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仮面

仮面をしている。テレビに映っているそのヒーローは悪者を倒して正義を貫いている。私はヒーローが出る番組をあまり見ない子供だった。見る時期もあったが、どちらかというと大人たちが試行錯誤して笑いを生み出そうとしていたり、ストーリーを描いていたり、音楽を伝えようとしてくれたりしているのを見るのが多かった。理由はずっとわからなかった。

仮面をしている。成長していくうちに人間という生き物は”常識”や”世間体”、”建前”を大事にしていると気づいた。自分が周りと逸脱していないか気にして、生きていくようになることを知った。本当の自分は隠して、毎日仮面をかぶって生きている。

私も仮面をしていた。いま思えばその仮面を被り始めたのは高校生になる頃だった。一年の頃はとにかく学校が面白くなくて、不登校とまでは行かなかったが、絶望していた。中学はいい人ばかりだったのに、高校にはそれなりに嫌な人たちがちらほらいて、他人が矛先だとしてもそれを見るたびに嫌気がさした。仮面のおかげもあり、家に帰って仮面を取り、寝るまでの時間平気でいられた。
その後は2年に上がったときにクラスも変わり、良い人にたくさん出会って卒業まで楽しい生活だった。

仮面をしている。大学生になっても、社会人になってもその仮面をしている。本当の自分は家に置いてきて、創り上げてきた自分で外の世界へ出る。本当の自分を出すのは怖い。だからこの仮面のおかげで、社会を生きるスイッチが入るのだ。

つい先日それを新しくした。世界がぼやけて見えてきたから新しくした。
いつもは1人で選ぶのだが、今回は親友にも見てもらいながら変えた。

人生で1番かけてみたい形のものだった。

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