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【コラム】ポジション調整 ~上手な買い方と売り方~

A:投資は、退屈な時間の方が圧倒的に長い

投資で大きな利益を得ようとする場合、とにかく長い時間がかかります。➀目標の株数を集める時間、➁株価が騰がるまでの時間、➂株を売り抜けるまでの時間等…我々投資家は、常に時間と闘っている、と言っても過言ではありません。特に➀~➁が顕著ですが、退屈な時間の方が圧倒的に長く、忍耐力が必要なのです。

この長い時間経過を慰める言葉として使われる魔法の言葉があります。「買ったら騰がるまで放置しておけばいい」という言葉です。特に高配当銘柄を保有する場合は決して間違いではないのですが、それでもちょっと時間の使い方としては勿体ない。楽をし過ぎです(笑)。

B:退屈な時間にこそ効率を求めよう

投資資金がめちゃくちゃ大きい人や、効率を全く求めない人は放置でも良いかもしれません。しかし、本来は株価の上下に応じて、ある程度ポジションを増やしたり減らしたりするべきです。特に➀~➁の時期なら、下がった時に株数を買い増して平均取得単価を下げておくと絶対に後が楽になるし、効率的です。

また、目先の天井かな?と思える様な、売り板が厚いところで売りをぶつけて反応を見ると「相場の温度もわかる」ので、投資家としての感覚が磨かれます

では、さっそく具体的にどの様に売買をすると良いのでしょうか。私が推奨する効率的な売買方法は、

株価が下げた時は少しずつ買い下がる「買い下がり」

株価が上がった時は少しずつ売り上がる「売り上がり」

というものです。

C:買い下がりのやり方

まずは買い下がりの方法です。「買い下がり」という言葉を使うと、必ず「下がったら損切りした方がいいのでは?」という質問が出ます。結論から言うと、私は安易な損切りは全く推奨しません。そもそも「損切りしなければならない様な銘柄を買ってはいけない」のです(だからファンダメンタルズが重要になります)。粉飾決算をしていたり、予期せぬ情勢変化で業績見通しのシナリオが大きく変わった場合は損切りでOKですが、最終的な成長イメージが崩れていない好ファンダ銘柄なら損切り必要はありません。まずは大前提として、自信を持って買い下がりが出来る銘柄を選びましょう。

買い下がりのポイントは「安値を買う時の株数が、三角形を描くように買い下がる」ことです。例えば、現在株価500円の銘柄を100株から買い始めたとします。

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今、最初に株価500円で100株で買った後、株価は下がったとします。下がったら、今度は200株以上の株数を買い足すのです。更に下がったら300株…と、自分の資金量に応じて買う株数を増やしていくのです。上図の例では、25円刻みで買い足しています。これは短期足のチャートなども見ながら決めましょう。買い下がりは、もちろん毎日じゃなくてもよいのです。10円刻みでも30円刻みでも自分のルールを決めてしまっても良いかもしれません。

ただし、あまり細かく値幅を刻んで買ってしまうと、思わぬ暴落の後で絶好の買い場が来た時に資金不足になりがちです。つまり、まとめて買うのではなく、三角形がなるべく崩れないように買い下がることがポイントです。

株価は、なかなか都合よく買った瞬間から株価は騰がりません。長い闘いを生き抜くには、安い株価を丁寧に集めていくことが大切です。これで平均取得単価がどんどん下がっていきます。長い闘いになる可能性もありますので、配当が出る銘柄だとメンタル的にも余裕が持ちやすくなります。

D:売り上がりのやり方

さて、買い下がりが上手くいった後は、やはり放置せずに少しずつ、今度は売り上がりをしていきましょう。売るタイミングについて説明している人は少ないと思うので、ぜひ参考にしてください。先程の事例の続きです。

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先程の事例の続きです。売り上がる時は、買い下がりの逆を行えば良いことになります。最初に買い始めた株価(ここでは500円辺り)から売り始めて、少しずつポジションを減らすのが良いと思います。まずは買い始めた500円で200株、530円まで騰がったから今度は300株…という具合です。

一つ注意してほしい点があります。売り上がりの時期は、買い下がりの時期よりも過ぎ去るのが早い、ということです。➀~➁の買い集める期間は、機関投資家も買い集めていたり、そもそも機関投資家が参入してきていない場合があります。株価は、機関投資家の仕掛け無しに大きく騰がることはほとんどありません。だから株価が上昇し始めるまで、場合によってはかなり待つ可能性もあるのです。反対に、株価が上昇し始めると、いろんな機関投資家や個人投資家の目に留まり、参入者が増加します。様々な思惑が交差し、株価の変化スピードが加速していくのです。

E:売り時を考える①配当金額を目安に売る

人間の判断力はいつも欲望との駆け引きですから、売り時になって株価変化が急速に変化していくと「手放したくない」という欲望が意外なほど湧いてくる自分に驚くと思います。挙句、もう少し上がるんじゃないか・・・と欲を出し、結局売れないこともよくあります。よって、売り時も買い時と同様、短期足チャートを見て決めたり、速度の速さに対応するため、機械的にルールを決めて売り上がるのが良いでしょう。

もしくは、配当金額を一つの目安にする方法もあります。私の場合は、「2年分の配当金額以上に株価が値上がりした場合、一部を売る」ようにしています。例えば先ほどの銘柄は年間配当25円ですから、500円で購入して550円を越えたら一部を売る、という計算になります。

これは買い下がりにも応用出来ます。買い下がる時は、1年分の配当金額以上下げたら買い下がりを開始しています。つまり再度525円まで下げたら再び買い始める、というイメージですね。

F:売り時を考える②乖離率を参考にする

もう一つは、移動平均線と現在株価の乖離率から売り時を考える方法です。

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例えばこの銘柄ですが、ジワジワと株価が上昇し、今日ついに跳ね上がり、高値は1691円でした。200日線との瞬間的な乖離率は50.4%でした。乖離率は

(現在株価ー移動平均株価)÷移動平均株価×100で算出されます。これに当てはめると、

(1691⧿1088)÷1088×100 =50.4%

となります。何%乖離したら売り時か、というのは銘柄ごとの「クセ」を参考にするしかありません。例えばこの銘柄であれば、過去に高騰した時の200日線との瞬間乖離率は57.6%だったので、割と売り時は近いのかな、という具合です。そもそも乖離の意味を深く知らない人は、先にこちらのコラムを読んでくださいね。

いかがでしょうか、買い時の見極めよりも売り時の見極めの方がかなり難しいかもしれません。窮極的には株価がどこまで騰がるかなんてプロでもわかりませんから、売り時も誰にもわかりません。ある程度機械的にやるのが良いでしょう。

G:買い下がりの途中で暴落したら

セクションCとDの説明で、買い下がりと売り上がりのイメージは理解出来たでしょうか。あとは細かいテクニックをいくつかお伝えしようと思います。

例えば、500円から始めた買い下がりの最中に、思いがけず大きく株価が下げてしまったら…という場合です。ようやく下げ止まり、例えば350円くらいまで下がったとしましょう。…ちょっと買値の500円まで道のりは遠いですよね。350円に落ちるまで頑張って買い下がっていれば、平均取得単価420円くらいまで下げられているかもしれません。それでも350円から一気に420円に戻すのも少しエネルギーが必要になります。

こんな場合、株価は350円⇒380円⇒360円⇒370円⇒350円のようにしばらくは小さく上下変動することが多いです。なので、その値幅の中で売り上がりと買い下がりを繰り返しましょう。380円で100株売って、370円になったらまた100株買って、370円になったらまた100株売る…。その都度含み損を確定させるのは良い気分ではありませんが、なるべく平均取得単価を下げられるように頑張れば、後から挽回しやすくなります。

もちろん、このような細かい値幅取りに自信がなければ放置するのもOKです。ここが高配当銘柄の強みです。年間配当25円の銘柄なら、もし2年放置すれば配当金の50円(税引き後40円)がありますから、平均取得単価は420円ー40円=380円まで下がります。もちろん、2年の間に株価が戻ったり、大きく吹き上がることも十分有り得ますね。ファンダメンタルズのコラムでも説明しましたが、夢のある内容の銘柄を選べば、キャピタルゲインを得られる可能性も上がります。株価は思惑やロマンで動くことが多いからです。

まぁそもそも、経営に問題のない5%配当の銘柄が350円まで下がることもあまりないと思いますが、逆業績相場のピーク、つまり景気が最もどん底の時は有り得る話なのです。こういった時期に高配当銘柄の買い下がりが上手くいけば、平均取得単価が下がりつつ、受け取る配当利率は上がっていきます。

私は2020年コロナショック後の大金融緩和直後から、余力のある人やこれから投資を始める人は、株価400円割れ、かつ配当利率6.5%の三菱UFJ銀行をチェックしておくと良い、とお伝えしてきました。ここは民間銀行の心臓部だし、大金融緩和で金融相場が始まれば最後は必ず金利が上昇し始め、金融株が回復するからです。これも相場サイクル論に基づいた発想です。私はコロナショック前から買っていましたが、それでも5%の高配当です。2021年2月現在の株価は約570円ですから、180円程度のキャピタルゲインと、25円配当合わせて200円程度の利益(100株だけ保有しても2万円の利益)を取れたわけです。高配当があるかどうかで、長期投資におけるメンタルコントロールがかなり楽になります。

いずれにせよ、買い集めている銘柄が明らかに暴落したのであれば、三角形を崩さないよう一旦落ち着くまで観察しましょう。三角形がどんなに崩れたとしても、逆三角形になるのは避けたいところです。

H:機関投資家も買い集めている

セクションEで述べた様な「思わぬ暴落」は、実際に有り得ることなのです。有望なのにくすぶっている銘柄は、どこかのファンド(機関投資家)が時間をかけてゆっくり集めていることが多いです。彼らは数十万株~数百万株を目標に買い集めるので、集めるまでに時間がかかります。だってそんな枚数をまとめて買えば、自分の買いで株価を爆上げさせることになります。だから少しずつ買い集めるのです。時々株価を冷やすために、空売りを交えて暴落を挟みながら・・・。機関投資家も当然、有望株を安く仕込みたいのです。だから機関投資家は自分たちが買う前に、空売りを浴びせて株価を下げます。先に買い集めていた個人投資家に諦めて株を捨てさせ、それを彼らが拾うのです。機関投資家の資金力には敵いませんから、機関投資家のペースに合わせて一緒に安値を集めることになります。機関投資家の動きについては、また別の記事で書く予定です。

まとめ

○投資は長期戦を覚悟しなければならない。待ち時間が非効率にならないように、資金力に応じて地道に「買い下がり」や「売り上がり」をしよう。

○買い下がりはゆっくり、三角形を描くように行う。売り上がりはその反対で、逆三角形を描くように行う。売り時は短いので、配当金額や移動平均線との乖離率も参考にし、機械的に行うのも良い。

○買い下がり中に暴落したら、下がった株価からのレンジでも諦めずに買い下がりと売り上がりを繰り返すと後が楽になる。

他の記事はこちらから探すと便利です。
https://note.com/n_kabu/n/n94f0f50bf81c

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