「部屋入ってきた瞬間に"こいつ採用、こいつダメ"って。瞬時に分かっちゃう」いい人かどうか-「感性」の哲学、前澤友作を中心に 3/3

いい人かどうか

前澤友作の経営哲学の中で、「いい人かどうか」は非常に重要な要素だ。彼は人を判断する際、直観を重視することで知られている。

「新卒の面接あるじゃないですか。一瞬で分かりますね。部屋入ってきた瞬間に"こいつ採用、こいつダメ"って。瞬時に分かっちゃう」

前澤はこう述べ、新卒面接での瞬時の判断の重要性を説いている。彼にとって、直観は人を見抜く上で欠かせないツールなのだ。実際、前澤は面接で出会った人の多くを、直観を信じて採用してきたという。彼が率いるZOZOTOWNの成功は、この直観の勝利と言っても過言ではないだろう。

我々は人を判断する際、何を基準にしているだろうか?学歴や経歴、スキルや経験?それとも、目の前の人から感じる"何か"?前澤の言葉は、私たちに人を見る目の重要性を問いかけている。

この直観を重視する傾向は、前澤だけでなく、他の経営者にも見られる。楽天の三木谷浩史も、ビジネスにおける大きな決断は直感で行うことがあると述べている。ただし、三木谷は直感と直観を区別し、直感は分析とフレームワークに裏付けられるべきだと考えている。

ビジネスにおける大きな決断は、実は最後は直感で行っている。ただ強調したいのは「直感」と「やま勘」は違うということ。直感で決めても、その後に必ず結果を分析し、フレームワークとして持つようにしている。(三木谷浩史)

前澤の独特な採用基準は、彼の直観重視の姿勢を如実に表している。彼はかつて、じゃんけんで人を採用しようとしたこともあるという。そして最終的に、彼が選んだ採用基準はたった一つ。それは「いい人」であることだ。

「人を選ぶ経営者なんて、ちっちゃくない? どんな人でも受け入れられる、宇宙みたいに度量が大きな男じゃないと!」

前澤はこう語り、「いい人」であることの重要性を説く。彼にとって、「いい人」とは単に善人というだけでなく、大きな可能性を秘めた人物なのだ。

「いい人」であることを採用基準とすることは、応募者の本質を見ようとする行為だ。職務経歴書に書かれた表面的な情報ではなく、人間性そのものを判断の根拠とする。これは逆説的に、本質を見抜く前澤の洞察力の高さを示している。

一般的な採用プロセスでは、学歴や職歴、スキルや経験といった客観的な指標が重視される。しかし、前澤はこうした表面的な情報よりも、人間性そのものを見ようとする。それは、履歴書では測れない、その人の本質的な部分を捉えようとする試みだ。

「いい人」という基準は、一見曖昧で主観的なものに思える。しかし、前澤にとっては、これこそが最も重要な指標なのだ。なぜなら、「いい人」であるかどうかは、その人の価値観や人格、ポテンシャルを反映しているからだ。「いい人」であることを採用基準とすることは、人間性そのものを判断の根拠とする。一見ふざけているように思えるかもしれないが、これは逆説的に、本質を見抜く前澤の洞察力の高さを示している。

「僕たちは趣味の延長でビジネスをしています」

「趣味の延長」、前澤はこう語り、好きなことを仕事にすることの重要性を説く。ZOZOTOWNの成功の背景には、スタッフの情熱と「いい人」であることが関係しているのだ。

「僕たちは洋服が好き。そして、一緒に働いている洋服が好きな“仲間”が好き。誤解を恐れずに言えば、僕たちは趣味の延長でビジネスをしています。それが人の役に立っているから、今の成長につながっているのではないかと思います。実際、僕たちは「一緒に儲けましょう」なんて営業はしていません。スタッフが自分の好きなアパレルブランドに営業に行き、自分自身の情熱を伝える。「御社の商品が好きなので、多くの人に届けたい」と。これは僕が輸入レコードを販売していた頃の想いと同じです。」

前澤はこう述べ、自分たちの情熱がいかにビジネスの成功につながっているかを説明する。彼らは市場規模や成長率、競合他社などの表面的な情報ではなく、自分の感覚や情熱を大切にしてビジネスを進めているのだ。この姿勢こそが、ZOZOTOWNを他のファッションECサイトと差別化する源泉なのかもしれない。

前澤友作の思想の根底には、直観を重視し、人間性を見抜く洞察力がある。好きなことを仕事にし、本質を見極める姿勢が、彼のビジネス哲学の核心なのだ。

この哲学は、ビジネスの世界だけでなく、人生全般に通じる普遍的な価値観を含んでいる。自分の直観を信じ、人間性を大切にすること。それが、前澤友作が実践してきた「いい人かどうか」の哲学なのだ。

現代社会では、データや分析が重視され、人間性や直観は軽視されがちだ。効率性や合理性を追求するあまり、私たちは時として「人」を見失ってしまう。しかし、前澤の言葉は、人間性の重要性を改めて思い起こさせてくれる。ビジネスにおいても、人生においても、「いい人」であることの価値を忘れてはならない。

前澤友作の「いい人かどうか」の哲学は、現代社会に一石を投じている。データや分析も大切だが、それ以上に人間性や直観を大切にすること。それが、真に豊かな社会を作る鍵なのかもしれない。彼の言葉を胸に、今一度「人」を見つめ直してみる。そこから見えてくるものがあるはずだ。


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