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カジャグーグーを聞き直せ!

ニュー・ロマンティック終末期の登場

その昔、後にヴィサージを結成するスティーヴ・ストレンジを中心としたムーヴメントがありまして。これがニュー・ロマンティック。これといった特定の音楽性というよりファッション的なムーヴメントであるが故にすぐに終息したわけですが、80年代派としてはウルトラヴォックス、アダム&ジ・アンツ、デュラン・デュラン、スパンダー・バレエ、カルチャー・クラブなどワクワクするようなアーティストが登場してきたこの時代はなんとも思い入れがあります。
そんなニュー・ロマンティックの終わりに登場したのがカジャグーグーでした。

カジャグーグーは当初どう見られていたか

カジャグーグーはデュラン・デュランのニック・ローズに見出され、同じレコード会社(EMI)からデビューし、同じくデュラン・デュランをプロデュースしていたコリン・サーストンが担当、という経緯もあって「デュラン・デュランの弟分」的な見られ方をしているのが一般的。これが彼らにとって諸刃の剣だったわけですが、前身がフュージョン・バンドだった彼らがリマールを引き入れた時点で、デュラン的なアイドルバンドを志向したのも事実かなと。

1st "White Feathers"

そんな彼らのファースト・アルバムは、「君はToo Shy」の大ヒット(英1位・米5位)を生み、アルバムも英5位・米38位と上々の滑り出しを記録。
当時聴いたときはやはりデュランとの比較で、「えらくスカスカな音だな」というのと「軟弱な曲が多いな」という印象が強く、正直今もその印象は変わりません。
ただ、やはり突出しているのはリマールの甘いヴォーカルで、後にも先にも彼のような声質を持ったヴォーカリストはいないように感じます。当時のカジャグーグーの個性は概ねリマールが作り出しているところがあるわけですが、1曲だけ例外が。
それは「ハング・オン・ナウ」。

この曲だけ異様に完成度が高く、アレンジも丁寧な上にリマールのヴォーカルにもフィットした奇跡の名曲だと思います。80年代全体を見ても屈指の名曲。印象に残るのはニック・ベッグスのベースラインで、フュージョン・バンド時代の色が濃厚。
と、次もこの路線でいけばとんでもないバンドになるなと思っていたところにリマールが脱退。脱退理由は諸説ありますが、それは置いといて、結局彼らはリマールに代わるヴォーカリストを補充せずというまるでジェネシスのような判断をくだし、活動を継続します。

2nd "Islands"

そんな中登場したシングルが「ビッグ・アップル」。予想通りニック主導のバンドになり、フュージョン・ファンク色が強くなりました。イギリスでは8位だったものの、アメリカでは不発。

続くシングル「ライオンズ・マウス」は突き抜けたポップ感覚が魅力でしたが、イギリスでも25位に終わるなど、彼らのキャリアに影が忍び寄ってきます。
アルバムを聴くと、明らかに前作のスカスカ感がなくなり、緻密で丁寧な作りなんですが、リマール期のような「わかりやすさ」は減退し、ヒットしそうなキラーチューンがないことが英35位で終わった原因でしょう。
日本でもリマール脱退の影響は大きく、あまり語られることもなかったと思いますが、中古市場では比較的よく見かけることから、セールス的にはそこそこ売れていたと思われます。
完成度は明らかに上がっていたんですが…。

カジャ改名と3rd "Crazy People Right to Speak"

彼らはこの後、カジャグーグーからカジャに改名。人数もさらに減り、3人編成に。この頃になると改名の話以外ほぼ音楽誌に出ることもなく。そんな中、彼らは勝負をかけたサードアルバムを発表。デヴィッド・ボウイなどでも知られる名匠ケン・スコットをプロデューサーに迎えました。
先行シングルは「涙の傷あと」。

ところがこれが大コケし、その後のシングルも出らず、アルバムもヒットせず解散の憂き目に。
ただ、これは大傑作だと私は思っていて、"Your appetite"、"Jigsaw"、"You Really Take My Breath Away"など名曲目白押し。1stの抒情性と2ndの硬質なサウンドがミックスされた彼らの完成形です。

解散後はニックがベーシスト、チャップマンスティックの名手としてセッションなどに引っ張りだこになるわけですが、思うにニックの評価はもっとされて良いかと。
2007年にシングル「ロケット・ボーイ」、2008年に「ゴーン・トゥ・ザ・ムーン」とカジャ3人の再結成作品が登場するもこれもあまり注目されず。2003年のイギリスのテレビ番組"Bands Reunited"でリマールも含めた再結成がされたので、オリジナルメンバーでの再活動が期待されたんですが、残念ながらこれもポシャったようで。
ちなみに彼らのアルバムは2004年ごろにリマスター盤がようやく出るも、あっという間に売り切れ、2024年現在プレミアがついているので、手に入れるならばベスト盤になります。

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