01 I Am Well, Thank You. And You?

アルバムの冒頭を飾る楽曲。最小単位(基本となるパターンの長さ)の異なる幾つかのフレーズとビートが、"ずれ"を伴って組み合わせられ、無駄のない美しい構造を作り出している。


楽曲の全体図は次の通り。A〜Dは旋律の基礎となるパターンを示す。

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基礎となるビートは、24小節単位で大きなひとつのフレーズを形成し、細かな変化や抜き差しを伴いながら反復する。


楽曲は以下のAパターンの旋律から始まる。

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パターンAの旋律は24小節でひとつのフレーズを形成しており、これはビートの最小単位と一致している。


次に、ビートが冒頭とほぼ同じパターンを反復する一方で、以下のパターンBの旋律が登場する。

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パターンBの旋律は、18小節からなり、6小節ごとにB1、B2、B3に分割される。B1→B2→B3は、この順に4回繰り返されるが、ビートは24小節単位で反復するため、ビートの開始点に登場するフレーズは、B1、B2、B3の順にローテーションしていく。


続いて、パターンAが重ねられ、さらに以下のパターンCの旋律が加わる。

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パターンCの旋律は、36小節で大きなフレーズの単位を形成しており、高音域に位置している。Cの後半は同様の旋律を反復しながらも、小節内での開始点をずらすことで、異なる印象を与えている。


その後、ビートが停止すると共に、パターンAの旋律が、新たなパターンDの旋律を伴って再登場する。

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パターンAの旋律は、6小節ごとに主音(C音)に落ち着き小分割を作る一方で、パターンDの旋律は8小節を最小単位としていることから、ループしている印象が和らげられている。後半12小節には、高音域にパターンCの旋律が重ねられる。


ゲネラウパウゼ、続くボイスサンプルを挟み、ビートとパターンBの旋律が再登場する。Cの旋律はゲネラルパウゼ前に前半1/3が登場したことから、ビート開始と共に、後半2/3から開始される。旋律Cの2回目の反復の際は、前半1/3がカットされ、後半2/3のみが細かな旋律的変化を伴って繰り返される。


以上のように、フレーズの基礎単位や開始位置を巧妙に操作することで、最小の素材から最大の効果を引き出すよう、まるでパズルのように構造化されていることがわかる。こうした手法は、このアルバム全体を通して用いられている。

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