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シャレムを語りたい

アークナイツのオペレーターについての記事になります。
記事内で「」で囲んでいる部分は全て公式の文章からの引用です。一部翻訳した文章も含みます。

今回はシャレム編です。
全体的に精神分析的かもしれません。一応前回のアレーンの記事から今回と通ずる部分を引っ張っておきます。

前提としてアークナイツは読み手によって大きく表情を変える描き方をします。一つのストーリーの中に希望と絶望が混在しており、どこに焦点を当てるかによって結末の感じ取り方ですら180度真逆になります。

ソーシャルゲームとしてキャラクターがもう数えきれないほどに存在していて、全てを理解することは時間的にも金銭的にも難しい。ユーザーによってわかることとわからないことが存在する。そういったソーシャルゲーム特有の難しさをアークナイツは作り手としてきちんと理解したうえで、逆手にとって様々な読み方を出来るシナリオを構築しているのです。

書くしかなくなっちゃった……。

はじめに注意

この記事はあくまで私が解釈したシャレムというオペレーターの話であり、私が体験したことを通して解釈を行っています。
私の視点はひどく偏り、一貫性がなく、時に矛盾しています。そうなった理由についても、シャレムのことを語るには欠かせない要素となっています。
私はこの視点のことを喜ばしく思っています。誰一人として同じものを見られないけれど、だからこそ貴重に思うのです。
それが私の人生を永遠に苦しめているとしても。

また、学術的に完全に正しい記述が出来ているとも思っていません。あくまで私が得た知識の中で語っています。使っている言葉の正しい意味は各々で調べていただければと思います。

ARMSのシャレム

アットリスク精神状態、ARMSという言葉をご存じでしょうか。ASMRじゃない。
一言で言うと、心の体調を崩した状態です。この状態から病名が付くぐらいに調子が崩れてしまう人もいれば、元に戻ることが出来る人もいます。
前駆状態とも言いますが、私はこの言い方が正しいとは思いません。あくまで少し躓いただけで、そこから必ず転ぶとも限らないのです。
シャレムは幾度となく躓きました。
けれど私たちが知っているのは、どこか危うさを持ちながら、それでも立ち続ける彼の姿です。

第一資料の中で描かれるシャレムは高い社交性と非社交性、与えることに惜しみは無いが受け取ることはしないといった、一見すると相反する性質を地続きに持った人間です。
ですがこれは「誰にも迷惑をかけない」ための、彼の中で一貫した目的のための行動であり、彼は全てを理性で制御しています。
また、第一資料には「幻覚」についての言及もあります。
彼はその幻覚を強く信じているのですが、「悪夢はいまだ世の中にある」という部分はファントムと緋き貴石内で正しかったことが、クリムゾン劇団は無くなっていないことが証明されています。
つまりシャレムの思い込みは体験を間違って解釈しているのではなく、正しく解釈した結果であり、妄想とは似て非なるものなのです。
この「幻覚」は、どちらかと言うとPTSDによるものだと考えています。

第二資料で描かれるシャレムの言動はARMSの陽性症状が認められます。具体的に言えば妄想でしょう。
私はこの時ファントムが実際に後をつけていたと考えていて、シャレムの幻覚ではないと思っています。
なのでここで言う妄想は後をつけられていること自体ではなく、「平和な来訪ではないと考えた」と書かれている通り、それが悪意を持って攻撃してくるかもしれないという思い込みです。
そして彼は「幻影を撒けたと考え」られるまでに自身の精神を回復させて、一度は妄想を脱しました。
ですがファントムがロドスに加入したという情報から、彼はまた同じ妄想に囚われます。
この時には陰性症状である非社交性も見られますが、「必要がなければ、一歩も宿舎から出たがらない」と書かれていることから、必要があれば他者との交流もしていたと思われます。
つまり、シャレムは非常に危うい状態に居ながら、求められるシャレムという人間を演じており、自らの居場所を守り続けていたのだと考えます。
彼がファントム捜索の任務を引き受けたのは、彼の意志でしょう。たとえそれが、「逃避を選ぶことができなかった」という後ろ向きなものでも。
彼は意志決定を行う能力があり、認知障害は見られません。

深淵という存在

シャレムというオペレーター、良い友人である彼と、第四資料で語られる「深淵」。これらはどちらも彼なのです。
その昔、精神分裂病と呼ばれていた病気がありました。これは多重人格と混同されがちですが、一言で表すならば同じ人が全く違う振る舞いをするのが精神分裂病、今で言う統合失調症です。
人格が変わり、持つ記憶が変わるわけではありません。地続きの一人の人間でありながら、気分の浮き沈みによって取る態度が異なり、判断をするのに重要視するものが変化してその時々で全く違った選択をするので、周囲から見れば他人のように見えるのです。
本当に他人ではないのか。そういった疑念が本人に無い訳ではありません。けれど彼は、その状態に名前をつけていません。
彼の「深淵」と呼ばれる状態を、彼自身が「深淵」と呼んだことはありません。またWeiboの紹介文で「シャレム」という名前を「芸名」と呼んだのも彼自身ではありません。
つまり彼は全てを自分なのだと認識したうえで、「自由自在に制御」しているのです。
それが彼が転ばない理由でしょう。

彼は誰よりも、彼自身を知っています。どの「役」を演じているときが「本当」の彼であるかが重要なのではなく、その場の正解を選び続け、演じ続けられることが彼の一貫性なのです。

彼は「本当」にこだわりません。
「いまだ真実を探し求めて」いたファントムは、劇団に求められる「クリムゾンソリティア」を「真実」だと認識したからこそ、劇の中に、「悪夢に囚われ」続けています。
シャレムは「悪夢はいまだ世の中にある」と信じてはいましたが、彼が囚われているというような表現はファントムと違い一言も出てきていません。

彼は統合失調症なのか?

答えはノーです。
シャレムは非常に危うい状態でありながら、ここまでに示した通り統合失調症だと判断するための要素の多くを回避しています。
統合が失調する状態は、統合失調症の患者以外の、ごく普通の人間にも起こります。そして病名がつくかどうかの一番の基準になる部分は、その症状で本人が苦しんでいるか否かではないかと思います。

「役」という言葉の彼にとっての意味

「生まれつき演じる者と定められている」、この言葉はシャレム自身もよく自覚しているでしょう。
劇団側の人間は「自我」を捨て去ることが正しいが、それには苦しみが伴うものだという認識で居ます。なので、シャレムがロドスで「シャレム」という役を続けていることを悲劇のように語り、私たちにもそれが悲劇だと認識させる、ミスリードが意図的に行われているように思います。
私はシャレムのプロファイルを書いたのは全て劇団側の視点を持つ人間だと思っています。つまり全てが「役」を悲劇的なものだと認識させるための文章なのです。

「君は役であり、役こそが君の全てだ。」
全てが彼自身であり、彼は全てを制御することができる。
「役が選ぶものこそが、君の選択だ。」
役が正しいのだと判断したものは、彼が正しいと判断したものである。

シャレムは、深淵は、彼自身の正しさを強く持ったうえでその正しさを遂行しました。
舞台の上で、他人に命じられた美を追い求めよという任務と、自らの正しさを天秤にかけて、彼は答えを選び取りました。
どちらを選んだとしても罪になったでしょう。その中で彼は置かれた状態で自分を守るための最善策よりも、これから自分が生きる上で重要とされるものを重視したのです。
彼には劇団を抜け出して生きていく人生が見えていたのではないでしょうか。

親の前、友人の前、上司の前、恋人の前で、それぞれ態度を変えるのは私たちにだって馴染みのある感覚ではありませんか?
どれが本当の自分かと問われた時の、明確な答えを持っていますか?
シャレムにとっての「役」という言葉は、この感覚に似ているのだと思います。

シャレムのスキルボイス、怖いですよね。
同じ理性的な人間だと思えない、狂ってしまったような声ではありませんか?
ではそれを、ドクターとしてではなく、敵として相対した人間から発せられた言葉だとしたら?
私なら言葉が通じるタイプじゃないかもと思い、攻撃の手を強めると思います。そして斃れた時に、この相手なら不可抗力で、仕方がないのだなと納得できるような気がします。
これも彼が演じる役の一つなのではないでしょうか。

彼の持つ美

シャレムが劇団で主演になり得なかったのは、彼が「芸術の子」だったからだと思います。あまりに演じるという行為が彼にとって自然すぎて、それが生活の一部だったせいで誰も彼の才能に、その本質に気が付けなかったのです。

劇団が評価する美とは、名画や彫刻を見た時と同じような美でしょう。見惚れて、心を奪われる感覚。それを与えられるのがクリムゾンソリティアでした。
けれど優れた芸術を改めて美しいと認識できる人は多くありません。例を挙げるならばピクトグラムです。
多くの人は文字を介さずにピクトグラムの意味を理解します。伝えたいことを的確に伝えることがピクトグラムに求められている役割であり、その記号は役割を果たしているからこそ美しく、優れているのです。
その美しさの在り方が深淵であり、シャレムなのです。

さいごに

シャレムは私がアークナイツを始めるきっかけになったオペレーターで、今もかなり思い入れが強いです。
今までシャレムのことをあまり多く語れなかったのはこの思い入れの強さ故のような気がします。
書き出してみたら意外とすんなりと文章に収まってくれたので、やはりシャレムは美しい人だと思います。

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無理な金額は自重してね。貰ったお金は多分お昼ご飯になります。