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バイオグラフィー -- 僕が失明するまでの記憶

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生まれてから失明するまでの記憶を、忘れないよう記録として書き留めました。 記憶に基づいた記述のため不正確な箇所や不鮮明な箇所があるかも知れませんが、一人の人間の生きた痕跡として、…
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#失明

宣告(僕が失明するまでの記憶 27)

 印象的な出来事があったとき、日付や天気、風景、におい、そのときの空気のようなものをまとめて記憶に留めておくのが得意だった。でも、「その日」がいつだったか、どうしても思い出すことができない。なんとなく火曜日だった気はするが、それも定かではない。
 看護婦さんを通して、ドクターから話があるので家族に集まってほしいと招集がかかったのは、手術後、巨人がリーグ優勝してしばらくのことだった。

 約束の日の

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あとがき

ここに納められた30の記事は、これまで断片的に書き溜めた文章を編集し、一続きにしたものです。
その企てが成功しているかはともかくも、時代の世相や空気とともに自分の経験を残しておきたいという気持ちが
随所に現れているように感じます。

失明という全く予期しなかった出来事とどう向き合うか、
これは永遠の課題です。
どうして見えなくなってしまったのか、もし見えてさえいればと思ったことは、
これまで数限り

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