見出し画像

2023年度プロダクトプロトタイピング授業のまとめ

割引あり

こんにちは、@n0bisukeです。

デジタルハリウッド大学大学院で、プロダクトプロトタイピングという授業の担当教員をしています。普段はプロトアウトスタジオという社会人向けのプロトタイピングスクールを運営しています。

今回は大学院の授業の振り返りになります。


各自がプロダクトプロトタイプを作る授業

ざっくり言うと、とりあえず手を動かして動くものを作って発表する授業となります。

元々、電子工作やハードウェア、IoTといった文脈の授業にはなりますが、最近はChatGPTをはじめとした様々なツールがドンドン出ているので、そういった便利ツールも取り入れつつ授業を実施しました。

プロトアウトスタジオでやってるようなことをベースにやりつつ、ハードウェアのアウトプットに限定したような授業になっています。

3回の授業と宿題 + 最終発表という構成でだいぶタイトな授業ですが、様々な作品が生まれました。

最後こうやってご飯にいけるくらいの盛り上がりになって嬉しい。

ということで様子をまとめておきます。

学生たちの最終アウトプットと振り返り

振り返り記事まで書いてくれてる方を優先的にピックしつつ、プロトぺディア掲載のある作品を紹介していきます。

ちなみに、最終制作以外の宿題などの様子は↑のTogetterにまとめてあります。今回、審査員という形で参加して下さった@chiaki01208さんと@exsussiさんからのコメントも抜粋して載せています。

■ 肩こり改善姿勢矯正椅子

距離センサーを使った肩こり改善椅子のプロトタイプです。

姿勢障害は万病のもと、でも、気づけば姿勢が悪くなっている、、。ということで姿勢が悪くなるとブザーを鳴らしてくれる椅子(?)。ジャイロセンサーが家にないため、距離センサーで作成してみました。

https://protopedia.net/prototype/4633

試してみると結構シビアで改善の余地はありしたが、プログラミング初学者ながらChatGPTに質問しながらハードウェアを用いたプロトタイプ制作に奮闘している姿は印象に残りました。

  • 審査員コメント抜粋

    • ChatGPTを活用して壁を乗り越えているのがとてもよかった

    • 運転する人の姿勢が崩れた時のアラームなど、様々な業界に応用できそう。

    • ChatGPTを頼ってコードが書けていていいなと思いました。きちんと動作し、判別もしていて良かったです。

振り返り記事も書いてくれてますが、赤裸々で良いですね。
プログラミングも入ってくる授業というところで苦戦されていた印象で、最終発表大丈夫かな、、、と心配してましたが最後までやりきってくれて嬉しかったです :) 

もっと初学者に優しいコンテンツを再検討しないとなと反省ばかりです。

実際の講義の課題はわからんことが多すぎてわかるようにするために、Slackでメンバーに相談するのも気がひけるくらいわからないことだらけでした。笑

note記事より

@yuuuuno2さんは授業の途中で出していた怨霊払いエクササイズをはじめアイデアが独特で、スゴウデなクリエイターになりそうな片鱗が伺えます。

■ 爆走兄弟ごっこキット

レッツ&ゴーってみんな知ってますかね?僕が小学校くらいにコロコロコミックとアニメでやっていたような記憶のミニ四駆漫画なんですけど、その作品に出てくるミニ四駆を再現したいプロダクトプロトタイプです。

主人公(あなた)の掛け声にミニ四駆が応え、限界突破したり技を繰り出したりしてくれます。

プロトぺディアより

らしいです。(真顔)

掛け声にミニ四駆が応えて、限界突破したりするらしいです。(真顔)

実装物デモは動画などで見てもらいたいですが、声に反応して進むという実装をしていて、いけ!!そこだ!!!というと実際にミニ四駆が加速するデモになっていました。漫画を見てた側からするとアツいですね。

  • 審査員コメント抜粋

    • こだわりポイントが沢山でよかったです。この講義を受けているだけで作れるものではないので、やってみたい愛情が詰まっていて面白かったです。

    • マイクがないという課題を調べて技術的なチャレンジしてるのが良いと思った。ミニ四駆へのこだわりを感じれた!

    • 純度が高いこだわりがあってよい、あとDEMOが最高でした。

プロトタイプ時点だと音声認識をしている訳ではなく音の大きさをセンシングしているので、止まれ!と言っても加速するという仕様になっていますが、発表会のオチとしても面白かったです笑

振り返り記事をみると、

また、出来上がった物を他の人に見せたりネット公開したところ、思いの外反響があって驚いた。
(…中略)
技術力もさる事ながら、稚拙なもの、技術、アイデアであっても、夢を実現する事、そして世に見せる事が大事なのだなと感じた。

note記事より

といった感じで途中段階で発信することで反響があり、本人の作るモチベーションに還元された模様でした。プロトアウトスタジオで伝えていることを身を持って体感して頂けた様子で、僕としても嬉しいコメントです。

まとめのTogetterにコメント https://togetter.com/li/2221037

@ITi517285481901さんは最初は何かの課題を解決するアイデアを出すタイプかなと思っていましたが、途中で出したミニ四駆アイデアにナイスアウトプット賞という授業内のローカル賞の受賞があり、そこからこういう課題解決ではないアイデアや制作が楽しくなっていったのかな?と予想しています。そうだといいなぁ笑

■ obnizを使ったシンプルな「流れ星プラネタリウム」

Lチカってここまで出来るのかと驚かされた作品です。
サムネイルの何人かが横たわって作品を見ている写真の作品ですね。

きらきら星と星に願いをの曲と共に流れ星が流れてくる様子を再現したプラネタリウム作品です。

流れ星プラネタリウムを考えた。
天井からの導線を長くして不規則に揺らします。
暗闇でObnizを作動。きらきら星の音と共にLチカさせる。
どこから流れてくるかわからない流れ星のワクワク感を体感できる

プロトぺディアより

実際に床に寝て上を見つつ、プラネタリウムを体感するという作品で、"大の大人が地べたに寝転んで、光の軌跡を眺める時間を作れただけでも、ある意味、成功だったと思う。"と振り返りのnote記事にもあるように体験型の作品として今回一番周りを沸かせたプロダクトプロトタイプだったと思っています。実際に体験できるデモは強い

動画撮ってないで僕も横になればよかったと反省しています。苦笑

  • 審査員コメント抜粋

    • 企画が良かったです。傘の内側でプラネタリウムかと思っていたので予想外でした。赤ちゃんをあやすやつ(名前が分からない)に思えました。最終的に、何故傘につけたのかも気になりました。

    • 聴覚と視覚で楽しめる点と、ちゃんと音と光を連動させるところに意図をもたせている点がとても素晴らしいと思いました。

@konishimariさんはobnizが授業当日に手に入らなかったり、OpenAIのAPIのトラブルがあったりと、各授業の受講時点だけみるとかなり遅れを取ってしまっていましたが、宿題でしっかりと巻き返して、人一倍時間をかけて取り組んでくれたんだろうなと思っています。

途中で犬の見守り系のアイデアやプロトタイプも作成していて、課題解決型もアート型もどちらのアプローチもバランスよく進めていたので、今後他のアウトプットも見てみたいですね。

■ ワインでビューーン!

JR東日本のどこかにビューーン!から着想を得て作ったプロダクトプロトタイプです。LINE上でBOTと会話していると自然とワイナリーの情報を画像付きで紹介してくれます。

今回開発したアプリケーションはLINE上で動作し、OpenAIのGPT-4を組み込んだワインでビューーン!のチャットボットとコミュニケーションができます。ユーザーから送信されたメッセージに「ワイン」や「ワイナリー」という単語があれば、ランダムで選ばれたワイナリーの情報が送信されます。同時に、選ばれたワイナリーへ新幹線で旅行をするイメージをDALL-Eによって描画し、その画像も一緒にお届けするシステムとなっています。

Qiita記事より

どこかにビューーン!はランダムに行き先を決定してくれるサービスですが、ワインでビューーン!はBOTと会話しているとワイナリー情報付きで行き先を決定してくれるといったものになります。

LINE Botとして独立してますが、おまけ機能としてE5系プラモがobnizと連動していて、LINE Botが動作する際にE5系プラモが発信するという仕組みになっています。

obnizはこの企画のプレゼンテーション用に実装したおまけで、全てのプログラムが順調に作動すると、プラレールのはやぶさが発車します(祝!)

ちゃんと"おまけ"って書いてあった

僕が東北民なので東北新幹線のはやぶさに使われているE5系を使っているのも好きポイントでした(笑)。はやぶさ、速いよ。

  • 審査員コメント抜粋

    • obnizと連携させて視覚的楽しさを実現させていてとても良いと思う。
      動くところを見たかった。

    • 自分の体験と自分の好きを組み合わせて企画たててるのがとても素敵

    • ワイナリーAPIがあるのか、作ったならすごい。

    • プレゼンの仕方が上手でした。待ち時間を待たずに説明し続けるやり方がすごく良かったです。

    • 好き、が詰まっていてユーモアたっぷりで良かったです。

    • 個人的にはままつフラワーパークのワイナリー画像があって嬉しかったです。

審査員コメントが圧倒的に多く、審査員的に一番刺さったように思えますね!

作者の@am_protomakeさんは授業でもガンガン質問をしてくれて、僕としても打ち返しというかフィードバックのしがいのある学生さんでした。たぶん技術的な質問を一番してくれたような気がしています。

Function Callingを実際に組み込んで関数呼び出しをより自然な形にしていた部分や画像生成AIを組み込んだあたりなどは、今期初めて(出たばかりなので当たり前ですが)採用したトピックだったので僕も勉強したかいがあり、嬉しかったです。

途中作っている様子をSNSなどで眺めていたとき、授業レギュレーションになっているハードウェア連携はどうするんだろと少し心配になってましたが、プレゼン用にしっかりと合わせにくる大人力を見せつけてくれましたね(笑)。

■ HAKAる

距離センサーで身長を測る装置です。
賃貸の家の場合、柱に傷をつけて身長を測ることが出来ないよね、というところから発想に至ったとのことです。

https://www.printout.jp/CL/EVT/TA/017/CL-EVT-TA-017.html

いつでもどこでも身長測る装置として作り始めましたが、制作の過程の中で、物件や家具から置き物までの寸法も測れる便利な装置になれると思います。

プロトぺディアより

(たしか)姿勢が悪くて身長が毎日変動するから測りたいといったモチベーションもあるらしく、独特の観点を示しながらの発表でした。

身長データはスプレッドシートにも記録される
  • 審査員コメント抜粋

    • 身長測定器がどこの病院にもあるわけではないので、ほぼ正確に測れるならいいなと思いました。定規にセンサーをくっつけたらよさそう。

    • 小さい子供がいる家などに特に喜ばれそうな企画で素敵だと思った

    • 今後の発展気になる

振り返りのnote記事にもありますが、@cyrene_cykiさんはルームシェアをしていて発生している日常課題を解決するアイデアをいくつも考えて作っていて、局所だけ見ると一見バラバラなモノづくりをしていますが、実は一貫性のある取り組みをしているんだなと途中で気付かされました。

ぜひ今後も身の回りの課題解決をしてモノづくりを継続していってもらいたいです。

■ lineでハードウエアを制御する

振り返り記事がないので簡単にピックです。
妹さんと同居しているとのことですが、スマホを持っていないため、家に妹さんが帰ったかどうかを検知したいという人感センサプロトタイプです。

"家に誰かいる"という通知が怖すぎると発表会では話題になりました(笑)。

  • 審査員コメント抜粋

    • 「誰かいる」は怖すぎて、見たことある企画でも面白かったです。ただいまというとリアクションが返ってくるのがいいですね。ぬいぐるみにしたらいいと思いました。

    • obnizに様々な機能持たせて、応用させているのは良い

■ Watch out Front!

こちらも振り返り記事がないので簡単にピックです。
歩きスマホによる衝突防止システムで、前から人が来たら人との距離を検知して通知を送るといった内容です。

※歩きスマホを助長してはいません 歩行中は前方を向き歩きましょう

プロトぺディアより

と書いてありますが、試すためには歩きスマホしないといけないし、面白そうなので歩きスマホしたくなるというパラドックスが発表会では話題になっていました。

  • 審査員コメント抜粋

    • 歩きスマホしてるとめちゃくちゃ通知がきて、鬱陶しいなと思うから企画がいいなと思いました。

    • むしろ歩きスマホしたくなる企画でそれはそれでおしろい

個性豊かな発表が多く僕自身も楽しかった

という感じで色々な作品の発表がありました。そんなみんなの発表のようすなどはこちらで振り返ることもできます。


受講生の皆様大変お疲れ様でした。

同じインプットをしているのにこんなに違う方向のアウトプットが出てくるのは皆さんの個性や感性が豊かでそれを具現化できた証拠なんだと思います。

みんなの発表を見れて僕も本当に楽しかったです :) 

ここだけで終わるのは勿体ないので、ぜひ今後も何か取り組みをXでポストしていってくださいね。

(そして、GitHub Codespacesのコードはちゃんとプッシュしましょうね!)

よもやま、個人的な振り返り

といった感じでとりあえず成果発表の振り返りはしましたがここからは個人的な振り返り。

去年までからのアップデートと変更箇所、悩んだポイントなどを振り返ります。ChatGPTが当たり前になってきたタイミングで、授業の役割的にも入れた方が良いよなぁなど考えつつ悩ましかったですね。

ここから先は

1,599字

応援してくれると喜びます。