短詩集(1/21更新)

(言葉の倉庫。不定期に追加する。)

1.真夏に火照った頬をさするような
消え入りそうな種火を煽るような
眼前を睨む挑戦者の背に触れるような
淀んだ部屋の空気を押し出すような

言葉は風
吹き抜けて さらって 去ってゆく
息は風
声帯を震わせて言葉を乗せる
さぁ 吹いて行け

ーー
2.垂れる小枝の葉が
風に吹かれ揺れている
風は目に見えないが通ったのがわかる

目に見えなくて
知覚できなくても
存在するもの
僕の頭では及びもしないけど
存在するもの

去っていった風の気配
頬をさする慰藉の気配

ーー
3.落ちる枯草と
切られた青葉の匂い
それは毛髪のようなもの?
命の境は幹なのか根なのか
いずれにしても
伸びようとする意志が断ち切られる
物悲しさは未だに

ーー

4. 農夫が毎日 畑の世話をする
作物の背は伸び  実り
美味しくいただく

詩書きが毎日(とは言えないまでも)
言葉を書きつける
ノートは黒くなり データが増える
伸びているのか不安もある
寄せ集めたガラクタのピースが
バチっと嵌る達成感
美味しいものが食べられるわけではないけど

ーー
5. 不快感にドアをノックされ
自由への言葉が起きた
感情をごた混ぜにした音なき音
もし幸運にもその状態になれたとしたら
そこで何をするのだろう?
どのように生きるのだろう?

ーー
6. さまよった心では何も読めないし
何を書いたところで嘘っぱちに感じる
読んだはずの行に繰り返し戻るように
過ぎたことを反芻し  悩みに多くの言葉を付し  何年間も同じ問題に検討に検討を重ねている

ーー
7. 言葉は
抱き上げる腕にもならないし
病気の君を治せもしない
無力だ
しかし、
俺の中で錨になりコンパスになり
励まされ  笑かされて
押し上げられ  引き上げられて
言霊に力は宿る

ーー
8. 仮想と現実に分かれた僕ら
仮想に現実があり
現実に仮想がある
比率の程度
僕らの一面がそこに居た

繋がりに優劣などなく
離れていてもあたたかい
近くにいても冷たい

分かれた僕ら
さよならも必要
分かち合った僕らの繋がり

ーー
9. 月光を遮る木々の下
目隠しをさせられ
エレクトロな多重奏
夏だね

ーー
10. 鬱憤を受粉させて咲く花は、血の気の引いた真っ青。脆く儚げな、美に似た何か。

ーー
11. アニメは、1クールで、出会って、困難に挫折して、成長して解決する。

現実は、1クールでは、何も変わらず、久しぶりに会っても「髪伸びた?」ぐらいで。

いつか語れる内側のドラマがあるといい。

ーー
12. 愚痴も文句も寝落ちした涎のように
口から溢れてハッとする
変えてやるよとハッスルしろよ

ーー
13. 破滅すれば興るし、手放せば迎えられるし、循環する水や血のように。涙や流した血は、薄まれど滅しない。

ーー
14. あっちに行こうか
こっちに行こうか
どっちに行ったとしても
俺は今ここに

ーー
15. 小さな綻び
は、ずっと前からあって
に、気づいていないだけで
目を開けて見てしまったいま

靴下に棘が入り込むような違和感
そうなると取り除かれる運命にある

寛容と言えば美徳だが
小さな棘を許すべきだろうか
悪意があったら
悪意がなかったら

運命などはなく選択があるだけだ

ーー
16. 木は光を仰ぎ抱きしめている
あたたかさを内に溜め
また咲く日を夢みて

ーー
17.
真っ暗闇なトンネル  二つの出入口に光
眼球は二つ  サングラスをかけたら暗くなる
目隠しをされたら真っ暗闇
夜は暗くてよく見えない
強い光を当てられてもよく見えない
近くにある顔はよく見えるけれど  後ろにいる顔が見えない
仲間に囲まれて笑顔がたくさん見えるけれど  後ろの風景が見えない

ーー

18.悩み
心の景色はずっと 薄闇 泥沼 濃霧 孤独
頭に居座るのは 金の悩み  労働の悩み
体は立ち上がることを拒否するように眠り続け
目を覚ましてからも毛布に包まり  横たわり  温かさを抱き
このまま終わろうとするように

ーー
19.
楽しい嬉しい悲しい過ぎし日
良くも悪くもお互い変わったり変わらなかったり
会い続けたり会わなくなったり
得たり失ったり
輝かしい思い出  過去に生きる呪縛ではなくて  胸を温めるカイロのような
僕の隣に君が居ても居なくても
僕は歩いて進み続ける

20.

舞を習う  振りを倣う
同じ動きに窮屈さをおぼえ
滲み出るはみ出したい衝動
型破りは型無しというけれど  たまには自由に遊んでみる
俺は元からあなたになりたいわけじゃない  そりゃあ羨ましくもなるけど
自己を目指し行こう


ーー

21.

時間の隙間に言葉を打ち込め
時間の隙間に笑いを挟み込め
時間の隙間に何もするな


ーー

22. 今まで口にした言葉と詩を全て抽出してドリップしたら、彼の思想が取り出せた。彼の行動とは矛盾しているが、その思想が在りたい姿であった。


ーー

23.

朝になり半分目覚めた意識
寒さに丸める体に毛布を包める
眠気まなこに冬がちらつく
冬眠など許されていない獣
怠惰くんがごねていた


ーー

24.

一日一語でもいいから生活の間から湧いたものを縫う。すぐに忘れ去る記憶。縫う手が感情を覚えている。書かれていく輪郭。「ああそんなこともあったね」と、きっと思うだろう。


ーー

25.

沢山の人とすれ違う
みんなそれぞれ思い込みを持っている
親切なのか なんなのか知らないが教えてくれる
これは大事だ  こうした方がいい
集めていたらポッケから溢れるほどで
そういえば俺はどうしたいんだっけ?


ーー

26.

一時に愛せるものには限りがある
僕の手に掬えないものが
あなたの手にある


ーー

27.

思想を記せば道標になるだろう
理想に辿り着くためには体を動かして進むしかない
言葉に現実を変える力があるとしたら書き続けろ歌いつづけろ

ーー

28.

宇多田ヒカルの歌が光る
ような光に  群がる羽虫は口達者
「才能があるから  育ちがいいから」
自らの言葉に灼かれて落ちていった
自らの苦難に光を見出し火を焚べろ

ーー

29.

なんでもない
何者でもない
ありふれた退屈な労働の休憩に
感情が喜ぶことをしてやる
なにもかもをなくして無感動にはなるな

ーー

30.

体を動かすと腹が減る。野菜や果物、肉や魚が高く感じるほど金銭面の問題が未解決。手軽で安いカロリーに手が伸びつつ思う、貧困で肥満化する。日本もアメリカみたいな光景になるのかと。
労働をすると酒が呑みたくなる。このストレス解消と喜びの感じかたは手軽な逃避だ。

ーー

31.

今夜は鋭利な三日月が冴えていましたね。俺らの肉眼は高性能カメラにも負けちゃいないぜ。眼球でシャッターを切って君に見せたいほどに。

ーー

32.

「あいつは変わってる」
良かったじゃないか褒められて
個性が生きてる人のままで

「常識で考えればわかるだろ」
良かったじゃないか褒められて
裸で自由なままで

ーー

33.

いつも身につけている眼鏡やスマホ
「あれ?どこに置いたっけ?」
自分で確かに扱っていたのに記憶から欠落する
そんなどうでもいいことならいいけど
「あれ?俺は何処を目指していたんだ?何をしたいんだっけ?」
どうでもよくないことほど めんどくさくて後回しだ

ーー

34.

自らの通い路・血  水流れ
通い出る  字  地図を記す
書けば書くほど濃く明確になる足跡と行き先
自らに基づいて 自ずから踏み出す足
己が拠り所 唯一の持ち物
何者に成りたくて 何者で在ったのか 行いが物語る
自己満足の自慰を越えて

ーー

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