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しゃっくりが止まらない女の子。

必要な買い物があって、休日のデパートに行った。ランチタイムのレストランも混んでいて、しばらく待たされたのだけど、ひと組前に、4人家族(両親と小学校の高学年ぐらいの女の子2人)が待っていた。

女の子たちは、それぞれ父親と母親のものらしいスマホを持って一心不乱にゲームをしていて(たぶん)、いまどきは子供を待たせるのも楽になったんだなぁ…と幼い息子のクイズ責めにあっていた頃を思い出していたのだが、私の隣に座っていたほうの女の子(たぶんこっちがお姉ちゃん。もう1人の子よりも背が高く、手足がバレリーナのようにすらっと長くて、いかにも小学生っぽく幼いデザインの子供服が少しアンバランスに見えるほど、大人びた顔立ちだった。)が、時々ビクっとするので気になった。

最初、ゲームに反応して身体が動いてるのかな、と思ったのだけど、それにしては手指の動きとビクビクがあまり連動していない。女の子がビクッとするたびに、座っている椅子の足が床を擦ってズッ、ズッと音をたてるので、なんだろうと思ったのだが、しばらく様子を見て『ああ、しゃっくり。』と合点がいった。

マスクをしているので表情はよくわからず、隣にいる妹や、その向こう側に座っている両親は、お姉ちゃんのしゃっくりに気づいている様子もない。

定期的にビクッ、ビクッと体を震わせて、無言でしゃっくりを我慢しながらスマホのゲームに集中している女の子を見ながら、いま、彼女のしゃっくりが止まらない状況を知っているのは、彼女自身と私だけなんだなぁ…と不思議な気持ちになった。

やがてウエイターが「◯番でお待ちのお客さまー。」とのんびりした声で呼び出しにきて、スマホに集中していた女の子たちは2人ともぴょんと椅子を飛び降り、両親の後について店内に姿を消した。この間、父親と母親は何か言葉を交わしていたが、娘たちに声をかけることはなく、結局彼女たちの声は一度も聞かなかった。

食事が出てくるまでに、無事にお姉ちゃんのしゃっくりが止まったのかどうか、それだけが気になっている。

(※写真はデザートのカボチャプリンです。満腹満足。)

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