見出し画像

【1日1曲コラム】Vol.4 何言ってんのかわかんねえよギーザー!【ブラック・サバス/Electric Funeral】

海外勢曰くブラック・サバスの特徴は「リフ」に加えて「激変する楽曲展開」なのだという。サバスでは前者があまりにもよく語られるから、曲展開のほうは二の次にされがちだ。
まあ70年代のロックはプログレやハードロックが黄金期で劇的な展開の曲が多かったし、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」みたいな曲まで出て来ちゃ、後から見たときサバスは少々影が薄くなるのはわかる。
ただ、「ボヘミアン・ラプソディ」は「Electric Funeral」のような作品の積み重ねで生まれ、積み重ねによって世間に受容されてヒットしたのだと思う。そう、全ては輪廻の果てに繋がっているのである。いきなりどうした。

「Electric Funeral」のメロディ構成はA-B-Aで、重ったるく魔術的なメインリフをしつこいくらい繰り返した後、急速なB部分が入る。サバスの良い所はテンポが遅い部分に「早い部分の前フリ」「抑圧」といった印象が無いところ。ついでにギーザー・バトラーのテンションや動作も早いところと遅い所で変化しない。終始謎のハイテンションで頭振ってる。

歌詞はオーバーテクノロジー系ポスト・アポカリプス的な感じで、現在にも通じる近未来SFの王道を行っている。サバスってあんまり歌詞に注目されないバンドだと思うし、実際そんなに深いこと言ってる印象は無いのだが、いざ読んでみると「ガッツリSF好きな人がガチで書いたSF系の歌詞」という感じで面白かったりする。読み込むときはあまり深く考えず、「何言ってんのかわかんねえよギーザー!」と叫ぶくらいの気持ちで読もう。

「Electric Funeral」は特別にテクニカルというわけではないし、歌メロも非常に短いフレーズを繰り返しているので、ともすればリスナーを飽きさせてしまう。しかも全体的なメロディは終始リフの一点特化。加えて全員が同じメロディを反復し、テクニカルな遊びは入れない愚直っぷりを見せてくる。これで魅力的なステージを作れるのは、音楽から何か特別な波長が出ていて人間の脳に直接訴えかけているとしか思えない。

冗談はさておき、実は「ヴォーカリストの歌が上手い」ことは、必ずしもプラス要素ではなかったりする。オジー・オズボーンの肉々しく悪霊めいて音程感が曖昧な声質は、聴いていてスリリングなもの。ただカラオケの点数が高い「上手い歌手」では、安定感があり過ぎて面白みが減ってしまうのだろう。
ヘタウマではなく、上手すぎないから良い。そしてただ上手すぎないだけの人では誰も相手にしないから、絶妙なバランスの上に立つ希少な歌手がこういう曲を歌える。人はそれをカリスマ性と呼ぶ。

記事を気に入っていただけましたら、こちらから安藤にCD代やごはん代を奢れます。よろしければよろしくお願いします。