さむね

カルティエ展に学ぶ、年月とデザイン

こんにちわ!リブセンスでデザイナーとして働いているゆいです。

弊社では社内のデザイナーで月に1回美術展に行く取り組みをしています。第4回は、新国立美術館で行われている「カルティエ、時の結晶」展に行ってきました。

展示概要

(前略)本展は1970年代以降の現代作品に焦点を当て、その創作活動における革新性、現代性、独自性を、メゾンが築き上げてきた創作の歴史を背景に表現する世界でも初めての試みです。
本展では、「時間」をテーマに、「序章」に続く「色と素材のトランスフォーメーション」「フォルムとデザイン」「ユニヴァーサルな好奇心」という3つの章で、カルティエのイノヴェーションに満ちたデザインの世界を探求します。(中略)
そして、会場構成を手がけるのは新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之
「旧素材こそ最も新しい」という理念のもと、伝統的な職人の技術と最新技術とを融合させ現代的なディテールで仕上げる彼らのデザインが、「時」を意識し回遊する展示空間を創出し、新たな鑑賞体験を提示します。
引用:https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/cartier2019/

展示会場は「時間」をテーマに、

- 序章
- 色と素材のトランスフォーメーション
- フォルムとデザイン
- ユニヴァーサルな好奇心

の4つに区切られていました。

カルティエから学ぶ、普遍性

館内は盛況で9割が女性の中、参加した4人も全員女性デザイナーでした。展示では100年前の商品と2019年発売の商品が並べてられたりしていて、まさにテーマの「時間」を意識させるつくり。隣りにいた奥さんは「まぁー100年も昔に作られたようには見えないわ〜」と呟いていました。


パンテールシリーズ

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1914年に登場した豹をモチーフにしたシリーズです。女性デザイナーが提案し、発表後は一世風靡し顧客のマダムたちが競い合って身につけたとのこと。時代を捉えていて、世の中の動きに敏感であることが売上に直結していますね。パンテールシリーズが登場する以前は、幾何学模様やアールデコ、左右非対称なモチーフ中心に扱われていて、彼女の登場により、自然モチーフを取り入れるようになったようです。

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パンテールの細部のデザインはネコ科ならではのかわゆさを表現し、宝石のきらめきや強い色彩、はっきりした造形も含め観察すると、その人気もうなずけます。普遍性と時代を捉えることは一見矛盾して見えます。が、フェミニズムに関しては今日も議論の的になっていることから本質的に普遍性のあるテーマですね。(全然解釈が違っていたら恥ずかしい)

モチーフの普遍性
100年前のマダムを虜にしたかと思えば、現代に生きる弊社の若いデザイナーの間ではこちら↓のサボテンモチーフの宝石がかわいいと話題でした。20代前半の女性の心も奪っている事実に驚き改めて尊敬しました。

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カルティエ展で展示されていた宝石のモチーフの多くは、花や動物などの自然をベースにしたモチーフでした。

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花や動物は機能と形態がひも付き途方も無い時間をかけて今日の姿となっています。
カルティエの宝石は純資産として永続的に保有し続けることが求められるので、そういった完成された美しい形は先天的に美しく感じやすく、広い顧客にも受け入れられるのではないでしょうか。

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今展示では「フォルムとデザイン」スペースで実際のデザイン画やスケッチも展示されていました。スケッチしたモチーフを一級装飾品の宝石として型を昇華させた過程垣間見ることができました。デザイナーは花や動物を何度も観察し、特徴を捉え、スケッチしていたであろうことが伺えます。一方デザイン画は無駄のない線で構成されていて、経営者や顧客の想像力を過不足なく掻き立てていたことがわかります。


世界各国からの影響

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19世紀のジャポニズムブームのときは日本の浮世絵からも影響を受けていたそうです。水戸黄門様で有名な印籠から影響を受けたアクセサリーボックスもありました。他にもインドのマハラジャのつけていた装飾品に影響を受けたネックレスや、中国の影響を受けた装飾品もありました。カルティエのデザイナーがあらゆるものから情報を吸収してアウトプットを繰り返していたことが伺えます。

展示空間について
今回展示構成に、写真家の杉本博司さんと榊田倫之さんを迎えていることもあり、照明と配置、魅せ方にかなりのこだわりを感じました。照明は宝石が特別きらめくように当てられていて、カルティエの目指したデザインと相まって「動き」を感じることができます。1つのエリアに順路はなく閲覧者はそれぞれ自分の足に任せてそれぞれのブースを回っていました。100年前の宝石と現代の宝石が並んでて、本当に時を並行に漂っている様な気持ちでした。
余談ですが照明は暗めだったので、思わず触ろうと伸ばした手がガラスに何度もガンっとぶつかりました。そんな人は私だけでしたが皆様ご来場の際はお気をつけてください。

おまけ

①100年について
多摩美術大学油画先行に入学してすぐの授業で、作者は作品の耐久性についても考慮する必要があると習いました。それは作品の購入者がいる事を念頭に置く必要性があるからです。誰かの手に売却したら、自分でメンテナンスすることはほぼ無可能になります。私は自分の作品は売れなかったので、真剣に考えたりアウトプットに反映したことはありませんでした。
そう思うと、カルティエのデザイナーの背負っている時間は「100年以上」となります。また宝石をつかった装飾品は消耗品ではなく資産価値としても大変高価なものになります。
上記のことを普段の業務や生活で意識したことがなかったので、大変刺激的に感じました。同時に自分が作っている「時間」についても考える切っ掛けとなりました。
私は普段のデザインで100年後の事は考えません。そもそも自分が作ったものの100年後について考えたことは、私はありませんでした。デジタルデータの寿命は、長くても約5年と言われています。普段携わっているサービスの寿命も、おそらく100年後は考えていないでしょう。それでも、私が携わっているサービスのユーザーは、1日のうちの何分かをサービスに使ってくれています。そのことは大事にしたいなと思いました。

おまけ②アプリについて
今回は音声ガイドが無料だったので、参加した4人全員で音声ガイドを利用することにしました。音声ガイドは、アンドロイド端末を1人1つ配布されました。インストール済みの専用のアプリが、展示物に近づくとポップアップが現れ、タップすることで解説音声が再生さる仕様でした。展示一覧から自分で操作し、気になる展示物について解説を読んだり音声を聞いたりすることができました。普段、サービスのデザインに関わっている身なので、このアプリについては展示閲覧後4人でちょっとした議論が生まれました。
新卒ちゃんが「私にデザインさせて!」と言っていたので将来が楽しみだなと思いました。アプリUIの設計とデザインは脳が焦げるくらい楽しいので沼に引っ張りたいです。

まとめ

様々なモチーフをとにかく観察し、柔軟に取り入れ、宝石のお作法にフィットさせ、原石からの価値を昇華させているという点が素晴らしいと感じました。古今東西さまざまな情報をインプットしアウトプットし続ける、このような流れは全デザイナーに共通なのではないでしょうか。また、ただ羅列するのではなくて展示方法「魅せ方」にも徹底する事が大事だと思いました。
今後も視野を狭めず様々な文化を線で捉え自分の中で消化しアウトプットしていきたいと思います。

私は庶民として大衆的な生活をし一生を終えると思うので、このように資産性に優れたジュエリー・コレクションを見る予定はありませんでした。とっても壮観でした。
ぜひ足を運んでみてください!

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