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不動産投資の種類②【築古区分】

複数回にわたり、不動産投資にはどんなものがあるのかを見ていきます。一口に不動産投資といってもその種類は様々です。それぞれ一長一短があり、自分に合った投資手法を選んでいく必要があります。

一連の連載の目的は、不動産投資の典型的なパターンについて、ざっくりとしたイメージを持ってもらうことです。まず、新築区分と戸建てを説明し、次いで地方一棟を都内一棟と比較しながら説明します。今回は築古区分についてです。

築古区分

本稿では、築古区分についてメリット、デメリット両方を確認し、私見を述べたいと思います。また、以下の視点で三段階評価(A:上出来、B:普通、C:困難)を下していきます。

評価ポイント
① 運用益(インカム)
② 転売益(キャピタル)
③ 節税
④ 資産形成
⑤ 投資の容易性
⑥ 取り組みやすさ

では、早速見ていきましょう。

特徴

築古区分のイメージは「ある程度は儲かるが、最後はばば抜き」というものです。

総じて、築古区分はベテラン大家さんが多いです。収益性も高く、現金で購入し続けられれば、将来的に指数関数的に資産が増えると思います。手法としては優れていると思います。

ただ、通常はあまり問題にされませんが、区分独自の問題があります。それは長年そこに住んでいる住民同士の意見がまとまらなくなり、思うように運営できなくなることです。

日本のマンションは、大量に出始めたのが、およそ60年前になり、まだ本格的な建て替え時期にきていません。過去にも、地震など自然災害への対策で建て替えが必要になる場合がありましたが、全く建て替えが進まない事例が散見されます。

 新築当初は、比較的、住民同士の利害関係が一致しています。しかし築30年ともなると住人の層が変化していきます。それに伴い利害関係も異なってきます。資産価値を高めるために再築したいと望む方もいれば、古いままでも、傾いたままでも住み続けたいと望む方(特に高齢の方)もいます。中には連絡を取れない方もいます。

つまり、建て替えや大規模修繕をすること自体の意見の一致ができないのです。意思の合致に必要な割合区分所有者数の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成が必要になります。

仮に、建て替え自体の意思統一が出来たとしても、資金的な裏付けも乏しい場合があります。通常、マンションの新築分譲に際して、修繕積立金をその保全に充分な額を徴収する例は少なく、費用がなかなか調達できません。

他にも、最近よく問題になっていますが、管理組会の理事長が組合費を使い込んでしまったという事例に代表されるように、その内実はなおさら悲惨を極めていることもあります。住民が管理組合に無頓着な場合が多い状況では、理事長が使いこみなど不正行為している場合がままあるのですね。

こういった問題点を解消し、建て替えが成功した事例では

① 修繕積立金が十分ある
② 容積率が既存の建物のより大きく、建て増しが可能で、建て増した部分を売却して、新たに資金ができる
③ 敷地に余裕があり、従来の建物の横に新築し、新築と同時に従来の建物から新築の建物に引っ越して、新たな建物を建ててている間に引っ越す必要がない場合など非常に恵まれている

といった条件の場合がほとんどです。

しかし、現在の中古区分は、容積率に余裕があるどころか、建て替えの時に逆に小さくせざるを得ない既存不適格な場合が多く、敷地横に新たにマンションを建築できる余地のある物件は極めて稀です。

容積率や敷地に余裕があるかは、主として、建て替えの時の問題ですが、
先に述べた十分な修繕積立金がなければ、本来必要な大規模修繕もできなくなります。

多くの築古区分は、建て替えが実質上不可能であり、適切な修繕を行わなければいずれ、廃墟にならざるを得ない状態になります。中古区分の怖さは、そこにあります。私は、鬼怒川の廃墟ビルを連想してしまいます。ただ、鬼怒川の廃墟ビルは単独所有が多いでしょうから、廃墟となっても固定資産税の支払いで足りますが、これが区分であれば、固定資産税の支払いばかりか、共益費や修繕積立金の支払が毎月発生する恐怖があります。

このように築古区分について後ろ向きなことばかり述べましたが、区分所有法の法改正が行われ建て替え決議が行われやすくなったり、容積率が緩和されることが将来的にないとは言い切れません。希望的観測ではありますが、今後この区分が抱える問題点を解消するために政府・自治体も動かざるを得ないでしょうから、こういった懸念を払しょくできる可能性は高いです。

何よりも、そういった問題が発生する前に、ある程度の運用益を取り、転売益も取れるよう、そうなる前に売却すればよいのです。最後にババを持っていなければいいのですから。

評価
(A:上出来、B:普通、C:困難)

運用益 B (それなりに儲かる)
転売益  B (それなりに儲かる)
資産形成 B (ただし、持ち続けると負動産になる)
融資  C (土地が共有なので担保力が弱い)
手軽さ B (普通)

私ならどうするか?

それなりに利益になると思いますが、最後まで持っていっても大丈夫との安心感がないので買わないでしょう。また、土地が共有であり資産性に乏しく、その意味でも買うという選択はしにくいです。

この記事を書いた人

中島亮(なかしまりょう)

中央大学法学部卒。法務博士

主に地方の一棟アパートを購入する個人不動産投資家。
サラリーマン15年目にアパート投資を開始。
その後、6年間で10棟93戸を購入し、退職。

現在、39棟383世帯所有。年間賃料19,000万円超え。キャッシュフローは実質3,000万円を超えている。大家向けN塾主宰

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