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余白を再定義するyohaku公式。 noteでは本や哲学の考察など。 情報が溢れ、資…

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余白を再定義するyohaku公式。 noteでは本や哲学の考察など。 情報が溢れ、資本主義の中であらゆるものが相対的に効率化され続ける現代で、最後に余白を意識したのはいつですか。そんな"余白"に違和感を感じた方は是非。 https://www.yohaku.company/

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  • Insight

    現代の中で余白を感じる日々を。豊かな後悔の多い人生を。 様々な本や哲学や事象からあなたの人生の余白につながる記事を執筆していきます。

  • 正欲

    朝井リョウさんの著書「正欲」について、yohakuの観点から本の内容を紐解くマガジンです。

  • 世界は贈与でできている

    近内悠太さんの著書「世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学」について、yohakuの観点から本の内容を紐解くマガジンです。

  • それでも人生にイエスと言う

    ヴィクトール・E・フランクルの著書「それでも人生にイエスと言う」について、yohakuの観点から本の内容を紐解くマガジンです。

  • 反応しない練習

    草薙龍瞬さんの著書「反応しない練習」について、yohakuの観点から本の内容を紐解くマガジンです。

記事一覧

セクシュアリティと社会規範 2/4「正欲」

「正しい欲望」の探求とセクシュアリティの社会的構築  昨日から扱ってきた朝井リョウさん著の『正欲』の中核を成すテーマの一つは、セクシュアリティと社会規範の複雑な…

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14時間前
7

多様性の限界と想像力の境界線 1/4「正欲」

多様性言説の功罪と社会的包摂の課題  現代社会において「多様性」という言葉は、ほとんど神聖化されたかのような地位を獲得しています。企業や教育機関、メディアなど、…

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資本主義の「すきま」を埋める倫理学 3/3「世界は贈与でできている」

格差社会における贈与の役割  今日でいよいよ「世界は贈与でできている」を締め括っていきます。昨日はテクノロジーという視点からの贈与を捉えましたが、今日はより具体…

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贈り物の進化論 2/3「世界は贈与でできている」

 昨日からは「世界は贈与でできている」を元に、贈与論の根源とその批判、贈与論の系譜などを包括的に論じてきました。今日はより具体的にイメージしやすい「贈与」という…

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贈与で紡ぐ社会 1/3「世界は贈与でできている」

贈与理論の系譜と現代的展開  本日からは近内悠太さんの著書「世界は贈与でできている」を解説していきます。贈与という言葉は聞き馴染みがないかもしれません。贈与の概…

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人生にイエスと言う理由 3/3 「それでも人生にイエスと言う」

人生への「イエス」  「それでも人生にイエスと言う」というタイトルに象徴されるように、フランクルの思想の核心には、人生に対する根本的な肯定があります。しかし、こ…

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人生の問いに応える 2/3「それでも人生にイエスと言う」

人生の問いに答える  今日は昨日に引き続き、フランクルの「それでも人生にイエスと言う」の核心に迫っていきます。フランクルの哲学の根底に常にあるのは人生の意味をめ…

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若きフランクルの精神的旅路 1/3「それでも人生にイエスと言う」

「夜と霧」の著者とフロイト・アドラーとの出会い  今日からは以前「夜と霧」で紹介したヴィクトール・E・フランクルが執筆している「それでも人生にイエスと言う」をテ…

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現代社会における「反応しない練習」の応用と課題"反応しない練習4/4"

 3部では、「反応しない練習」の具体的な実践方法と日常生活への応用について詳細について説明してきました。4部では、これらの非常に興味深く、かつ効果的な技法を、私た…

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「反応しない練習」の実践方法と日常生活への応用"反応しない練習3/4"

 第2部では、現代の心理学や神経科学の視点から「反応しない練習」の効果とその基盤について探究しました。マインドフルネス瞑想、認知行動療法、そして最新の神経科学研…

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「反応しない練習」の心理学的効果と神経科学的基盤"反応しない練習2/4"

 第1部では、「反応しない」ことの歴史的・哲学的背景を探りましたが、第2部では、現代の心理学や神経科学の視点から「反応しない練習」の具体的な効果とその基盤について…

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「反応しない」ことの哲学的・歴史的背景"反応しない練習1/4"

 「反応しない」という態度は、古くからさまざまな文化や哲学の中で探求されてきました。第一部では、仏教思想、ストア派哲学、現代哲学における「反応しない」ことの意味…

30

成功は本当に努力の賜物か "実力も運のうち4/4"

運の平等主義  昨日はサンデルの能力主義批判を取り上げ、個人の才能や努力、そして成功をどのように評価し、報いるべきか、また社会の公正さをどのように実現すべきか。…

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能力主義批判の核心 "実力も運のうち3/4"

「才能」の概念の再検討  昨日は教育システムにおける不平等の再生産や、労働市場における格差の拡大、そして能力主義がもたらす政治的分断の問題に焦点を当てて考察を進…

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能力主義がもたらす社会的分断と不平等"実力も運のうち2/4"

 前回の部では、能力主義社会の起源と発展を振り返り、啓蒙思想や産業革命を通じて能力主義が形成され、教育制度や労働市場に制度化されてきた経緯を探りました。啓蒙思想…

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2週間前
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能力主義社会の起源と発展"実力も運のうち1/4"

 マイケル・サンデルの『実力も運のうち』は、現代社会における能力主義の問題点を鋭く指摘し、私たちに重要な問いを投げかけています。本書は、私たちが当然視してきた「…

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2週間前
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セクシュアリティと社会規範 2/4「正欲」

セクシュアリティと社会規範 2/4「正欲」

「正しい欲望」の探求とセクシュアリティの社会的構築

 昨日から扱ってきた朝井リョウさん著の『正欲』の中核を成すテーマの一つは、セクシュアリティと社会規範の複雑な関係です。主人公たちの水性愛は、一般的な性的指向の枠組みを大きく逸脱しています。この設定は、私たちに「正常」な性的欲望とは何か、そしてそれを誰が定義するのかという根本的な問いを投げかけます。

社会学者のミシェル・フーコー(1976)は、

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多様性の限界と想像力の境界線 1/4「正欲」

多様性の限界と想像力の境界線 1/4「正欲」

多様性言説の功罪と社会的包摂の課題

 現代社会において「多様性」という言葉は、ほとんど神聖化されたかのような地位を獲得しています。企業や教育機関、メディアなど、あらゆる場面で多様性の重要性が説かれ、それを尊重することが「正しい」態度とされています。しかし、朝井リョウさんの『正欲』は、この一見美しい理念の裏に潜む深刻な問題を鋭く指摘します。

 <<<<<<<<< ここからは一部ネ

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資本主義の「すきま」を埋める倫理学 3/3「世界は贈与でできている」

資本主義の「すきま」を埋める倫理学 3/3「世界は贈与でできている」

格差社会における贈与の役割

 今日でいよいよ「世界は贈与でできている」を締め括っていきます。昨日はテクノロジーという視点からの贈与を捉えましたが、今日はより具体的に現代社会における贈与論を考察していきます。

現代社会において、経済的格差の拡大は深刻な問題となっています。このような状況下で、贈与はどのような役割を果たすことができるでしょうか。

フランスの経済学者トマ・ピケティ(1971-)は、

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贈り物の進化論 2/3「世界は贈与でできている」

贈り物の進化論 2/3「世界は贈与でできている」

 昨日からは「世界は贈与でできている」を元に、贈与論の根源とその批判、贈与論の系譜などを包括的に論じてきました。今日はより具体的にイメージしやすい「贈与」という行為について取り上げていきます。

デジタル時代における贈与の変容

 デジタル技術の急速な発展は、贈与の概念と実践に大きな変革をもたらしています。インターネットとソーシャルメディアの普及により、贈与の範囲と形態が大きく拡大し、新たな可能性

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贈与で紡ぐ社会 1/3「世界は贈与でできている」

贈与で紡ぐ社会 1/3「世界は贈与でできている」

贈与理論の系譜と現代的展開

 本日からは近内悠太さんの著書「世界は贈与でできている」を解説していきます。贈与という言葉は聞き馴染みがないかもしれません。贈与の概念は、人類学や社会学、哲学の分野で長年にわたり研究されてきました。その起源は、フランスの社会学者マルセル・モース(1872-1950)の画期的な著作『贈与論』(1925)に遡ります。モースは、ポリネシアやメラネシア、北米先住民社会などの「

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人生にイエスと言う理由 3/3 「それでも人生にイエスと言う」

人生にイエスと言う理由 3/3 「それでも人生にイエスと言う」

人生への「イエス」

 「それでも人生にイエスと言う」というタイトルに象徴されるように、フランクルの思想の核心には、人生に対する根本的な肯定があります。しかし、これは安易な楽観主義ではありません。フランクルが主張するのは、どんな状況にあっても、私たちには「応答する能力」(responsibility)があるという倫理的な立場です。これまで2回に渡りその内容を深掘りしてきました。

フランクルはこう

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人生の問いに応える 2/3「それでも人生にイエスと言う」

人生の問いに応える 2/3「それでも人生にイエスと言う」

人生の問いに答える

 今日は昨日に引き続き、フランクルの「それでも人生にイエスと言う」の核心に迫っていきます。フランクルの哲学の根底に常にあるのは人生の意味をめぐる探求です。しかし、フランクルは従来の「人生の意味とは何か」という問いの立て方自体を根本から転換します。彼によれば、重要なのは「私たちが人生に何を期待できるか」ではなく、「人生が私たちに何を期待しているか」なのです。

フランクルはこう

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若きフランクルの精神的旅路 1/3「それでも人生にイエスと言う」

若きフランクルの精神的旅路 1/3「それでも人生にイエスと言う」

「夜と霧」の著者とフロイト・アドラーとの出会い

 今日からは以前「夜と霧」で紹介したヴィクトール・E・フランクルが執筆している「それでも人生にイエスと言う」をテーマに取り扱っていきます。「夜と霧」とはまた違う視点で私たちに気づきを与えてくれるこの本を深く読み解いていきましょう。

20世紀初頭のウィーンは、芸術、文学、科学の分野で革新的な思想が花開いた文化の中心地でした。1905年、この知的な熱

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現代社会における「反応しない練習」の応用と課題"反応しない練習4/4"

現代社会における「反応しない練習」の応用と課題"反応しない練習4/4"

 3部では、「反応しない練習」の具体的な実践方法と日常生活への応用について詳細について説明してきました。4部では、これらの非常に興味深く、かつ効果的な技法を、私たちが日々直面している現代社会特有の複雑な多くの課題に対してどのように適用できるのかを説明していきます。

デジタル時代における「反応しない練習」

 現代社会において、我々は常に最新のテクノロジーに囲まれています。特に、スマートフォンやタ

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「反応しない練習」の実践方法と日常生活への応用"反応しない練習3/4"

「反応しない練習」の実践方法と日常生活への応用"反応しない練習3/4"

 第2部では、現代の心理学や神経科学の視点から「反応しない練習」の効果とその基盤について探究しました。マインドフルネス瞑想、認知行動療法、そして最新の神経科学研究が、「反応しない」ことの重要性と有効性を裏付けていることを説明してきました。

特に、取り上げたそれぞれの研究が、「反応しない」ことが単なる心理的テクニックではなく、脳の機能そのものを変化させ、より適応的な感情体験を可能にする積極的な戦略

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「反応しない練習」の心理学的効果と神経科学的基盤"反応しない練習2/4"

「反応しない練習」の心理学的効果と神経科学的基盤"反応しない練習2/4"

 第1部では、「反応しない」ことの歴史的・哲学的背景を探りましたが、第2部では、現代の心理学や神経科学の視点から「反応しない練習」の具体的な効果とその基盤について掘り下げます。ここでは、マインドフルネス瞑想、認知行動療法、神経科学のアプローチを通じて、「反応しない」ことがいかに心身の健康に寄与するかを見ていきます。

マインドフルネス瞑想と「反応しない」こと

 現代心理学において、「反応しない練

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「反応しない」ことの哲学的・歴史的背景"反応しない練習1/4"

「反応しない」ことの哲学的・歴史的背景"反応しない練習1/4"

 「反応しない」という態度は、古くからさまざまな文化や哲学の中で探求されてきました。第一部では、仏教思想、ストア派哲学、現代哲学における「反応しない」ことの意味とその発展を詳しく見ていきます。

仏教思想における「無執着」の概念

 仏教における「反応しない」という態度は、「無執着」(むしゅうちゃく)の概念と密接に結びついているようです。仏教の開祖である釈迦(紀元前5世紀頃)は、人間の苦しみの根源

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成功は本当に努力の賜物か "実力も運のうち4/4"

成功は本当に努力の賜物か "実力も運のうち4/4"

運の平等主義

 昨日はサンデルの能力主義批判を取り上げ、個人の才能や努力、そして成功をどのように評価し、報いるべきか、また社会の公正さをどのように実現すべきか。そうした問いに対する答えを探ってきました。「実力も運のうち」の解説最終回となる今日は、サンデルが提案する新たな社会ビジョンについて取り上げていきましょう。

サンデルは、能力主義の問題点を克服するための一つの方向性として、「運の平等主義」

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能力主義批判の核心 "実力も運のうち3/4"

能力主義批判の核心 "実力も運のうち3/4"

「才能」の概念の再検討

 昨日は教育システムにおける不平等の再生産や、労働市場における格差の拡大、そして能力主義がもたらす政治的分断の問題に焦点を当てて考察を進めてきました。今日はよりその核心に迫った考察を進めていきます。

マイケル・サンデルの能力主義批判の核心は、私たちが「才能」や「努力」と呼んでいるものの本質を問い直すことにあります。彼は、個人の才能を純粋に個人の所有物とみなす考え方に疑問

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能力主義がもたらす社会的分断と不平等"実力も運のうち2/4"

能力主義がもたらす社会的分断と不平等"実力も運のうち2/4"

 前回の部では、能力主義社会の起源と発展を振り返り、啓蒙思想や産業革命を通じて能力主義が形成され、教育制度や労働市場に制度化されてきた経緯を探りました。啓蒙思想家たちが提唱した能力主義は、個人の才能や努力に基づく社会的地位を追求しましたが、産業革命がもたらした急激な社会変化は、新たな格差と社会問題を生み出しました。

第二部では、現代の能力主義社会がもたらす具体的な問題と課題について詳しく検討して

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能力主義社会の起源と発展"実力も運のうち1/4"

能力主義社会の起源と発展"実力も運のうち1/4"

 マイケル・サンデルの『実力も運のうち』は、現代社会における能力主義の問題点を鋭く指摘し、私たちに重要な問いを投げかけています。本書は、私たちが当然視してきた「実力社会」の在り方に疑問を投げかけ、より公正で包摂的な社会の可能性を探るものです。

読者の皆さんに問いかけたいと思います。あなたは自分の成功や失敗を、純粋に自分の能力や努力の結果だと考えていますか? また、社会の格差や不平等は、個人の努力

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