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月のぶどう

「月のぶどう/寺地はるな」

亡き母が経営していたワイナリーを継ぐため、ワインづくりに励む双子の姉弟の物語。

尊敬する母を目指し、理想のワインづくりに取り組む「出来のいい」姉。
母が亡くなって仕方なくワインづくりを始めた「出来のわるい」弟。

ワインづくりに誇りをもって取り組む姉は、「出来がいい」からこそ人に弱みを見せられず、大きい理想にひとり抱え込む場面もありながら、理想のワインづくりに奮闘します。
幼いころから「出来がわるい」と言われてきた弟は、周囲から尊敬されてきた亡き母や姉に劣等感を覚えつつ、夢みていた仕事ではないワインづくりに対して、自分が携わる意味を考えながら向き合っていきます。
姉弟や親、上司・同僚とのあらゆる比較、仕事への向き合い方など、姉弟両方の視点で話が進みます。

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自分にはない熱意や知識、技術をもつ人に対して、どうしても羨ましさや憧れ、嫉妬を覚えてしまうもの。
どんな人もそれぞれ違う個性を持っていると言われても、他人と比較せずに生きるのは難しいものだと思います。
それでも、この小説を読むと、《人は自分にできることをやっていくしかない》のだと、あらためて感じさせられます。
どんなに自分のことを嫌いでも、他人を羨ましく思っても。

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