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彗星の孤独

「彗星の孤独/寺尾紗穂」

音楽家・文筆家である寺尾紗穂さんのエッセイ集。

家族や仲間、日常、音楽、自然、歴史など、さまざまな方面からつづられる文章と、著者の好奇心、探求心、行動力に驚きっぱなしでした。
ほんとうにさまざな分野への興味や考えに圧倒されるのですが、
その中でも心にとめておきたいと思ったのは、
《文学や芸術は、一個人がもっと自由に表現してもよいと思う》
《複雑に変化しつづける世界で、完璧で美しいものばかり求めるのではなく、矛盾したものを抱える自分を生きていく》
ということです。

わたしは自分の気持ちを正確に表現したり、文章をつづることは苦手ですし、芸術的な才能もありません。
昔から、文章を読むのは好きなのに、読書感想文や国語の授業はほんとうに苦手。
いいたいことがないわけじゃないけれど、自分の頭や心で思ったり考えたりしたことを狂いなく伝えられる言葉が分からなかったり、自分が思うことはみんなも思っているだろうからあえて伝えなくてもいいと思ったり。
そもそも文章力や綺麗な言葉が浮かばないから表現しても無駄だと思ったり。
そう考えてしまうのは、わたしが綺麗で純粋なものに対する憧れをもっているにもかかわらず、自分の心にはそんな美しいものはない、一点の曇りもない気持ちなど持ちえないとあきらめている部分がある、というのもひとつの要因だと思います。

けれど、もともと人間は矛盾を抱える生き物だし、正確に表現できる感情ばかりではない。
たとえ人と同じようなことを思っても、完璧に合致する感情や思考は少ない。
世界だって複雑で変化していくものなのだから、完璧を追い求めず、不透明なものも素直に表現していけばいいのではと勇気をもらいました。

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