恋は雨上がりのように

先日公開されたばかりの映画を見てきました。原作は数冊かじった程度だけど、好きな感じの話だったのを覚えている。漫画原作の作品って、ここ数年ほんっとに多くて、いいものももちろんあるのだけど、ガッカリするものとかもあるし、そもそも本編を見る前から予告編を見て萎えてしまうような映画もそれなりある中で、この映画は期待値が高かった…!
その理由はひとえにキャスティングが素晴らしすぎることにあるのだけど。主人公・あきら役の小松菜奈はもう誰も文句を言う人はいないだろうし、店長役の大泉洋も、最初どうなんだろう?と思ったけど、ビジュアルを見て、「店長だ!」と思えるルックスに仕上がっていた。そして、監督が帝一の國の永井聡さんで、主題歌が神聖かまってちゃんの「フロントメモリー」。帝一の國も面白かったし、映画館で聴くフロントメモリーはエモいだろうなと思って、映画館で見ることにした映画。

映画自体は爽やかで、青の色使いが印象的だった。すっと涼しげな、初夏のにおいのするような場面が多かった。あと、思った以上に疾走感もあって、駆け抜けるようなOPが印象的。飲食店でのバイトの描写も、個人的な懐かしさスイッチが入って、ぐっときたなあー。

そしてやはり何よりも、小松菜奈が尊すぎて、それだけで涙が出そうになった。動いている小松菜奈は本当に漫画から出てきたようないで立ちで、それだけでこの映画は80点をつけれるよ。まじで。ポニーテールが、走るフォームが、店長をじっと見る小松菜奈の目元が、本当にあきらだった。これは小松菜奈以外にはやれなかった、ドストライクなはまり役!
その一方、大泉洋は昔からバラエティで見ていたのでどうしてもそのイメージが拭えなかったし、店長じゃなくただの大泉洋にしか見えないんじゃないかと予告編を見て不安にもなったけれど、でも見てみると意外とちゃんと店長になっていた。原作でのイメージよりも少しねっとりした感じがしたけどそれも許容範囲だし、むしろリアルかな?髪の毛の雰囲気を上手く原作に寄せていて、スタッフの原作をリスペクトする姿勢が感じられたのが○。中にはまったく原作に髪型すら似せない映画もあるからね。顔は変えれなくても、髪型くらい努力できるだろ、っていつも思う。笑
あと、店長の大学時代の友人役をナックスの戸次重幸が演じているんだけど、この二人の絡むシーンがよかったなあ…としみじみ。本当に大学時代にサークル仲間だった二人だからこその、重みというか、リアル感がとてもよかった。

ストーリーは、”17歳の女子高生が45歳のおじさんを好きになる話”で間違ってはいないんだけど、本質はそこじゃないし、そこじゃないところがよい。諦めていたことを、出来ないと思っていたことを、取り戻していく物語。くすっと笑える部分も、切ない部分も、たくさんあってよかった。だけど、正直ちょっとの物足りなさはあったのは否めなくて、もう少し心理描写を描いてほしかったなあとも思う。特に、あきらが店長を好きになったときのことや、店長があきらから影響を受けていく部分とか、そういう心が動いていくところをもっと見たかったな。とっても素敵なストーリーなだけに。

ラストシーンの、二人の距離感は、切なくて、ぐっときた。恋が実るとかではないし、そういった意味では二人の人生は重なることはなかったけれど、でもそれぞれが影響しあったからこそ、前に進めたんだなっていうことが伝わるし、きっとお互いに大切な存在になったんだろうな。あのシーンのあきらの涙も、切ないけれど前を向いている感じがして胸を打つ。いいラストだった。

フロントメモリーも、亀田さんのアレンジがいい感じにかまってちゃんの毒素を中和していて、ぴったりだったと思う。「がんばろっかな今日は」と「頑張れないよ」と「そんなんじゃいけないよ」を繰り返しながら、人は前に進んでいくんだろうし、あきらも店長をそうやって前を向いたんだろう。諦められないそのものに対して、上手く行くかどうかの結果を問うのではなく、まっすぐ向かえること自体が、まぶしくて、キラキラしてるんだって思える映画だ。原作も続きを見たい。

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