べてるの家での経験

ある講演で「べてるの家」という北海道の福祉施設のお話を聞く機会がありました。
精神疾患で大量の薬を服薬していても、その施設に入ると、
服薬量が減る人が多くいるようなのです。
そしてその施設では、当事者研究と呼ばれる取り組みが行われており、
東京大学でも研究がされているようでした。

興味がわいた私は、その年の12月に有休をとって、
実際に「べてるの家」を訪ねてみることにしました。
べてるの家は一般の方でも見学を受け付けており、親切に対応してくださいます。

べてるの家は北海道の浦河町にあります。
海沿いにある静かな町です。
札幌を経由してバスでその町に降り立つと、雪がしんしんと降っていて、
とても落ち着いたところという印象を受けました。

施設に行ってみると、同じような見学の方が5人ぐらいいらっしゃいました。
見学者は、自己紹介をしながら並んで挨拶をします。
自分以外の見学の方は、幻覚が見えているというお話しをされていて、
幻覚の見えていない自分がマイノリティでした。

見学は、事務所の清掃などを一緒に行い、そのあとに
入所している方の話し合いにまぜていただくという流れで進みました。

この話し合いが、衝撃的でした。
話し合いの形式は、
椅子を車座に並べて、自分の悩みを相談したい人が相談を投げかけ、
それについてみんなで議論するという形のものです。

ある方は、電気が自分の中に滞留していて、眠れないという悩みを相談していました。
それに対し、静電気のせいじゃないかという話が出て、
静電気を放出してから寝てみてはという提案があり、その案が採用されていました。
よくよく聞いてみると、前回は
「静電気はみんなで分け合えばよいのではないか」
という話になって、車座を一周して全員とハイタッチしたようです。

他の方の相談は、ユニコーンがおなかを刺してきて痛いというものでした。
すると、また話し合いが始まり、
「自分の場合は、仲良くするために相手の頭をなでてあげたら、
攻撃してくることはなくなった」
という話をされた方がおり、その日はその案が採用されていました。

その場では、マイノリティのはずの自分も普通に意見を求められました。
正直なんといえばいいか分からず、しどろもどろになりながら、
無難な答えを言ったのを覚えています。

この話し合いは自分にとって、とても衝撃的な光景でした。
自分の知っている幻覚の治療法や解決法とはかけ離れていたのです。
そこは幻覚がみえることについて相談する場所ではなく、
幻覚がみえることで生まれる具体的な困りごとを解決しようとする場所でした。

チープな言葉でいえば、本質のような気がしました。
なんとか言葉にしてみると、
・疎外を受けずに当たり前に参加する/できる
・当たり前のように他人に貢献する/できる
・抽象的でなく具体的に困りごとを解決する

これらがあれば、人はよい状態でいられるということを思い知らされた気がしました。
「よい状態でいる」という表現が適切かどうかはしっくりきていませんが、
とにかく重要なことだと感じたのです。

そこから、自分は
人の経験にリスペクトをもって

・誰かの経験を誰かのために活かす
・具体的な解決を積み重ねていく
事業をしようと決めました。

まだまだ、できていることは少ないですが、
あの時の衝撃を忘れずに、良いサービスをつくっていきたいと思います。

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