わたしが人魚姫だった頃 / 20191004

わたしが人魚姫だった頃、きみへの羨望は全て泡にして消してしまったから、この世から争いが絶えることはないんだ。空気の中に蔓延した悪意が、醜態が、明るみに出てしまったら、私はどうしたらいいんだろう。

あ、ああ、大声を出して、私をここから出して、

高校生の時、ある時期になると通学路が彼岸花でいっぱいになるのが、朝のぼんやりとした曇天と重なって、とても不気味だった。勝手にその道を彼岸花が群生する通りだと認識していたのに、違う場所でも真っ赤な海となって揺れているのを見た時は、この世でよからぬことが起こっているのかと勘違いしそうになった。そう思ったら、ある時期を境に急激に彼彼女らは居なくなってしまって、もう二度と帰ってくることはなかった。また、この季節がやってきたんだね。今咲いているのは、私が見た花ではない。人間も同じ、私たちがこの世に戻ってくることは、二度とない。

生きていて!

ありがとう お前には関係ないよ

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