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【コラム】投資スタイルの考え方は柔軟に

株式投資は、数ある投資の種類の一つに過ぎません。しかし「投資スタイル」は無数とも言えるほどに存在しています。長期投資が良いと言う人もいれば反対にダメと言う人もいるし、空売りほど簡単なものはないと言う人がいれば空売りで資産や命を失った人もいる…。そもそも、投資スタイルはどうやって決めるべきなのでしょうか?今回は、そんな「投資スタイル」の考え方について、私見を述べていこうと思います。

A:投資スタイルは「要素」の組み合わせの数だけ存在する

株式投資を行う上では、考えなくてはならない(選択しなければならない)「要素」がたくさん存在します。例えば、

○買い目線で入るか売り目線(空売り)で入るか。

○長期で保有するか短期で手放すか。短期で手放すなら、それは数日程度なのか、超短期のデイトレードなのか。

○現物で買うのか信用制度で買うのか。信用で買うとすれば、維持率をどの程度に保つのか、信用二階建てはするのかしないのか。

○個別銘柄を買うのか指数を買うのか。

○バリュー株に投資するのか成長株に投資するのか。

○配当を狙うのか(インカムゲイン)差益を狙うのか(キャピタルゲイン)

特に最後に挙げた要素についてはこちらの記事でも説明しています。投資スタイルを考える前提になりますので、ぜひご一読ください。

例を挙げるとキリがなく、選択しなければならない要素は無数に存在する、と言っても過言ではありません。私は、投資スタイルとは、これら要素の「掛け算」だと考えています。

B:投資スタイル=要素の掛け算(組み合わせ)

要素の掛け算、とはどういうことでしょうか。選択する要素を時間、売買、銘柄、株価規模だけに絞ってシンプルに説明してみます。

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投資スタイルは、上図に挙げた様に時間、売買、銘柄、株価規模それぞれの要素から、一つずつ選択肢を選ぶことで決まっていきます。例えば、

「長期」投資で、株価規模が「小」さい「バリュー株」を、「買う」。

【長期×小規模×バリュー株×買い目線】という掛け算です。

C:掛け算に正解の組み合わせは存在しない

では、お奨めの組み合わせはあるのでしょうか?答えはNOです。長期投資がダメだという人、短期投資がダメだという人…様々な投資家が存在します。しかし、投資スタイルにはその人の性格やメンタルの問題が強く関与します我慢できる含み損の金額だって、株価が騰がるまで待つことが出来る時間だって、情報から受け取る印象(=感性)だってみんな違います。もし、10人が四季報で同じ銘柄を分析をしたら、10通りの解釈と印象が生まれるでしょう。投資スタイルに正否の区別は存在しないのです。

言い方を変えれば、個人の感覚の違いによって、投資結果は正解にも間違いにもなる、と言えるでしょう。例えば、3か月以内に投資結果が欲しい人にファンダ抜群の地味な高配当銘柄で長期投資を奨めても、その人にとっては間違いなく失敗にしかなりません。同じ様に、根っからのチャーチスト(チャート分析で売買をする人)にファンダメンタルズの重要性を説いても心に響かないでしょうし、相場は需給が全てと考える博打感覚の投資家(投機家)に相場サイクル論なんて説明しても論外…何の役にも立たないでしょう。

投資家のスタイルは千差万別で正解はありません。だから他人の投資方法を見ても自分の正解は見い出せないし、他人の投資スタイルを安易にバカにすべきでもありません。そのようなことを言う人は、自身の視野の狭さと経験の浅さを露呈しているようなものです。

D:完璧な、絶対唯一のスタイルは存在しない

極論を言えば、「一つの完璧なスタイル」など存在しません最終的に、その人に適した感覚を見つければ良いのです。皆さんは、「自称プロ」の情報を聞いたり読んだりして、相場には何か特別な必勝方法があると思いこんでいないでしょうか?不変的に通用する投資方法なんて存在しないし、誰かについていけば稼げる、なんて都合の良い話はありません。仮に存在したとしても、初心者が最初から完璧なスタイルに到達出来るわけもありません。ある程度この説明を読んで納得したら、手探りで試してみるしかありません。

そもそも「このやり方は良い、悪い」「この見方が正しい、悪い」と…一つの方法で何とかしようと思うと、いつか行き詰ります。10年で相場の季節は4回も変化するので、敢えて答えを示すなら、むしろ複数のスタイルを身につけ、それらを使い分ける方法が現実的です。

出来れば、相場サイクルに合わせていろんなやり方を試し、買いも空売りも、長期投資もデイトレードも一旦身体に通しておくと、後々いろんなことに気づくことが出来ます。投資スタイルのベースはこんな風に「ある程度」決めておくくらいが丁度よいのでしょう。一つのスタイルに固執はしない方が良いのです。

E:最初はどんなスタイルで始めてもOK

まずは、興味を持った方法から試してみるのが一番良いと思います。デイトレから株を始めてみる人もいれば、配当狙いの長期投資から始めてみる人がいても良いのです。つまり、どんな入口から投資を始めても良い。だって、どんな入口から投資の世界に入門しても、いずれ一度は壁に突き当たるからです。景気や時勢が変化すれば、投資家は必ず投資スタイルの変化を求められます。経験とともに自分の感覚を見つめ直し続ければ、自然と投資スタイルは洗練されていきます。

とはいえ、サイクルに適した投資スタイルの考え方は必要です。相場サイクル論の特徴をぜひ捉えておくと良いでしょう。

ちなみに、最初から空売りに挑戦することは止めておきましょう。株価は0円以下にはなりませんが、上は青天井です。「買いは家まで、売りは命まで」という言葉もあるくらいです。初心者は買いから学ぶことを推奨します。

F:デビュー時の難易度は、やはり相場サイクル次第

当然、株式投資デビューした時の世界情勢や景気等によって、投資の難易度は大きく異なります。偶然にも金融相場の始まりに投資家デビューしたなら、あなたはすぐに有頂天になれるでしょう。反対に、逆金融相場の時にデビューしたら、「二度と株はやらない」と言うかもしれません。時期によって投資を取り巻く環境は180度変わるので、出来れば相場サイクルをしっかり意識してから初めての投資スタイルを検討したいところです。

これから投資家デビューする人は、できれば実践経験を積むことと、本を読んで勉強することを同時進行した方が良いでしょう。「まずは知識をつけてからデビューしようと思います」と宣言した人で、まともにデビュー出来た人を私は見たことがありません。大げさに聞こえるかもしれませんが、私は「投資ほど理論と現実の違いを痛感するものはない」と思っています。絶対に、早いうちから実践の経験を積んだ方が成長速度は上がります。

G:投資スタイルの分化、変化、応用

入口こそ違えど、初心者~初級者が身につけるべき知識はかなり共通しています。基本ルールや最低限の知識を覚えることはもちろん、実際に相場の温度や恐怖、楽しさを肌で感じるのが初心者~初級者の大事な学習になります。まずはやってみて、10万円でも100万円でも儲けたり損をしてみたりすることです。経験を積んでいけば必ず壁にぶつかり、解決のために努力することによって、自分の投資スタイルが分化したり、応用が利くようになります。

成長の過程

「いろんなスタイルを使い分けるのが良い」と先程は述べましたが、経験を積むにつれ、ベースとなるスタイルはどうしてもある程度固まってくるものです。例えば私の場合、先程の掛け算で説明すると、

「長期」投資で株価規模が「中」くらいの「バリュー株」を「買う」

こんなスタイルに主軸を置いています。しかし、状況に応じて使える「サブスタイル」も構築するイメージが良いかもしれません。例えば私の場合、相場環境が良い金融相場の時期なら、

「中期」投資で「小型」の「成長株」を「買う」

こんなスタイルに変身したりもします。

だんだん、自分がどれくらいの期間なら我慢が出来て、どれくらいの損失までなら精神状態を正常に保てるのか、そして自分がどんな銘柄を好むのかがわかってくるはずです。それまでの学びを活かして外貨や指数売買などに転向してみるのも良いでしょう。

H:上級者への道

ここまで、一つのスタイルに固執するのではなく、自分自身が状況(相場サイクル)に合わせてスタイルを変化させていくことが重要だ、と説明してきました。自分から積極的に相場にスタイルを合わせていかないと、息の長い投資家にはなれません。それに気づいていくつものスタイルを試み、自分のスタイルを研究する姿勢のある人が上級者になっていけるのです。実践はいずれ経験値となって積み上がり、その積み重ねはやがて自分の味方をしてくれるようになります。つまり、使える「引き出しが増える」ということです。知識や経験は、自然と自分の投資スタイルにリンクしていくのです。

世界における日本株の価値は数十年ぶりに浮上するはずです。少なくとも、これまで続いた「失われた30年」というトレンドからの脱却時期になることでしょう。そういった意味では、30年の経験を積んだ超ベテランの投資家でさえも、この大きな時代転換に対応出来る人と出来ない人の差が出てくるでしょう。古老に学ぶべきところは学び、新時代に対応したやり方は自分で模索しなくてはなりません。一つのやり方に固執せず、臨機応変に時代に対応する能力を磨きましょう!

まとめ

○投資スタイルは、選択すべき要素の掛け算(組み合わせ)で決まる。要素は無数にあるので、投資スタイルも実質無数に存在する。

○完璧な一つのスタイルは存在しない。相場サイクルの状況に合わせて複数のスタイルを使い分けることが出来たらベスト。大まかなスタイルを決めて、サブスタイルを持つ感覚もOK。

〇どんなスタイルで投資を始めても、いずれ一度は壁に突き当たる。なので、初心者はどんなスタイルで投資を始めても問題はない(ただし、空売りを除く)。当然、そこからの努力が大切!ここがスタートライン。

他の記事はこちらから探すと便利です。
https://note.com/n_kabu/n/n94f0f50bf81c

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