見出し画像

存在感と世界観で闘う人を見た日(2024年3月31日、東京女子プロレスを観戦して思ったこと②)

 東京女子プロレスを観ると幸せな気持ちになる。
 東京女子プロレスを観ると生きる元気をもらえる。
 東京女子プロレスは心の栄養(もはや格言)。

 GRAND PRINCESS ’24の対戦カード発表時点でものすごく驚いたのが第7試合、鈴木みのる vs 伊藤麻希だった。

 まず何よりもこの2選手が対角に立つという画面(えづら)のインパクト!

 ワクワクしながら迎えた当日、東京女子プロレスのリングに立つ鈴木みのる選手を「風になれ」と叫んで拝んだ。

 プロレス王とも称される鈴木みのる選手を前にして、伊藤選手は全く気圧されることなく己の流儀でぶつかっていく。

 髪を掴まれた伊藤選手は嘘泣きにレフェリーを巻き込み、会場のブーイングを鈴木みのる選手に向ける。
「何にもしてねぇじゃねえか!」鈴木みのる選手が戸惑う隙に反撃、鈴木みのる選手も遂に泣くかと思いきや、泣かない。
「泣けよ!」と伊藤選手が鈴木みのる選手をコーナー追い込んでナックルを叩き込むと、さすがの鈴木みのる選手も頭を抱えて泣くかと思いきや、
「泣くかよおらぁぁっ!」とえげつないヘッドロックをかける。

 更には場外でパイプ椅子をぶつけ、フェイスロックで締め上げてくる鈴木みのる選手の攻勢に、伊藤選手もギブアップせず立ち向かう。

 試合は鈴木みのる選手のスリーパーホールドによるレフェリーストップで決着となった。
 こうでもしないと終わらなかったであろう勝負の後、鈴木みのる選手が差し出した手を取らず、伊藤選手は中指を立てて返答。
 その指をすかさず極めた鈴木みのる選手は、そのまま伊藤選手を引きずりながらリングを後にした。

 すごい試合を見た、見られてよかった! というのが率直な感想だ。
 リング上でぶつかり合っていたのは、感情というよりも信念のような気がした。
 鈴木みのる選手の圧倒的な存在感。
 伊藤選手の唯一無二の世界観。
 それぞれが互いのスタイルに乗ったかと思いきや、実は各自の流儀で相手のスタイルを乗りこなしている。そんな印象だ。

 とても高度な関わり方、コミュニケーションの極みという気がする。
 遠慮も抑圧も忖度もない。
 信頼と理解があるからこそ、存分に激しく表現できる。
 羨ましさを通り越して、憧れのような敬意のような思いを覚える。そんな試合だった。

 印象深い他の試合については、また稿を改めて書くことにします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?