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「一生で必要な服はわずか149着」って本当?

先日、キムラさんに教えていただいた日本経済新聞の投稿。
イギリスのファッションブランドRapanui(ラパヌイ)の推計によると「一生に必要な衣服は149着」とのこと。投稿をクリックして記事を読むとRapanuiの試算が書かれており、そこから環境省が公表している衣服が大量生産・大量廃棄されているとするデータ、ファッション業界のサステナブルな取り組みについて書かれていた。

この投稿のコメントや引用をみていると、ネガティブなコメントが多くて暗い気持ちになった。「足りなさすぎる」「着替えはどうするの?」「服を買う楽しみを奪われる」などなど。会員登録すると無料で読める記事なのだけれど、投稿をクリックして記事を最後まで読む人も少ない様子だった。

環境問題に興味ある人って条件反射で嫌われそうだな…と暗い気持ちになりながら、どうしてなんだろう?と考えてみた。

記事を読み直してみると、日本経済新聞の投稿では「一生で」と書かれているが、実際の記事では英国の成人(18歳)から平均寿命の81.2歳までの63.2年間で算出された数字だ。

我が子の服を赤ちゃんの時から毎シーズン準備することに悩まされてきた子育て世代が、この投稿だけを見たら「少なすぎる!」と思うだろう。こんなデータは嘘に違いないと思われても仕方がないかもしれない…

それから服の耐用年数についても誤解がある書き方がされていると思う。
シャツ類の耐用年数が2.74年となっているが、衣服が痛むのは「着て、洗濯」した時だ。大事に保管されている衣服はたいして傷まないが、着て洗濯して古くなっていく。この計算は着て洗濯してを1回=1日と考えられている。つまり一着のシャツは365日x2.74年=1000.1日で1000回洗濯に耐えうるということ。

7着のシャツを持っていて、毎日着まわした場合は、
7×1000.1÷365=19.18となり19年も新しいシャツを買わずとも大丈夫という計算になる。

サステナブルファッションに興味のない人からすると、7着のシャツを毎日着回しても、2.74年目で7着全て買い替えになりそうなイメージを持つ人も少なくないかな?と感じた。

とはいっても、19年より先に体型や生活の変化なんかで買い替えが必要になりそうではある…

というふうに、ちょっとだけ冷静に考えてみるとサステナブルファッションについての情報に偏りがあって、ファッションが汚染産業第2位から抜け出せるのはまだまだ先だなと感じた。


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現在はいろんなアパレルがサステナビリティを打ち出している。ファストファッションを牽引している、H&MやZARAもリサイクル素材やオーガニックコットンを混ぜた商品を出しているし、WEBサイトの片隅にサステナビリティについての取り組みを紹介するページがある。ユニクロもリサイクルやリペアの取り組みを始めた。

私がよく利用するGood On Youというオーストラリアの非営利団体が運営している、アパレルのサステナビリティを5段階で評価するサイトでチェックしてみると、Zaraは最低ランク 、H&Mはランク1で、ユニクロもランク3だ。冒頭に出てきたRapanuiはランク4と評価されている。

ファストファッションが環境問題に取り組むのは滑稽な感じもする。でも、どの企業も真剣に取り組まなければ事業が続けられないという危機感がある。というのも気候変動が進むと素材の調達や製品を作ること自体が難しくなっていくと予測されているからだ。

例えば2023年の綿花の主要生産国の米国で深刻な干ばつが発生し、収穫量が減ってしまった。2022年にはパキスタンで「史上最悪レベルの大雨被害」(日本貿易振興機構=ジェトロ)に見舞われ綿花の収穫が減ってしまった。

ウールも気候変動の影響を免れず、干ばつや大雨などで飼料の確保が難しくなり、暑さで羊の出生率も下がると予測されている。

生産量が減ると、原材料の価格が高騰し、低価格で商品を作ることが難しい。衣服をリサイクルして新しい衣服を作る技術は、まだまだ未熟で改良の余地がある。というわけで、ファッション業界で真剣に取り組まなければならない問題なのだ。

とはいえ、環境問題に一番効果的なのは大量生産・大量廃棄をやめることだけれど、企業として利益を出し続けるのと相反するから、この部分の問題は解決できないのだろうなと思う。

大量生産・大量廃棄の問題は、行政や消費者の意識を変えることでしか取り組むしかないのかもしれない。



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