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プロ野球における「ホームの声援」は本当に選手を後押しするのか

ご無沙汰しております、のぎのです。開幕まで残り1ヶ月はさすがに嘘だと思っています。

さて、昨年ついにプロ野球に旋律が帰ってきました。新型コロナウイルスの流行に伴い規制されていた声出し応援が実に4年ぶりに解禁され、それに伴い各球団のファンが各球場で喜怒驚楽を爆発させたことと思います。かく言う私もその1人で、観戦したほとんどの試合を外野席で応援し無事に喉を枯らしていました。
この応援についてなのですが、私は「応援は本当に意味があるのか」という問いをTwitter上で見かけたことがあります。当時は声出し禁止の真っ只中であり、このまま応援文化を復活させなくても特に問題はないのではないか、というのがこの問いを投げかけた人の意見だったのですが、昨年「応援なしと応援ありの境目」という世にも珍しいサンプルが生成されることになったので、本noteではこれについて調べていきたいと思います。なお、セ・リーグについては阪神が昨年から声出し応援をしていたためとかではなく私の知見が殆どないため、申し訳ないのですが一旦放置させていただきます。また本文中に記載されている勝率は四捨五入した値を用いています。

1.きっかけ〜異常に強かったZOZOマリン〜

今回このnoteを書き始めるきっかけになったのが我らが千葉ロッテマリーンズが昨シーズン見せたホームでの異常な強さです。2023シーズンのロッテは順位こそ2位だったものの、シーズンを通した勝率はソフトバンクと1毛差の.5072で貯金はわずかに2つ。「ほとんど4位なのにV逸ヅラをするな」と主に東北の方のファンから言われたりしました。
しかしホームでの戦績を見ると42勝28敗2分で勝率はきっかり.600と、28勝40敗3分勝率.411のビジターがウソのように勝ちまくっています。この点だけを見れば独走で優勝したオリックス(ホーム勝率.594)すらもわずかに上回っており、昨シーズンホームで最強だった球団は間違いなくロッテであると言えます。まあオリックスはビジターの方が勝率高いバケモノなんですけど。
このように昨シーズンのロッテのホームでの強さは顕著すぎて話題になるレベルでしたが、昨シーズンは多くの他球団もホームでの試合で強さを見せていました。

2.パ・リーグ全体に見られたホームアドバンテージ

前述の通り、昨シーズンホームで強さを見せたのはロッテだけではありません。2023シーズンのパ・リーグ各球団のシーズン/ホーム/ビジター勝率が以下になります。

オリックス
.619/.594/.643
ロッテ
.5072/.600/.411
ソフトバンク
.5071/.549/.463
楽天
.496/.535/.457
西武
.458/.471/.444
日本ハム
.423/.437/.408

ホーム.531/ビジター.471

見ての通り、オリックスを除いたすべての球団がホームでより高い勝率を記録しています。「単に野球は後攻有利なだけではないのか」という意見もあるかもしれませんが、2015年にBaseball LABに掲載されたコラム「本当に後攻が有利? 同じチーム同士をひたすら対戦させてみた」中に記載されている当時の石川歩が当時のソフトバンク相手に10000回先発した場合の試行データによると、後攻が有利というわけではなくほとんど差がない、それどころか先攻のほうが有利な可能性すらある、という結果が出ています。また、このコラム中に2015年時点でもやはり全体的にホームの方が勝率が高い傾向にあるという記述があるので、こちらの記述をもって最初やろうとしていたピタゴラス勝率との比較によるホームチームの優位性の確認は省略させていただきます。
しかしこのコラム中においても、プロ野球全体においてホームチームの方が勝ちやすい理由については解明に至っていませんでした。そこで今回の主題である「ホームの声援が選手を後押ししている説」について考えていくために、声出し応援の規制により声援のなかった2022シーズンと比較してみようと思います。

3.2022シーズンを見る

2022シーズンにおけるパ・リーグ各球団のシーズン/ホーム/ビジター勝率が以下になります。

オリックス
.539/.521/.557
ソフトバンク
.539/.555/.521
西武
.514/.586/.443
楽天
.493/.429/.557
ロッテ
.486/.486/.486
日本ハム
.421/.493/.352
合計
.500/.512/.486

さっきよりもいくぶんかニュートラルな結果が出てきましたね。完全に結論を決めつけて行き当たりばったりに書いているカス執筆者がいちばん嬉しい展開です。
特筆すべきは西武でしょうか。ホームでの勝率がビジターに比べ1割以上も高く、かつその平均が5割を跨いでいるのは23ロッテに近いホームで不自然なほど強い傾向と言って差し支えないでしょう。…実はこれにはロッテが深く関わっており、この年のマリンスタジアムでの西武戦の成績が10勝2敗なのに対し、ベルーナドームでは4勝9敗。西武がビジターで作った借金8すべてをロッテが作り、かつホームで作った貯金12のうち4割を献上している、という奇妙な対戦成績が生まれた結果ここまで極端な数字が出たと考えられます。
楽天のホーム勝率が極端に低いのは「魔の金曜日」「ブラックフライデー」と称された金曜日18連敗のうち12/18がホームだったことがひとつの原因かもしれませんが、それと同時にホームでオリックスに借金4を作りビジターで貯金6を作ったことも影響が大きかったでしょう。特定の球場で特定のチーム相手に苦手意識を持つというのは決して珍しいことではなく、23ロッテもソフトバンクとの対戦成績がホーム/ビジターで反転して結局5割に収まっていたりするため、極端なホーム勝率を叩き出した球団のひとつの特徴と言えるかもしれません。
また、ロッテからはホームとビジターでの勝率差が1厘もないという珍しい結果が得られました。私を含めたロッテファンが2023シーズンのマリンスタジアムに異常な強さを感じたのは、昨年まるまる1シーズンを使って「ホームとビジターでロッテの強さは変わらん」と教え込まれ続けた結果なのかもしれません。

4.まとめ

今回声出し応援以外の要素が全く同じ2シーズンを比較した結果、ホームの声援で勝率は多少上がる、かもしれない、という結果が得られました。私はめちゃくちゃに文系なので統計的根拠は正直ないですし、そもそも勝数に直すとたかだか2〜3勝レベルの違いじゃないか誤差だろと言われたら頭を抱えて埋まるしかないです。が、もしも本当に少しでもホームチームの勝利に寄与できるのであれば、「応援の意味はある」と言って差し支えないのではないでしょうか。
ロッテの応援が異質なのは有名ですが、昨年は規制前よりもさらに熱のこもった応援が聴こえてきたというファンの声がかなり多く見られました。事実としてホームで選手たちはたくさんファンの声に応えてくれましたし、より熱のこもった応援がより多くの勝利を生み出す、なんて妄言は案外バカにならないのかもしれません。

シーズンまで約1ヶ月。応援、頑張りましょう。

参考文献

本当に後攻が有利? 同じチーム同士をひたすら対戦させてみた | Baseball LAB[ベースボールラボ]プロ野球×データ
http://www.baseball-lab.jp/column/entry/221/

使用データ

プロ野球ヌルデータ置き場f3様
https://nf3.sakura.ne.jp/

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