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インターネットが発達しても人間は変わらない?

僕が海外インターネットオークションの「eBay」を始めた1999年当時、ネット接続は確かまだISDNだった。
欲しい商品を検索して、その50件ほどの検索結果が表示されるまで「一服入れようか」という感じで待たされた。説明用の商品画像も小さかったり不鮮明だったり、あるいは掲載画像数が1枚しかないなかで、「これだー!」と掘り出し物を見つけていたりした。

現在は、光回線でネット接続速度は爆速となり、高解像度画像が「これでもか」とばかりに掲載され、英語のページをまるごと日本語に翻訳してくれる無料機能も使えるようになった。
決済システムも昔は郵便局で国際為替(Money Order)に変えて郵送していたものが、クレジットカードを使ってネットで瞬時に決済できるようになった。荷物の配達状況すら、ネット上でトラッキングできるようになっている。

でもこんなに便利になったにもかかわらず、普通の人が趣味で海外のインターネットオークションでものを売り買いするようになったとはあまり聞かない。どんなに円高・円安になって、インターネットが発達して便利になっても、海外オークションで活躍するセミプロ日本人の数は、1999年当時とそう変わっていないような気がする。

考えたら当たり前だ。
海外通販や旅行のついでに買い物をするのは珍しくなくなったが、趣味で「売り手を始める」人間はそうはいない。だってクレームとかトラブル解決も大変そうだし、そうまでして売りたいものもないし。
インターネットは個人をつなげるビジネスを可能にしたけど、実は「人間はいくら便利になっても変わらない」部分もあるよねえ…でもそのままだとつまらないよねえ…というのが今回の記事の趣旨です。

頭おかしいんじゃないの?というレベル

僕の直感的な感覚では日本国内のオークションサイトで買い物する人は全体の30%くらいで、売り手になるのはその10%くらい。つまりネットユーザー100人中3人くらいしかセラーにならない感じですね。
これが海外となるとさらに少なくて、eBayとか海外のオークションサイトまで突撃して買い物するのは100人中1人いるかどうかでしょう。さらに海外オークションサイトでセラーとなるのは「頭おかしいんじゃないの?」というレベルで、3000人に1人いるかどうか…という気がしています。
「『「頭おかしいんじゃないの?』というのは大げさだろう」と思った方。実は理由があるのです。

理由としては英語の壁(心理的障壁)もあるけど、商習慣の違いが大きい。
一番の違いは返品の自由さですね。基本的にアメリカでは消費者のほうが偉いので、気に入らなかったら返品が当たり前。
例えば新品のデジカメ売って、バイヤーが「ほかでもっと安いの見つけたからいらない」と思えば返品できる。しかも箱はぐちゃぐちゃに開封され、包装用のプラスチックパックがなくなっていたり、マニュアルが折れ曲がっていたりするのも当たり前。特に不届き物は、内容物を1~2個失敬する奴もいる。
新品のデジカメが返品でぐちゃぐちゃになって帰ってきたら、セラーとしては「これもう売れないじゃん!」と泣きたくなりますよね?それがアメリカ。

でも日本だったら「もう完全な中古品」という商品を、新品として平気で売ったりします。それもアメリカ。
クリスマス商戦時のニュースで、「プレイステーションを購入したら、中にゲーム機はなくて石が入っていた」というニュースが時々ありますね。
あれは悪意のあるバイヤーが返品時に中身をすり替えたもので、クリスマス商戦で忙しいからと店側が返品時にろくにチェックせずそのまま再度売ってしまうからそういう事が起きるのです。それもアメリカ。

ノークレーム・ノーリターンは通用しない

「ノークレーム・ノーリターン」というのは日本のヤフーオークションで個人の売主の常套文句ですね。要するに「ちょっとくらい変なところがあっても、文句言ったり返品したりするなよ。売りっぱなしだからな!」というトラブル回避を前面にした姿勢ですね。これも気持ちは分かります。でもこれはアメリカでは通用しません。残念ながら。僕はeBayが日本に浸透せず撤退してしまったのは、このアメリカの商習慣、つまりeBayがシステムに組み込んでいる「返品当たり前」思想が受け入れられなかったせいだと思っています。

基本的にアメリカの「返品自由システム」は善意の購入者という前提に成り立っているのですが、それを悪用する人間は少数ですが必ずいます。余談だけど、ニューヨークで服を売っているある高級ブランド店は、アジア系外国人のクレジットカード利用を制限しました。
なぜかというと新製品が出た時に各サイズを1着ずつ合計1万ドル以上買ってくれる上客だけど、あとで必ず返品してくるから。
しかも返品された服は一度バラバラにして、適当に縫い合わせた跡があるという。要するに、新着の服のパターン(型紙)を盗んでいるのですね。
僕も似たようなことやられたことあります。
こんな日本での「ノークレーム・ノーリターン」常識が通用しないアメリカで、コネチカットの田舎のおばちゃん相手に返品自由を前提にモノを売るのは「頭おかしいんじゃないの?レベル」というのが納得していただけましたでしょうか?

本当に返品を受け付けるの?

ええもちろん。僕は14日間のNo reason return & Money back条件で売ってます。つまり到着後14日以内だったら返品を受け付けて、返金に応じるというオプションをつけて売っています。これは手数料ディスカウントの条件になるので飲むしかない。しかもアメリカでは返品時の送料は売主が払って当然…と考えるバイヤーばかりです。

2年前なんか、「11月から12月末までに購入した商品はすべて1月中旬まで無料返品を認めなさい。さもないと手数料20%ディスカウントしないよ」という極悪条件をeBayが出してきた。さすがに評判が悪かったのか、昨年末はこの条件はなくなりましたが。

今では逆に返品時の手数料をセラーが設定できるようになっていて、僕は10%を選んでいます。まだこの機能を使ったことはありませんが。
あとヤマト運輸が「アメリカからの着払い便始めました。お客さんからの返品にどうぞ」とか売り込んでたな。僕は今まで返品を希望するバイヤーに「送料無料なのはアメリカ国内同士の取引だけだから!」と返送用の送料負担を突っぱねてきたので、「ヤマト運輸め、余計なサービス始めやがって」というのが正直な印象です(笑)。

そして僕の場合、幸いなことにあまり返品がありません。もちろんそうなるように努力しているのですが、それはまた別の記事で。

でもたまに返品トラブルで凹むときもある

最近はeBayにも日本のブランドリサイクル店が多く出品しています。円安だしね。企業なら理不尽な返品も仕事と割り切れるかもしれませんが、個人でやっていて返品を食らうとメンタルが折れそうになります。僕も年に何度か返品トラブルがあって、嫌になって出品をしばらく休んで年間100件販売の手数料ディスカウント条件に適合しなくなる…ということが時々あります。

いやホント、いろいろと大変なんです。
それでも僕がeBayでセラーやってるのは儲かるのと、儲かると楽しいからなんですが。「やめとけ」と叫ぶ心のリミッターをポイとはずして、インターネットの可能性をポジティブにとらえるのが、個人的にとても好きです。そしてこの「心のリミッターをポイとはずして」ができるかどうかが、スタート地点に立てるかどうか…の基準になるような気がします。

とはいっても普通の人(特に日本やアメリカでのC2Cビジネスの経験が皆無の人)にはやっぱりお勧めできない。いきなり海外オークションでセラーになるなんてことはね。リスクを感じるならやる必要もないでしょう。僕と同じことをする必要はないのです。

まとめ

僕はインターネットが「見知らぬ海外の人にものを売りつけることができる可能性」を与えてくれたのでそれに飛びついた。ただし可能性はあっても、同時に英語の壁はもちろん、いろんなリスクや心配事、そして商習慣の違いとかもあるので万人にお勧めすることはできない。

でもそれって逆を言えば「心理的な参入障壁があって、ライバルが少ない」ということでもあるんだよね。僕の記事を読んでヒントにしてほしいのは、あなたが活躍できるインターネットの可能性をどう広げるか?といったシンプルなことです。欲があるなら、ぶっ飛んで来い。他の人が見ていない世界を見ることは、きっとあなたのためになるでしょう。おわり。


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