「お金は使えば使うだけ増える」楽しいかどうか-「感性」の哲学、前澤友作を中心に 2/3

楽しいかどうか

前澤友作の経営哲学の中核にあるのは、「自分」を大切にすることだ。自分の個性や直感を信じ、それに従って行動することが、ビジネスにおいても人生においても何より重要だと彼は説く。この姿勢は、前澤の「楽しさ」を追求する生き方に如実に表れている。

前澤友作はCDの輸入ビジネスから始めた。「滅茶苦茶な買い方をしていた」と本人は述べている。生活費を切り詰めて、「あれも欲しい。これも欲しい」って片っ端から買っていった。そうすると当然バンドには詳しくなり、目利きも出来るようになる。そのうちそのCDやレコードを「お金出してでも欲しい」って言う人が出てきて、そこからビジネスが始まった。注文が来たら、実家の6畳の部屋で梱包して発送するという単純なビジネスであった。やがて全国から注文が来るようになり売り上げが伸びた。

「気づいたら売上が立って上場していた。楽しいことを追い続けた結果、利益がついてきて、稼ごうと思ったことは1回もない」

上場したZOZOも、CDビジネスの時と同じように、楽しさを追求した結果として売り上げが伸び、上場した。

「お金は使えば使うだけ増える」

前澤のお金の使い方は、彼の価値観を端的に示している。彼は貯金をしたことがないのだという。高校生の頃のバイト代もすべてレコードや楽器につぎこんでいた。常に限界までお金を使うスタイルを貫く。その背景には、お金は使った分だけ自分が成長するという信念がある。実際、若い頃にCDやレコードに多額のお金を使った経験が、後の音楽ビジネスにつながっていった。前澤にとって、お金を使うことは単なる消費ではなく、自分への投資なのだ。この結果はやはり、CDやレコードにすごくお金を使っていたからだと前澤は振り返る。中途半端に買ってたらそこまで成長しなかったと本人は言う。

これは、物事に没頭することの大切さを教えてくれる。好きなことに全身全霊で打ち込むことで、我々は新たな知識や感性を獲得していく。そこには、金銭的な価値だけでは測れない、人間的な成長があるのだ。

「人と同じものを買わないほうがいいよ」

若手社員に対してボーナスの使い方についてのアドバイスをする際、前澤はこう答えた。初めてのボーナスでみんなが持っているような時計を買っても、何の自慢にもならないし、自分の成長にもつながらないという。10万円入ったその日に10万円全部使えという。それが「いままでにない体験」つまりは成長につながるのだという。「初めて手にしたボーナス50万円をすべて使って両親を旅行に連れて行ったら、そのあとの親子の関係性はどうなるか。そう考えると面白いじゃないですか。彼女に思いっきり50万円分のプレゼントをしてみるのもいい。」と前澤は言う。すべて使うのであれば、そのボーナスすべてを使うぐらいに好きなものはなにかを考えなくてはならない。好きなことに全額使うということは、全額使うぐらいに好きなことというのものを自分の中で明確にする作業なのかもしれない。前澤は全額使うことによって自分の好きなことを信念のレベルにまで昇華させたのだろう。

限界までお金を使うことが明日の自分への投資になる。

人と同じものを買っても、自分の成長にはつながらない。大切なのは、何を買うか、どう使うかを自分で想像し、行動に移すことだ。この姿勢は、前澤の「自分らしさ」を追求する生き方の表れでもある。

これは、自分の内面と向き合うことの大切さを示唆している。他人の価値観に流されるのではなく、自分の心の声に耳を傾ける。そこから湧き上がる想像力と行動力こそが、我々を真の意味で成長させてくれるのだ。

「社会のレールに沿って生きるのはラクかもしれません。日本は平和で豊かな国ですから。でも、社会のルールや常識に反発してみると、もっと人生がおもしろくなる。」

「人と同じものを買わないほうがいい」という言葉には、社会の常識や他人の価値観に囚われずに生きることの大切さが表れている。みんなが持っているものを買うのではなく、自分なりの価値観で物を選ぶ。これは、社会のレールから外れることを恐れない姿勢だ。

また、「お金は使えば使うだけ増える」という考え方も、常識に反発する生き方を支えている。お金を使うことは、自分への投資だと前澤は考える。社会の常識では、お金は貯めるものだ。しかし、前澤は違う。お金を使って自分を成長させることこそ、人生を豊かにする道だと説くのだ。

これらの考え方は、いずれも社会の常識やルールに縛られない生き方を奨励している。人と同じものを買わず、お金を使って自分を成長させる。そうすることで、人生はもっと面白くなる。前澤のこの言葉は、そんな彼の人生哲学を端的に表している。

「人生は一度きり。楽しくやったほうがいいでしょう?それが出来ていない最大の原因は本人が「楽しもう」としていないからですよ。」

世界は私たちの意識に現れる限りにおいて存在するという考え方がある。つまり、世界の意味は、私たちがどのように意識するかによって決まるのだ。

この観点から見ると、人生を楽しいと感じるかどうかは、私たち自身の意識の問題だということになる。もし人生を楽しいと感じられないなら、それは世界が楽しくないからではなく、自分が「楽しもう」としていないからだ。

前澤の言葉は、この点を鋭く突いている。「楽しくやったほうがいい」と言いつつ、そうできない原因は本人の意識にあると指摘するのだ。

これは、私たちに自分の意識のあり方を問い直すことを促している。人生を楽しむことができるかどうかは、私自身がどのように世界を意識するかにかかっている。「楽しもう」とする意識を持てば、世界は楽しいものに変わるのだ。

前澤のこの言葉は、現象学的な洞察を含んでいる。それは、世界のあり方は私たちの意識に依存しているということ。そして、その意識のあり方を変えることが、人生を変える第一歩になるのだ。

この言葉は、私たちに自分の意識を見つめ直すことを促している。「楽しもう」とする意識を持つこと。それが、人生を楽しむための最初の一歩なのかもしれない。
自分はなにをしているときに楽しいと思うのだろうか。また、自分は本当にそれを楽しもうとしているのだろうか。前澤の言葉は我々にそう問いかけるのだ。

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