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喫茶ひとりじかん 2020.1/25

「喫茶ひとりじかん」は団地の一階にある「MUJI BASE」で開催される。晴れた日の土曜日の昼間ということもあって団地と団地のあいだに点在する公園はどこも子どもたちでにぎやかだった。このまちにはたくさんの人がすんでいる。

「MUJI BASE」の中にあるメインの大きな空間が喫茶ひとりじかんの場所となる。大きな木のテーブルがふたつ、L字型にならべたゆったりとしたソファがひとつ。この空間は団地の中庭に接していて、ガラスの引き戸もあり出入りすることができる。中庭側の戸のわきには、木で作られた「moi」の看板がそっとおかれている。ちいさな頃おでかけの時にかばんに入れた絵本のような大きさの看板。「この看板はハラダくんが作ったのだよ、すごいよね」岩間さんがおしえてくれる。じつは前にも岩間さんからきいたことがあった。何度でもいいたいことなのだ。岩間さんとハラダさんはよいコンビだなあと思う。中庭から中に入ると右側にちいさなオープンキッチン。今回の喫茶ひとりじかんではコーヒーや紅茶、りんごジュースなどの飲みもの、スコーンやドーナツも食べることができる。岩間さんがコーヒーをいれると、ふんわりとよいかおりが漂う。中庭と反対側は道路に面していて、そちらにも大きなガラスがはまっている。一方から他方に、光がとおってゆくようで気持ちがいい。

はじまりの13時をすぎると、ぽつ、ぽつりと人びとがたずねてくる。ご高齢のカップル、歩きはじめたばかりであろう赤ちゃんとご夫婦。おともだちと待ち合わせて、また、おひとりで。ノートをひろげて作業をされていたり。外をみつめたり。お話したり。それぞれに時間をゆっくりとすごしている。みなさん、少なくともだいたい1時間はいらっしゃったのではないだろうか。

ハラダさんと、前回の喫茶ひとりじかんでもお手伝いをされていたボランティアさんがキッチンとテーブルを行き来して飲みものやおやつをはこぶ。ボランティアさんがご夫婦と言葉をかわしながら、てくてく歩く赤ちゃんを抱っこした。あとでボランティアさんが「10キロなんですって」とうれしそうに話してくれた。
岩間さんが「次は窓にむけてカウンターのような席もつくろうか」とハラダさんと話す。「今日は道路の工事があったのでつくっていなかったのですが、次回はつくりましょう」テーブルやソファの位置もこのじかんのために考えられていることに気がつく。

それまで私はエプロンをつけてほんの少しだけお手伝いをしていたのだけれど、エプロンをはずして喫茶ひとりじかんを体験してみることにする。
飲みものはタンザニアのコーヒーにする。大泉学園の「nericafe」の竹中さんが焙煎された豆のコーヒー。あと、おやつはスコーンと迷いつつもドーナツにする。さくさくとしたシンプルなドーナツ。たくさん食べられて、なつかしくって思わず穴をのぞいてしまうあのドーナツ。岩間さんがつくったという。

ソファにすわり、持ってきた本をひらく。
なんだか、とても居心地がいい。

今回、喫茶ひとりじかんに参加しょうと思ったとき、moiとくらべることだけはやめようと決めていた。なぜなら17年前から私にとってmoiは大切な存在だったから。東京の街をあるくと、たくさんのお店があることに、あらためて気がついた。あるきながら、こんなにもいろいろなお店があって、こんなにもカフェはあるのに、もうmoiはないのだな、そう思ってしまうくらいには。

けれども、ふと、この居心地のよさはmoiで感じていた居心地のよさと似ていること。同質のものだと思いあたる。
食器はキッチンに用意されている無印良品のもの。もちろん場所も空間もちがう。岩間さんとハラダさんがつくる空間ということだけが同じ。岩間さんとハラダさんがいるから、私は安心してmoiとよく似た居心地のよさを感じているのかな。それは正直、私にはわからない。ではmoiをしらない人にとってはどうなのだろうと考えたとき、喫茶ひとりじかんで過ごしていらっしゃった人たちのすがたが思いうかぶ。もしかしたら私とはちがう種類かもしれないけれど、居心地のよさは感じていらっしゃるのではないかと。その居心地のよさは岩間さんとハラダさんがつくりだしたものだ。

コーヒーを飲んだとき、岩間さんがいれてくれたコーヒーはおいしいと思った。
これまでmoiでなんども岩間さんがいれてくれたコーヒーを飲んでいたのだけれど、岩間さんのコーヒーではなく、moiのコーヒーがおいしいのだとどうしても思っていた。

喫茶ひとりじかんは、カフェではない。だから、お店という枠がはずれて、人と人として向きあえる。これまで気がつかなかったことに目をむけられる。そんな力も持っていると思った。
岩間さんのドーナツも、とてもおいしかったです。

喫茶ひとりじかんとは。一杯のコーヒーがつなぐ人と人とのゆるやかな関係、気配を読み、また小さな声に耳を傾けるカフェの接客を応用した「居場所づくり」のためのプロジェクトです。

Moiの岩間さんとハラダさんが2019年から始められた活動。岩間さんは、荻窪→吉祥寺にかつてあったカフェmoiの元店主さんでもあります。