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歯周病治療で3つの歯科医院を受診した理由―①事件

ことの発端は、日々の至福のひととき、晩酌の時に起きた。ビール片手にジャーキーをつまんでいたら、歯に激痛が走ったのである。恐る恐る、問題のありそうな歯を触ってみる。あろうことか、ぐらぐらではないか。至福のひとときは、一転、苦痛のはじまりとなった。

その夜は眠りも浅かった。幾度となく目も覚めた。ぐらついた歯に、向かい合った歯があたるたびに。感覚的には、喧嘩して殴られ、歯があさっての方向を向いてしまったかのようだった。気付けば、あたりは白んできている。一夜明けても、痛みが治まる気配はなかった。

それでも、痛み、そしてぐらつきが自然と治まることに一縷の望みを抱く。これほどまでの痛みを伴ったことはなかったが、その歯は数年前から、たまにぐらつくことがあり、数日するとぐらつきが治まることがあったからだ。

翌日は抜歯の時などに歯科医院で処方される痛み止めの定番、ロキソニンを服用してみる。幾分、痛みは和らいだような気がするものの、好転する兆しはない。食事もままならなず、仕事にも身が入らない。憂鬱な一日となった。その晩も半醒半睡だった。

三日目、状況は変わらず。のんきに、自然治癒に期待する気力はさすがに失せていた。幸い、土曜日で仕事が休みだったこともあり、朝から歯科医院を探しはじめた。あわよくば、すぐにでも受診する気構えをもちつつ。

そもそも、十数年来、通っていた歯科医院はあった。今回、問題が生じた歯の違和感を訴えたこともある。けれども、治療らしい治療が施されることはなかった。歯科医院探しの背景には、これまで通っていた歯科医院への疑心、そして決別がある。

今から思えば、治療方針への懐疑は、新たな歯科医院探しの明白なシグナルだった。それでも本腰が入らなかったのは、小康が保たれており、生じている違和感をうまく説明する自信がなかったことが大きい。愚かだが、一大事に直面しないと動き出せない。

一方、小康状態のままで、今回の歯科医院選びの発想にたどりつけたか、とも考える。おそらく、自らを納得させるような確たる根拠がないまま選んでいただろう。都合、三つの歯科医院で受診したが、小康状態であれば、二つ目までのいずれかに落ち着いたように思う。

歯科医院に限らず、病院は症状がなければ足を運びにくい。すぐにでも痛みから解放されたかったのは山々である。しかし、今回の症状は歯科医院を見きわめる一つの手掛かりにしようと腹をくくった。治療に多少時間がかかっても、やむなしと。

現時点では、最終的に選んだ歯科医院の良し悪しはわからない。結果が判明するのは、後日となる。時を経ずして、再び歯科医院を探す羽目に陥りたくない。数年、さらには数十年後を経て、自らの選択が正しかったと思えるような歯科医院を探したい一心だった。

治療に入れば、自らの選択に自信をもつことが、医師を信頼する唯一のよりどころとなる。病は気からというように、治療に半信半疑で通院することは精神衛生上よくない。だからこそ、どのような治療が施されようとも、自らを納得させられる歯科医院選びを心がけた。

選ぶ際には、安心して余生を任せられる、かかりつけの歯科医院という点を重視した。どんなに健康体の人であっても、歯科医院に限っては行き先を決めている人が多いのではないだろうか。歯に問題が生じたら、すぐにかけつけられる歯科医院を確保しておきたい。

今回の一件では、先にも触れたように三つの歯科医院を受診した。そして、三つ目の歯科医院で治療を開始した。これら三つの歯科医院の選定方法、受診結果を振り返りながら、最終的に三つ目の歯科医院での治療を決断した足跡を記しておきたい。

コンビニよりも多いという歯科医院の選び方のヒントになることを願って。とはいっても、歯科医院を選ぶどころか、自らの病状がさっぱりわからないという現実に直面することからはじまった。(つづく


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