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恋してもやめるわけにはいかなかった、日記の中で綴られた性や恋 ー【ティンダー・レモンケーキ・エフェクト発売に寄せて〈後編〉】

10月31日に発売を予定している『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』の出版を記念して、インタビュアーとして一人の男性を(脳内)召喚し、自作自演インタビューを実施しました(笑)。本インタビューは前編、後編の全二回となります。前編は今回はTinderで日記を送る活動について、今回の後編では日記の中で綴られたセックスや恋、好きな人「彼」についてです。ぜひご興味ありましたらお付き合いくださいませ。

<インタビュアー設定>

僕はたまたま下北沢にある某日記屋で『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』を手に取ったとき、衝撃を受けた。なんなんだ、この訳のわからない人はと。どうやらTinderで「日記」という名前で登録して、ひたすらメッセージから日記を送り続ける活動をしていたらしい。僕はこの本を読んで、この人に会いたいという好奇心が抑えられなくなった。僕は彼女にコンタクトを取り、インタビューの機会をもらった。



自分の身体を取り戻すため、性について書く


ーまず、結構赤裸々な内容ですよね?

セックスのことですか?

ーそうですね。それに恋も隠さない、セフレの存在も、性病のことも、かなり具体的に書いている。

性病については、前回も少し触れましたが、ちょうど治療真っ只中だったんですよね。わたしがかかった尖圭コンジローマに関しては、男性側は自覚症状がなく、女性側にうつしてしまうことがあるウイルスです。だからティンダーにいる男性たちに向けて「お前らのせいだからな」って気持ちも少しありながら書いてました(笑)

ー「お前らのせいだからな」ってなかなかのパワーワードです(笑)

ごめんなさい。もちろん、それは誇張であることは分かっていますが、Tinderにいるということはすくなからず出会いを求めているわけですし、もし性的な関係を求めていたり、将来の彼女ができるとすれば、全男性に関係のある事象だと思ったんです。だから面白おかしく書くことで、男性が女性に性病をうつす可能性があるということをわからせたかった。

ーある種の啓蒙活動のような?

そうですね。もし性病を移した場合に女の子はこういう思いをするんだぞという気持ちは少なからずあったと思います。あともうひとつが、わたし自身が性病を面白い現象だととらえていたんです。笑いの種になるんですよね、やっぱり、飲み会とかで。「最近どうなの?」「性病になったよ」ってこんな最高のオチはないわけです。だからそれで笑いをとりたかった。
わたしはずっとち●こは笑いが取れるのに、ま●こではそれができないことを疑問に思っていて。自分が持っている器官が神格化されていることが気持ち悪かったんです。

ーたしかに。包茎とかにしてもち●こって笑いのネタですしね。女性器をそういうふうに扱うことには男としてはやっぱり抵抗があります……。

それは今までのいろんな歴史がそうさせているとは思うんですが、海外のドラマを観ていて、性に対して奔放であることがもっとポジティブに捉えられていることや、ま●こも同じように下ネタの対象であることがわたしにとっては憧れだったんです。
ドラマ版の『フリーバッグ』が好きで、その原作となったフィービーの一人芝居を見にいったことがあるんですが、主人公が付き合っている彼氏にま●この写真をねだられるというシーンがあったんです。それでいろんな角度からま●こを撮影する描写をやるんですが、それがめちゃくちゃ面白かったんですよね。笑っていいんだって思えて、それが衝撃的だったんです。だからわたしもそれがやりたいと思って、自分の性事情をそういうふうに取り扱ったところがあります。これはわたしの身体をわたしの元に取り戻す、そういう意味もあるわけなんです。

女性も性を楽しむ主体。抑圧への怒りが原動力


ーセフレやセックスのことを書くときはどういう気持ちなんですか?


これも先ほどと同じで、自分が前向きにセックスを楽しんでいることを書きたかった。男女交際していない場合のセックスって、女性側が搾取されているという前提になりがちなんですよね。双方の合意の上でのことなのに。付き合ってない人とセックスする女性=可哀想な人だという構図がある気がしていて、これに抗いたかった。だって、付き合ってない人とセックスする男性はそうは言われないじゃないですか。そんなおかしいじゃないですか。たぶん、わたしはそれにずっと怒っているんだと思います。

ーたしかに。でもセフレとのセックスの描写はどこかむなしさも感じました。

もちろん楽しんではいるんですが、やっぱり好きな人ではない行為ってぜったいむなしいんですよ。だから思いっきりそのむなしさに酔って浸ってエモーショナルな文章を書きたかった(笑)Tinderにいる人は共感してくれるんじゃないかと思って。でも、自己犠牲的なセックスではない。わたしはそうじゃないセックスとの向き合い方を書きたかった。

ーそうですね。葉山さんの怒りがさっきから伝わってきます(笑)

すみません(笑)あとは身体感覚を残しておきたかった。恋をしている、愛がそこにあることではなく、そこに思いやりがあれば、その場限りでも楽しめる。これも一種の啓蒙活動にはなるのですが、Tinderで女抱くのは構わないけど、相手のことをちゃんと大事にしてやれよ、というメッセージを込めて書いてます。多分伝わってないですが。でも一人にでも伝わったらいいと思っている。

ーそれをストレートに書かないのはどうしてですか?

そんな説教くさいこと、ストレートに言われたら、イラっとするだけじゃないですか?それにストレートに言われて男性がやめるんだったら、この世に酷いセックスは存在していないと思う。エモさの中に、わたしの執念をぶち込むことでなんとかそれを伝えたい。そういうやり方のほうが気づいてくれるんじゃないかって思っているんです。それができるのが表現だから。

ーとはいえ、性について書くことに抵抗はなかったんですか?

ないと言えば嘘になるんですが、本にするとき、この活動は友達にも結構話しているし、友達も本買ってくれているけど、もうそんな恥ずかしくはないんですよね。読み返してもっと書けたなって正直思いました(笑)。
セックスくらい誰でもするじゃないですか。それを別に隠すことでもないかなって。さっきの海外ドラマの話に戻るけど、性を楽しむ主体であるんですよね、女性も。でも女性が付き合ってない男性とセックスすることは搾取されることになるんです。わたしはそのような相手も関係性も選んでないし、主体的に選んで関係を築いているのに、勝手に被害者と加害者にされるんです。そういうのも気持ち悪くって。だから、ちゃんと主体的に楽しむことを書くことにわたしは意味があった。

好きな人にも毎日送り続けた日記。恋してもやめるわけにはいかなかった


ー「彼」という好きな人に出会って、それも日記に書き続けたのがすごいです。


それに関してはそう決めてしまったからやるしかなかったんです(笑)。もう止まることはできなかった。日記祭に出ることも決まって、ZINEをつくることは決まっていたから、Tinderで書き続けないといけない。たかだか男に惚れたくらいで企画を変える訳にはいかなかったんですよ(笑)。それに彼自身がわたしの日記を楽しみにしてくれていたので、辞めるという選択肢はなかったです。それでほとんどラブレターのような日記を書く羽目になったんですが。

ー本にある日記は全てTinderに送ったものなんですか?

彼には送ることができなかった箇所や日記も、本にするにあたって追加しました。わたしがほかの人とセックスしているとか、彼に性欲抱いてるとかは、さすがに彼には送れなかった。ちなみに、わたしが彼について書いた箇所は、ちゃんと本人に全部確認取りして、了承済みですよ(笑)

ー彼の文章もすごくいいですよね?葉山さんから見て、どんな印象でしたか?

彼は熱心に毎日日記を送ってくれていて、日記が送られてくるのが楽しみな人のひとりでした。彼の文章はすごくストレートで、熱をもっているけど、さっぱりしているんですよね。そういう彼の快活な文章がわたしは好きでした。彼の日記には、よく友だちのことが書かれていて、その友だちたちのことがほんとに好きなんだなって伝わってくるんですよね。人を大事にすることができるし、その大切さをきちんと言葉にできるってすごいなあと素直に憧れていました。それに喜怒哀楽もかなりパキッとしていて、感情を全力で感じることのできる人なんですよね。こうだと思ったことに対して、行動していくことのできる気持ちのいい人間だと思いました。彼のそういうところにわたしはかなり影響を受けています。

ー葉山さんが好きになったのもわかるような気がします。ちなみにどんな人なんですか?


わたしから彼について言えることはこれ以上は何もありません。何も話すつもりはありません。あの本に書いてあることがすべてです。想像してください(笑)

ーそんな二人の熱いドラマを垣間見させていただいてありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました!再現性のある恋なんてこの世に存在していないと思いますが、Tinderというアプリのアルゴリズムの偶然が運んできた、唯一無二でもう二度と現れない、奇跡みたいな時間でした。もうこんな日記本は作れないと思うので(笑)、ぜひいろんな方に読んでいただきたいです。

2023年10月31日発売

〜おまけ〜

日記の中では、映画、アート、音楽、本、漫画などについても書かれています。葉山さん曰く「書いてないけど見てるやつとかぜんぜんある」「本になるならもっとちゃんと書いておけばよかった」「まじでえらそうに語ってすみません、でも日記なんで」と語っていました。ここでは、その断片となるようなキーワード挙げていただきました。

■映画
濱口竜介/ウェス・アンダーソン/レオス・カラックス/フランソワ・トリュフォー/エリック・ロメール/ウォン・カーワアイ

ドライブ・マイ・カー/ハッピー・アワー/親密さ/偶然と想像/わたし達はおとな/シン・ウルトラマン/街の上で/フレンチ・ディスパッチ/アネット/パリ13区/カモン・カモン/リコリス・ピザ/わたしは最悪。/スパイダーマン;ノーウェイ・ホーム/大人はわかってくれない/アデルの恋の物語/緑の光線/恋する惑星

■アート・デザイン関連
隈研吾/ロニ・ホーン/ソール・スタインバーグ/小池一子/SANAA/妹島和世/西沢立衛/ジョージ・ナカシマ/坂内拓/ミロコマチコ/millitsuka/we+/Nerhol/上野リチ/山中俊治/吉阪隆正/井上泰幸/アレック・ソス/柴田敏雄/鈴木理策/河野未彩/オートモアイ/ライアン・ガンダー/原弘/藤本壮介/ジャン・プルーヴェ/ゲルハルト・リヒター

民藝の100年/2121年 Futures In-Sight/MAISON&OBJET/TDC賞/The Thinking Piece/惑星ザムザ/みんなの椅子/私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ/

■書籍
古橋悌二『メモランダム』/穂村弘『あの人と短歌』/瀬戸夏子『はつなつみずうみ分光器』/大崎清夏『踊る自由』/谷川俊太郎『はだか』/吉増剛造『黄金詩篇』/フランソワーズ・サガン『愛と同じくらい孤独』/クラリッセ・リスペクトル『星の時』/三島由紀夫『美しい星』

千葉雅也『現代思想入門』/マーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』『ポスト資本主義の欲望』/『ファンダムエコノミー入門』

■音楽
カネコアヤノ/折坂悠太/七尾旅人/坂本慎太郎/cero/中村佳穂/くるり/KIRINJI/スピッツ/クラムボン/Original love/Ovall/FINAL SPANK HAPPY

■ラジオ
空気階段の踊り場/真空ジェシカのラジオ父ちゃん/ハライチのターン/三四郎のオールナイトニッポン0/マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0/83 Lightning Catapult/OVER THE SUN/こんにちは未来

■中央線
LOU/七つ森/エリックサウス/文禄堂高円寺店/蟹ブックス/gion/roji/喫茶天文図鑑/書楽/どんぐり舎/今野書店/本屋ロカンタン/FALL


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。ご興味持ってくださいましたら、『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』にて、この二人の数奇な出会いの結末をぜひ見届けてください。

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