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お客様のテレビが壊れた!家電量販店員の傾向と対策


皆さんこんにちは。ぬです。
今回は、俺の実体験に基づく「家電量販店で働いているあなたがお客様からこう質問されたらどうする?」という、なんの実用性もない記事となっております。

俺は19歳から23歳までの間、某家電量販店でバイトをしていました。
レジ作業が主な仕事でしたが、お店の規模に対して従業員が少ない環境だったので品出し・在庫の確認・簡単な接客・電話対応・修理の受付・工事の手配など結構いろんなことをさせてもらえていたんです。今回はその「修理の受付」に関するお話。

(なんとこの家電店員シリーズ、二回目です。第一回はウン年前に別のブログに寄稿したので、よかったら合わせてどうぞ)


あなたならどうする?


こういうケースを想像してください。
レジに立っているとお店に電話がかかってきました。出てみると、40~50代と思われる女性のお客様からのお問い合わせです。

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客「昨日からテレビが壊れているんです、すぐに修理しに来てください」
ぬ「”壊れている”というのは画面に何も映らないということですか?」
客「そうなんです。早く修理してください!」
ぬ(どうして画面が映らないのだろうか?)

どうやらお客様はテレビが壊れたと思っているようです。話しぶりから察するに、お客様は画面になにも映らないことに困っていて、機械類にはさほど詳しくない様子。

ここから電話越しに情報を聞き出し、なぜ画面になにも映らないのか、テレビの状態はどうなのかを推理した上で適切な処理を行うのが店員としての務めです。

今年の4月から家電量販店員になる方、今家電量販店に転職を考えている方はぜひご覧ください。

プラグが抜けている


勘違いされがちなので初めに触れておきますが、2つ穴が"コンセント"で、それに挿す二又が"プラグ"です。

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「テレビが壊れた」と聞いてまず疑うべきなのがこれ。

家電の説明書には大体「故障かなと思ったら」みたいな名目で、不具合の症状から考えられる故障箇所を逆引きできるような記載がなされています。
様々な家電の「故障かなと思ったら」に共通してまず初めに書かれているのが「電源プラグがコンセントから抜けていませんか?」という内容のもの。

「プラグが抜けることなんてあるかーーーーい!」
と思われるかもしれませんが、「掃除機をかけていて引っ掛けた」「子どもが引っ張ってしまった」「置く場所を変えたあと挿しなおしていなかった」など、何にせよ本当に抜けていることが多々あるのです。

"テレビが壊れていると聞いて、まともにヒアリングもせず出張修理の手配をしたら実はプラグが抜けているだけでした!"なんてことになったら店長からも修理スタッフからもお客様からも怒られます。
それでは以上のことを踏まえて「まずはコンセントにきちんとプラグが正しくささっているか確認してください」と案内しましょう!







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…というのは三流の仕事です。マネしないように。

お客様はテレビが映らないことによって気が動転していたり、不安な気持ちを抱いています。

わらにもすがる思いでお店に問い合わせしているのに、「まずはコンセントから」などという気の抜けた対応では「ちゃんと刺さってます!早く修理してください!」いうような反感を受けたり、"プラグが抜けているはずがない"という固定観念から確認すらしてもらなかったりと事態が好転しません。
そのため、まずはコンセントを自然な流れで確認してもらう必要があります。


それではどうすればいいのかというと
「では、これからどこに不良が起きているか診断いたしますので、まず電源のプラグを一度抜いてさしなおしてください。」と案内することでプラグの確認を促します。
プラグが本当にささっているかどうかを疑うのではなく、プラグがささっている前提で話を進めるのが大事。
その際に「稀に接触不良などで、プラグをさしなおすだけでも直る場合があるんですよ」などと言葉を添えると更によし。

というのも、もし本当にプラグが抜けていただけでテレビは正常だった場合、お客様は少し恥ずかしい思いをすると思います。
そのため、「本当に不具合・接触不良が出ていたけど指示どおり作業を行ったので直りました」と嘘をつきやすい状況を作ってあげるのです。

客「コンセントですか?あっ(抜けてることに気づく)……映りました!ありがとうございます」

ぬ「接触不良だったんですかね?とにかく映ったようでなによりです」

という小芝居をすることでみんなハッピーになれます。
たまに「あ…線が抜けてました…すみません」と恥ずかしそうに謝る素直なお客様もいらっしゃいました。かわいい。


主電源が切れている


リモコンでテレビがつかないと言われたらまずはこれ。
テレビをリモコンで消した場合、多くのテレビはスタンバイ(待機)状態になります。
"主電源が切れている状態"と"スタンバイ状態"は異なり、主電源が切れているとリモコンで電源をつけることができず、テレビ本体についている電源ボタンを押す必要があります、あるのですが。

テレビ本体に電源ボタンがついているということを知らないお客様はそれなりに多く、リモコンを押しても電源がつかないことで壊れたと勘違いされるのです。お客様には前述したプラグ確認作業からの流れでそのまま見てもらうとスムーズです。

ちなみに、"コンセントを一度抜く""主電源を使って電源を切る"などすると主電源が切れます。
大昔に「待機電力をこまめに節電しましょう」的な内容がテレビや雑誌で紹介されるブームがあったんですけど、その頃はテレビで見たままにコンセントを抜いて、慣れないことをしたものだからまたテレビを見ようとしてもテレビがいつもの手順でつかない、壊れた!と勘違いされる人が多かったです。
(余談ですが、最近は節電の技術が発達し、主電源をこまめにオン/オフすると電源の基盤に負荷がかかりむしろマイナスになるという観点から、テレビの主電源は側面や背面など目立ちにくい場所に配置されることが多いです。)

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▲これはAQUOSの取説で紹介されているイラスト


リモコンが壊れている/電池切れ

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リモコンでテレビがつかないと言われたら主電源の次にこれ。
これは家電量販店あるあるだと思うのですが、お客様の言う「電池は新しいのに替えたばかりです」の信用度は「行けたら行く」と同じくらい低いので、もしもリモコンが正常に動いていないと思った場合は本当に新しい電池が入っているかを疑いましょう。

また、これは結構有名な話なのですが、赤外線通信機能のついた携帯電話のカメラでリモコンの先を覗くとリモコンを操作したときに出る赤外線が映ります。
もしもお客様が対応する携帯電話を持っていたらこれを使ってチェックしてもらうのも一つの手です。俺が働いていたお店にはこれを見るためだけのガラケーがデスクに置いてありました。


B-CASカードが抜けている

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電源は入るけど番組が映らないのならこれ。
一般的な話なので詳細は省きますが、今のテレビにはB-CASカードというものが挿入されていて、これが抜けていると放送を受信できません。
「家電などの設定は今まで全て家族に任せてきたため、そもそもB-CASカードの存在を知らない」という人も少なくないです。

そして、そういう人は聞きなれないカタカナ語、小難しい話を拒絶する傾向があります。

ぬ「B-CASカードを確認しt
客 「わかりませんわかりません、私そういうの分からなくてくぁwせdrftgyふじこlp…」

少し極端な表現をしましたが、似たようなことは多々起こりうるので要注意。お客様の話や購入履歴からテレビの型番を割り出し、B-CASカードのスロット位置を取説で確認し、場所をアナウンスしながら実際にカードが入っているか見てもらうのがいいでしょう。


BDレコーダーの不良

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お客様が「昨日ドラマを録画してたんですけど…」と語りだしたら疑うのがこれ。
機械に疎いお客様だと、テレビとレコーダーが独立しているという感覚がない場合があり、「録画していた番組が再生できない=テレビが壊れた」という勘違いが起こりえます。
「さすがに盛ってない?」と思われるかもしれませんが、実話です。

テレビではなくレコーダーの修理ということなら店頭に持ち込んでもらって修理受付するのも一つの手です。
しかし、B-CASカードの話と同じようにこういう人は「機械からケーブルを抜く(および抜いたケーブルを元に戻す)」ことにとても抵抗感や苦手意識を持っている可能性が非常に高いので、言葉選びは指示の内容には細心の注意を払いましょう。
なるべくお客様が知っていそうな言葉で話を組み立てるのが大事です。


アンテナに異常がある

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お客様がテレビを複数台持っていて、その全てが映らないと言われたらほぼアンテナ。
逆に、複数台の内1台だけ映らないとなればアンテナではなくテレビそのものに原因があるわけですね。
一般的にアンテナが壊れるイメージってあまりないと思いますが、アンテナの調整で改善するケースは結構多いです。アンテナに関してはもう現地へ行くしかないため、すぐにサービススタッフへバトンタッチします。
お客様とサービススタッフの間を円滑に取り持つのも店員の大事なお仕事ですね。


テレビが本当に壊れている


ここまでのチェック事項を経てようやく「え、ガチでテレビ壊れてる?」となるわけです。
「テレビが壊れた」という問い合わせで本当にテレビ本体が故障している確率は体感3~4割で、ほとんどはお客様の勘違いや前述の外的要因でテレビの故障に見えていただけだったりします。

本当にテレビが壊れた場合、故障箇所にもよりますが基盤の交換などを行うとウン万円かかるので正直買い替える方がいいのかなと思います。最近テレビ安いですからね。


今回の記事は以上です。
お疲れ様でした。

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