんなに残酷でも、こうしてテレビに映って私みたいな外国人のおばさんにも名前と顔を覚えてもらえた子と、実力もあるしなんのトラブルも起こさなかったのに、(逆にいい子だったからこそ)テレビ的には面白くなくて、放送ではほとんど写りもしないまま脱落して消えて行った子たち、どちらが可哀想だったのかなぁ、とも思う。

テレビのバラエティ番組ってほんとに因果なものだ。プロデューサーはきっとこんな風に視聴率や話題性と引き換えに若い子の人生を食い物にした罪でハゲるだろうし(むしろハゲてしまえ)、私たち視聴者もその同じ食卓で若いアイドルの卵たちの人生を食い物にしたんだよな、と思うとそれもまた鬱い。私は海外から見てるだけなんで投票権とかないんですが、それでも。

今回デビューが決まった子たちの中には、芸能事務所に所属してない個人の練習生で、とりたてて美少年でもないのだがとにかく歌の上手さで勝ち抜いて上位入選した子もいたし、なかなかデビューが決まらぬまま古参の練習生になってしまった25歳オーバーの子が、ようやくデビューのチャンスを掴んだ、というドラマもあった。こういう子たちが陽の目をみる機会を得たことを、純粋に楽しむ番組だったらよかったのにな…

何年も苦楽を共にしてきたグループの仲間がバラバラになってしまうという結果は、最初から想定の範囲内ではあったけど、実際にそれを見せられることがこんなにキツいとは。結局事務所は何をしたかったのか、このまま解散なのかと古参のファンの怨嗟の声が聞こえる中、彼らが一年前にリリースした曲が、今更ながらデジタル音源一位になったというニュースが流れてきた。とどめの鬱だ。

こんな感じで最後の最後でほんとにガックリしちゃったけど、それ以外の私の推しの子たちは、かなりの高確率でデビュー組に入った。それは素直に嬉しい。伸び盛りの子ばかりだ。一年半の活動を終える頃には一皮も二皮もむけてぐんと成長してるはず。

デビューが決まった子たちが健康で怪我もせずに活動をして、アイドルとして輝きながら健やかに成長し、今回そのタイミングを掴めなかった多くの子たちも、いつかチャンスが巡ってきた時には自分がやりたかった道を極めることができるよう、祈るばかりなんである

なお、落選組の中で推してた子たちが番組の終了後も事務所の垣根を越えてお互いに仲良くしてて、インスタに写真なんかあげてくれるのが心の支えです。みんな、いい形で夢が叶うといいね。応援してるよ!


【追記】
この記事をUPしてから、推しちゃんの所属事務所側が年内に、プロデュース101の企画でデビューしたメンバーを除いた残りメンバーで音楽活動を行う予定である旨のコメントを出しました。

この盛り上がりの波に乗らない手はない、ということでしょう。実際、活動休止中なのにグループの公式ファンサイトの登録者の人数増えたりしてたみたいですし。

これだって、番組内での活躍できなきゃ契約更新せずにクビにして損切り、あたれば乗っかってお商売して投資分回収ということで、事務所はどう転んでも損しないんだもんなぁ…

そう思うと、二重のえげつなさを感じざるを得ませんが、でもこうやって芸能活動を続けるために頑張ってたんだもんね。苦労したぶん、今度のチャンスこそは事務所も本気で力いれて、いい結果を出させてやって欲しい。お互いに、離れた仲間と同じ土俵で戦えるレベルをキープしてこそ、いつかまた一緒になれる日も来るんだろうから。本当に、いい形で夢を叶えられますように…!

#プロデュース101 #けーぽ #アイドル #ヲタの細道

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