かってに

勝手にふるえてろ(2/26追記あり)

私には彼氏が2人いる──突然告白してきた暑苦しい同期のニと中学時代からの片思いの相手イチ。 「人生初告られた!」とテンションがあがるも、イマイチ、ニとの関係に乗り切れないヨシカ。一方で、「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこうと思ったんです」という奇妙な動機から、中学時代からひきずっていた片思いの相手・イチに会ってみようと、ありえない嘘をついて同窓会を計画。ついに再会の日が訪れるのだが・・・。 “脳内の片思い”と“リアルな恋愛”。同時進行で進むふたつの恋の行方は?


ってなあらすじだったので、うーーーんと思いながらもなんだか気になって気になってしょうがなかったので見に行きました。が、これは、恋愛の話なんかじゃない。主人公が自分自身の抱えるコンプレックスだとか、価値観だとか、はたまたそんな言葉で表すことすら出来ないずどんとしたものを、ぐるぐるにかき乱してひっちゃかめっちゃかになりながらも、向き合い始める話だと感じた。
感想を書こうと思ったのだけれど全然言葉にならないし。
というか言葉にすると安くなりそうで怖いし。
感じたことは他の誰にもわかってもらえなくても十分で、自分だけの秘密にしておきたい。

と、思ってしまうほどには、主人公に共感しまくったのでした。
小説版も読んで、また気が向けば追記をする予定。

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地元の映画館で上映が開始されたので二回目を観てきました。ちなみに小説も読んだよ。
いろいろ思うことはあるけれど…すべてヨシカと二がお互いのことをぶつけ合う最後のシーンに凝縮されているよなあ。

主人公のヨシカは、まわりの人間を「本能的で野蛮」などと批判しつつ、人への興味は強くて、だけど劣等感や自信のなさからか距離をつめることができない。「友達と呼べる人はいない」なんて言うシーンからも推測できるように、なかなか心を開くことはないよヨシカだろうけど、そんな彼女でも悩み相談が出来るほどの友人のくるみも自分の秘密を暴露されたことをきっかけに完全シャットアウト。告白してくれたことによって距離が近づき、一時は付き合うことになった二に対しても「わたしが処女だから好きになったんでしょ。そんなの怖い」と言い拒絶。
ねじれている、生きづらいとヨシカ自身も感じている訳だけども、ヨシカのねじらせ、こじらせているものって、ずばり人との関係だよね。だからずっと過去のイチのことを引きずり続けてもいたのかなって。
ヨシカがなぜここまで自分に自信がなく、「わたしなんて」という劣等感が強いのかはわからないけれど、でもそういうヨシカにめちゃめちゃ共感したのです…。

だからこそ、最後の二とのシーンが響く。きっと実質10分もないであろう、あのラストのシーンのためだけに、わたしはこの映画を何回でもきっと観ることが出来る。あれは初めてヨシカが誰かに自分のことをぶつけて、そしてぶつけられた場面なんだろうな。「愛してるなら全て受け止めて」「こういう野蛮なのもわたしだよ」というヨシカの願望に対して、「ぶっちゃけ愛してるってとこまで行ってない」「むき出しで自分をぶつけるのは違う」と本音を言いつつ、「でも気になるんだ、一緒にいたくなる、好きなんだ」と言う二の嘘のないの言葉や気持ちがスッと入ってくる。良いも悪いも気持ちをぶつけ合って、涙して、「桐島くん」と名前を呼ぶ。そんな二人の一連のやりとりを観ていると、なぜだか胸がギュッとする。
そして、エンドロールのベイビーユ—。もう最高ですか。

というストーリーが大好きなんですけれども、他にも松岡茉優の演技がすごすぎるとか、渡辺大知の演じる二が憎めなさすぎるとか、靴などを使った映画的比喩が好きとか、ここでミュージカル調にしちゃうのかとか、くすっと笑える小ネタが良いとか、いろいろ素晴らしい部分があって、キャスティング、脚本、演出、音楽、映画において出来ること全部してるでしょって感じ。よく、原作のある映画って批判されることもあるけど、これは映画として原作を超えてきたなって思える作品。生涯のお気に入り映画リストに入れておきます。

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