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10時間越えのバスライド




いつぶりだろう。



10時間越えのバスライド。


ゆらゆら、どこかに引っ張られていくように、大きく揺られていく。


乗車。

休憩のアナウンス。

合計3回休憩するらしい。



照明は暗くなったが、後ろでヒソヒソとお喋りは続く。


ああ、こういう時に限ってイヤホンを忘れるんだ。





あれは、2年前のブラジルだった。


サンパウロから友人の住むTrês Lagoasまで、バスで10時間強かけて旅をした。

バスは二段バス、私は出入り口から一番近い席だった。



アナウンスが入る。


何だかさっぱりわからない。
耳を塞ごうとイヤホンを探す。



いくらバックの中をゴソゴソしても見つからない。

ああ、こんな時に限ってイヤホンを忘れてしまった。



下を向いていてはバス酔いするので、窓の外の遠くを眺めようとする。

サンパウロ、壁には自由なアートが施されている。
遠くを眺めようとしても、眼差しは路上のドラマに奪われる。





揺られること数時間。



運転手らしき人物の大きく破れた声に続き、人々は次々とバスを去っていく。
最初は分からず混乱するが、乗り換えでも到着ではない。



休憩だ。




外は、モワッとしていた。

エコノミー症候群ちっくで、千鳥足になる。



何時に帰ればいいか分からないので、運転手に手話で休憩時間を確認する。


何やら調理済みのものが販売されているが、手は出さないでおく。
優雅に食べている間においていかれてしまっては大変だ。




バスのもとへ帰る。



似たようなバスが何台も連なり、一瞬自分のバスが分からなくなる。
なんとか見つけ出し、無事生還。





遠い目と更に遠い目(爆睡)を何度か繰り返す。




ふと、やっと遠くを眺めることができていることに気がつく。

近くに繰り広げられるドラマはない。




ひたすら続く直線を、ひたすら四輪が転がっていく。


いつの間にか左右の揺れは上下の揺れに変わっていた。

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