見出し画像

リモートワークとコミュニケーションのグラフ

以前、コミュニケーションはグラフで表現できると考えた。

このときは、組織図をイメージしていたが今回はリモートと物理という観点で考えてみる。

リモートの弊害とその是正

リモートワーク

よく言われるリモートワークの利点は

  • 移動が不要

  • 作業に集中しやすい

欠点として表面化しやすいのは

  • コミュニケーションの不足

  • マネジメントの難化

組織の生産性が個人の生産性とそのネットワークから計算できると考えると、前者を効率的にしやすいのがリモートワークで、後者を効率的にしやすいのが物理的な出社になる。

リモートワークが原因か

リモートワークによって組織の生産性が下がっていると思われるとき、これを確かめる方法は簡単で、実際に出社してみると良い。このとき、次の3つのいずれかが観測できる。

  • 改善したもの

  • 悪化したもの

  • 変わらなかったもの

出社したときに変わったものと変わらなかったものを区別することは重要で、それによってコミュニケーションの問題がリモートワークなのかそれ以外の問題なのかを特定する。

例えば、200人のチームでコミュニケーションが上手くいっていないと感じるなら、それはおそらく人数が多すぎることが直接の原因であって、リモートワークが原因ではないだろう。あるいはレポートラインやコミュニケーションフローが整理されていないことが問題かもしれない。

注意として、出社すると自分の周囲数人だけは高い確率でコミュニケーションが改善されると感じる。それはそれで良いが、それだけで全体が改善されたと考えるのは安直である。マクロに見ると何も変わっていないかもしれない。課題の解像度を上げよう。解像度が上がればそれはリモートでも出社でもどちらでも解決できる問題にできるかもしれない。

物理出社では

  • 密にコミュニケーションをとれるのはデスクの周囲の数人程度

  • たまに起きるコミュニケーションを能動的に取りやすい

    • かもしれない。が、これはカルチャーの問題かもしれない

  • 薄いコミュニケーションはランダムに起きる

後者をノイズと見るか有用と見るか。一方、リモートワークで個人の生産性でどこまで上がるだろうか。

  • 移動時間に人は休んだり、逆に筋肉を適度に使っている可能性

  • 人間は多少のノイズには耐えられるから、一人で集中できることにあまり意味がない可能性

リモートワークで働きすぎになりやすいのは有用なものを失っているからかもしれない。

意思が伝搬するグラフ

コミュニケーションのグラフ

$${n}$$人のメンバーがいるとき、コミュニケーションの組み合わせは$${n (n - 1) / 2}$$である。これは対称行列で表現できる。

$$
\mathbf{P} =  \begin{bmatrix} p_{ij} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} p_{11} && \cdots && p_{1n} \\ \vdots && \ddots && \vdots \\ p_{n1} && \cdots && p_{nn} \\ \end{bmatrix}
$$

対角成分は個人の生産性でこれが伝播したものが組織の生産性という感じ。

リモートワークだとおそらく

  • 個人の生産性は高い

  • 特定のパスは明示的に強い(特定のMTGを行うだろうから)

  • 「他チームの声が聞こえない」を言い換えると、行列が疎である

出社は逆で

  • 個人の生産性に上限がある

  • 特定のパスは明示的に強い(物理的に距離が近い人)

  • 行列が疎ではなく、必ず$${p_{ij} > 0}$$である

ここで$${n < 150}$$としておく(ダンバー数よりは小さいとする)。

論理と感情の伝搬

ここで思った。コミュニケーションは論理と感情で成り立っている説。

$$
\mathbf{P} = \mathbf{L} + \mathbf{E}  = \begin{bmatrix} l_{ij} \end{bmatrix} + \begin{bmatrix} e_{ij} \end{bmatrix}
$$

$${l_{ij}}$$だけの場合、短期的にコミュニケーションは最適化されるが長期的にはoverfitする。これを$${e_{ij}}$$で回避し環境の変化に適合できるようにする。

足し算なのか?感情をホワイトノイズを考えると足し算で良い気がする。出社は感情を伝搬させるのだ。

テキストコミュニケーションで文面がきつく見える問題について。リモートワークでも感情は伝わるが伝わり方が違いそうだ。$${e_{ij}}$$の分布がホワイトノイズでないかもしれない。

出社とリモートは感情というノイズをどう利用するかというデザインなのだ。

おわりに

リモートワークにおいて本当に問題となるのは

  • 本当は出社が有用に働く状況で、出社が必要かどうかわからない

  • 本当は出社が有用に働く状況で、出社が必要ないと認識される

この2つの場合だろう。問題が顕在化しているときはそれを解決するだけなので難しくない。つまり、出社すれば良い。表面上問題がないときの方が難しい。これは出社というオプションをとったときでも同様である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?