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資本主義の「すきま」を埋める倫理学 3/3「世界は贈与でできている」
格差社会における贈与の役割
今日でいよいよ「世界は贈与でできている」を締め括っていきます。昨日はテクノロジーという視点からの贈与を捉えましたが、今日はより具体的に現代社会における贈与論を考察していきます。
現代社会において、経済的格差の拡大は深刻な問題となっています。このような状況下で、贈与はどのような役割を果たすことができるでしょうか。
フランスの経済学者トマ・ピケティ(1971-)は、
贈り物の進化論 2/3「世界は贈与でできている」
昨日からは「世界は贈与でできている」を元に、贈与論の根源とその批判、贈与論の系譜などを包括的に論じてきました。今日はより具体的にイメージしやすい「贈与」という行為について取り上げていきます。
デジタル時代における贈与の変容
デジタル技術の急速な発展は、贈与の概念と実践に大きな変革をもたらしています。インターネットとソーシャルメディアの普及により、贈与の範囲と形態が大きく拡大し、新たな可能性
贈与で紡ぐ社会 1/3「世界は贈与でできている」
贈与理論の系譜と現代的展開
本日からは近内悠太さんの著書「世界は贈与でできている」を解説していきます。贈与という言葉は聞き馴染みがないかもしれません。贈与の概念は、人類学や社会学、哲学の分野で長年にわたり研究されてきました。その起源は、フランスの社会学者マルセル・モース(1872-1950)の画期的な著作『贈与論』(1925)に遡ります。モースは、ポリネシアやメラネシア、北米先住民社会などの「
人生にイエスと言う理由 3/3 「それでも人生にイエスと言う」
人生への「イエス」
「それでも人生にイエスと言う」というタイトルに象徴されるように、フランクルの思想の核心には、人生に対する根本的な肯定があります。しかし、これは安易な楽観主義ではありません。フランクルが主張するのは、どんな状況にあっても、私たちには「応答する能力」(responsibility)があるという倫理的な立場です。これまで2回に渡りその内容を深掘りしてきました。
フランクルはこう
若きフランクルの精神的旅路 1/3「それでも人生にイエスと言う」
「夜と霧」の著者とフロイト・アドラーとの出会い
今日からは以前「夜と霧」で紹介したヴィクトール・E・フランクルが執筆している「それでも人生にイエスと言う」をテーマに取り扱っていきます。「夜と霧」とはまた違う視点で私たちに気づきを与えてくれるこの本を深く読み解いていきましょう。
20世紀初頭のウィーンは、芸術、文学、科学の分野で革新的な思想が花開いた文化の中心地でした。1905年、この知的な熱
能力主義社会の起源と発展"実力も運のうち1/4"
マイケル・サンデルの『実力も運のうち』は、現代社会における能力主義の問題点を鋭く指摘し、私たちに重要な問いを投げかけています。本書は、私たちが当然視してきた「実力社会」の在り方に疑問を投げかけ、より公正で包摂的な社会の可能性を探るものです。
読者の皆さんに問いかけたいと思います。あなたは自分の成功や失敗を、純粋に自分の能力や努力の結果だと考えていますか? また、社会の格差や不平等は、個人の努力