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覆水盆に返らず

『覆水盆に返らず』とは私が中学、高校生時代どちらか忘れたが、漢文か古文で習った故事成語だ。器をひっくり返してこぼした水は二度と元通りにできない。要は、一度してしまったことは取り返しがつかない、ということだ。

学生時代の私は、(盃から水こぼして、元に戻せん?……でしょうね。やってしまったことは取り返しがつかない?……でしょうね。)と、何を当然なことを言っているんだと思っていた。何でそんな至極真っ当なことが大昔から伝えられてきて、教科書にも載っているのだろうか。当時の私はそんなことを考えていた。

そもそも、故事成語とはそんなものなのかもしれない。ただ、個人的には他の故事成語である『蛇足』『塞翁が馬』などを習った時と同じような感動、新しい発見がなかったのだ。蛇足の時は、(確かにヘビに足つけたら、ヘビじゃないやん!へー「蛇の足」で余分なものって意味なんか)塞翁が馬の時は、(息子、逆にケガしてよかったんやな!あ~人生何が起きるかわからんよなぁ)と思った。
もちろん、あくまでもこれは私の感性の問題だから、覆水盆に返らずを習って感動、新しい発見をした人もいるだろう。

しかし、30歳を超えて分かったことがある。“起きたことは戻らない”と言う事実は、学生時代の自分と今の自分じゃ重みが違うのだ。社会人になり仕事や人間関係での失敗、後悔、やったこと、やられたこと、をなかったことにしたい、忘れてしまいたい、と思うことをたくさん経験した。「仕事で何でこんなミスしたかな」「何であの人にこんな態度取ったかな」「何であの人はそんなことしたんかな」分かっているが本当に起きたことは戻らない。戻すことができない。記憶から消せない。

そりゃ、学生時代にもそんなことはあった。しかし、のほほんと過ごした学生時代の失敗や後悔なんか今思えば、小さいし可愛いものばかりだ。(それは単に時間が経って自分の中で消化されただけかもしれないが)


覆水盆に返らずとは、一度してしまったことは取り返しのつかないこと。
起きたことは元に戻せない。そんなことは学生時代から理解していた。しかし、それを、深く感じるのは学生時代の約2倍の年齢になってからだった。

まぁ、起きてしまったことはどうもできない。その後は、最善を尽くすだけだ。



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