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映画「永い言い訳」

西川美和監督作品。生きてる監督の中ではダントツで好きで、本作も公開をずーっと心待ちにしてて小説も映画の公開までは…とお預けにして読まずに我慢してたのを、仕事帰りにやっと観に行けました。

本当にこの人は「弱くて愚かで甘ったれで自意識過剰な鼻持ちならないイケメン(※微妙に田舎出身)」みたいのを描かせると、右に出る者がいないなーと思う。「ゆれる」のオダジョーとか「ディア・ドクター」の瑛太くんとかも。

あと、セックスのシーンにえも言われぬ冷徹さがあっていいんだよねぇ…「ゆれる」のオダジョーの「舌、出せよ」もよかったし。今回の作品で愛人役の黒木華が下着を履き直すとことかがすごく生々しくていい。なんかこう、目を開けたままキスしてそうな人が撮るセックスシーンだよなぁって。

シブがき隊時代を知る世代として腹の出たモッくんは愛おしかった。深津絵里ちゃんはこの世のものとは思われぬ美しさでしたご馳走様でした…

監督のこれまでの作品の中では、一番優しさがこもっていた気がする。子役の出演シーンが多かったからかも知れないし、監督がパンフで語っていたように、すごくゆったりしたスパンで撮影された映画だったからかも知れない。作品が構想されたのが2011年、あの震災の年だったということが、少なからず関係しているのかも知れない。

「夢売る二人」「蛇イチゴ」にも通じるような、身近でありながら得体の知れない存在である家族、秘密の暴露、といったモチーフは繰り返されるけど、見終わったときの感覚は穏やかで、ちょっとこれまでになかった作風のように感じた。

本作の主人公のキャラクターを自分自身にとても近い、とインタビューで語っていた西川監督だけど、その弱くて孤独な男に注がれる優しい眼差しもまた監督自身の眼差しであるのだろうなぁと思った。リアリズムの残酷さと優しさのバランスが絶妙で、上手いなぁ…と唸らざるを得ない。この人と、渡辺あや脚本の作品にはがっかりしたことがない。

進化し続ける人の新作を楽しみに出来るのは幸せだ。師匠である是枝監督が近頃ちょっとパッとしないのに比べると、西川監督のエッジのキレは抜群で、まだまだ進化しそうだなと思う。また何年か、西川監督の新作を楽しみに生きていこうと思います。

パンフちょっと高いけど(1000円)、インタビューとか制作ノートとか30分超えのお土産DVDまでついてて超お得なので、劇場でみた方は是非ご購入を。本木雅弘が監督によって剝き身にされていくさまを堪能できます。

星は当然★★★★★。ただし恋人との初デートで観に行く映画じゃないので注意。お預けにしてた小説は、これからゆっくり読みます。

161019@新宿東宝シネマ

#映画 #永い言い訳 #西川美和

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