松本清張氏『神と野獣の日』
この本、うっかり読んでしまった、という感じなのです。
亡き母は、氏の作品が大好きで小説をたくさん持っていました。2020年頃、実家の整理を兼ねて10冊程持ち帰った中に、この本がありました。
表紙にはきのこ雲。何か、穏やかではなさそう。うわー、すごい話やったー。
あらすじ。
首相官邸に届いた「重大事態発生」の電話。某国(Z国としている)から東京に向かって核ミサイルが5発誤射!1時間程度で東京に到着!!
政府首脳陣そして一般民衆の極限状態を、描きます。人間はパニックになるとこんな状況に陥るのか。暴行、略奪、自殺、殺人(←不可抗力だと思いたい)何でもあり。無政府状態だから、捕まらない。
小説とはいえ、背筋が寒くなる…と思う反面、震災、コロナ禍そしてロシアのウクライナ侵攻を受けて、良い悪いはともかく身近に感じてしまいました。
初出が1963年の冷戦時(キューバ危機の翌年)なのですが、今読んでも十分心に響きます。それは、切実だから?何にせよ、氏の先見の明を感じます。
私は、私達日本人は現実にこんなことが起こったらどうなるのだろう?間違いなく取り乱すよね。でも、重複するけど、幾多の災害にコロナ禍、問題行動はたくさん起きたけど、節度ある部分もあったから、ここまでにならないのでは。というのは楽観的かな?
氏には珍しいSF的作品です。自称「科学は苦手」で避けていたそうです。それでもこのテーマを選んだのは、核や戦争を大変憎んでいたからではないのかな、と思います。
うっかり読んでしまったと書きましたが、「平和」とは何かと改めて考える機会になりました。
で、タイトルの「野獣」は困難を前に豹変する人間だと思うのですが、「神」は、困難を受け入れる人間ということなのかな?
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