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妹が自ら空へ還った日。

私が大学生の時。
入学してから、約3か月が経とうとしていた。

妹が中学3年生、バスケ部。
最後の夏の大会を目の前にしていた。

休日の朝、
日常の延長線上、
いつも通りの朝。

妹は部活の練習試合に朝からでていて、
私は昼からバイトだった。


私がバイトへ行く準備をしていた時に、
母親に一本の電話が入った。

「妹が練習試合の会場に来ていない」

妹はとっても真面目。
部活をさぼるような子ではない。
遅刻にしては時間が経ちすぎている。

だから、

なんとなく嫌な予感がした。


交通事故か、
誘拐か。


とりあえず状況がわかったら連絡すると
母親に言われ、バイト先へ向かった。 


だけど

自転車をこぎながら
涙がとまらなかった。


そして、
バイトの休憩時間。
父親からメールが入っていた。

「警察署にきてほしい」



私の人生の何かが崩れ落ちるような予感。






「妹が電車のホームで自ら線路に飛び込んだ。

 自殺した。」







なんで?

嘘?

夢?

どうして?




嘘ではないんだろうけど、

本当のこととも思えない。

夢ではないんだろうけど、

現実とは思えない。

この出来事を

どうやって信じたらいいのか

わからなかった。



こんなことが

自分の人生に起こるなんて。

まるで

自分の人生ではなく、

何かの物語でも聞いてるかのような。



当たり前のように
毎日顔をあわせていた妹。

一緒にご飯食べて、
テレビ見て、
笑って、
嫌味言い合って、
いつも私の二段ベットの下で寝ていた妹。



この身体をもって

もう二度と会うことはない。

絶対に。




当たり前の毎日は
こんなにも一瞬で消え去るのか。



妹の身体は、
もう姿形はなく、

最後に顔を見ることはできなかった。


昨日の夜、
疲れ切っていた妹の姿、

あれが妹の顔をみる最後だった。



歩いてるけど

歩いてる感じがしなくて

自分の体がどこにあるのか、

わからない。

何が起きてるのか、

わけわかんなかった。



妹がもうこの世界にいない。

でも、

世の中は今まで通りに回っている。

どうして?

理解できなかった。



ふと

何事もなく、

妹は実は生きてたって、

家に帰ってくるんじゃないか

そんな感覚が抜けなかった。


だけど、

二度と帰ってくることはない。

取り返しがつかないって

こういうことなんだ。



ものすごい体の疲労感。

エネルギーがどこかに吸い取られていく。

まるで亡霊のよう。



何をしてても、

何を見ても、

何を聞いても、

妹を思い出して、

涙をこらえるのが精いっぱいだった。


大好きな空を見ても、

キレイな花が咲いていても、

キレイすぎることが

悲しすぎた。

ただ

ただ

悲しさと空しさしか感じなかった。






「なんで、妹は死んで、

 私は生きているんだろう。」





こんなにそばにいたのに、

死にたいと思うほど

苦しんでいた妹の苦しみに

私は気付けなかった。

妹を助けてあげられなかった。

私は自分のことしか考えてなかった。



私よりもたくさんの才能と能力をもっていた妹。

なんで妹じゃなくて

私が生きてんだろう。


自分が情けなさすぎて、

こんなどうしようもない自分が何より憎くて、

後悔するという言葉におさまらない気持ち。



そんな気持ちと、

くよくよ泣いてる場合じゃない、

生きているからには

私はもっと成長しなきゃいけない。

もう二度と大切な人を見殺しにしたくない。

もし来世があるのなら、

次生まれ変わるときは

ちゃんと妹を救える姉になりたい。


そんな自分を叱咤激励する気持ちとが、

ずーーーっと

ぐるぐるしていた。




この世界で

わたしが心から幸せを感じることは

きっと

もう二度とないと思った。


笑い方も忘れた。
口角が重たすぎる。

今までどうやって笑っていたのか
わからなくなった。


そんな日。
 


わたしには

とにかく

生きることしかないと思った。


とにかく

生き抜くしかないと

そう思った。




妹が自ら空へ還った日。 


 

それは


わたしの人生が本当の意味で始まった日。

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