UNDERTALEというゲーム アルフィーとアンダインについて……ではなく女の子同士の恋の思い出#2

※この記事はUNDERTALEのPルートネタバレを含みます。
今回は9割個人的な思い出話です。本当に思い出話をしているだけです。







改めて私のアンダイン、「初恋の女の子」の話をする。
彼女は中2・3時のクラスメイトだった。日本舞踊を習い、剣道部のキャプテンをしており、性格も風貌もさっぱりとした、誰もが「あの子はカッコイイよね」と納得するような女の子である。反面、ジャニーズなど当時の女子中学生らしい趣味を持つような「親しみやすい女の子」でもあった。
いつから彼女に劣情を抱き始めたのかはあまり覚えていない。気付けば私は、彼女が私を特別な視線で捕まえてくれることを望んでいた。彼女が抱きしめてくれることを妄想しては、幸福感と苦しさと罪悪感に1人で泣いていた。何をするのか、どんな感覚なのかもよくは分からないまま、彼女に抱かれることを望んでいた。その劣情は、確かに恋だった。

アルフィーのゴミ捨て場デートに相当する出来事は、中2の2学期終業式の日に起きた。
その日は私の誕生日でもあった。中2は私の人生の中でも最も友達付き合いが広く、その日はいろんな友達から祝ってもらっていた。幸せな話である。
終業式が済み、学校全体で大掃除をしていた雑然とした時間のことだった。大掃除もほぼ終わりかけて、校舎のあちらこちらで女の子たちがなんとなく好きなことをしている時間。私も掃除が終わり、なんとなく校舎をふらふらと歩いていたような気がする。

「あー!!なゆちゃんいた!!」

渡り廊下の向こう側から、彼女の声が響いた。

片想いをしたことがある人なら分かるだろう。普段狂おしいほどに相手の名前を心の中で呼び続けているからこそ、反対に相手から自分の名前を呼ばれただけで、弾けそうな気持ちになる。それに加え彼女が私を探していたらしいニュアンスに胸が震えた。
さらに、彼女は近づいてくるや否や、私の手を取った。そして、「こっち来て」と弾むような声でその手を引いたのだ。"彼女と手を繋いでいる。""彼女が私をどこかに連れて行く。"もうパニックだった。縮毛矯正をかけた彼女のセミロングの黒髪が揺れる。12月の寒空が窓の外に広がる。カーディガンから覗く2人の手が、誰もいない廊下を通り過ぎていく。薄暗い芸術棟の廊下を抜け、数段だけの階段を上がり、そして、明かりの付いていない美術室に2人は入った。
訳の分かっていない私は、「なになに」と震える声で笑った。彼女と私は、暗い部屋の中で向き合った。

あまり甘酸っぱいものを期待されるのも悪いので、彼女の言いたかったことと背景を明かしてしまおうと思う。
彼女が属している剣道部メンバーと、私は仲良くさせてもらっていた。そのメンバー内に以前から私と仲良しの子がいるのだが、少し前から彼女らの中で何かがあったらしく、少々折り合いが悪かった。それで、以前からの彼女が、彼女の悪口を私に言っているのではないかと心配したらしい。

「別にあの子はそういうとこあるし、気にしてないよ」
私は笑った。少しでも可愛くいじらしく見られるように。

「なゆちゃんの"好き"とは違うかもしれないけど、私もなゆちゃんのこと大好きだから。それだけ言いたかったの」
彼女は言った。
それだけの言葉だった。それだけの言葉が、私の心に吹き抜けた。

もちろん、その恋が成就することはなかった。彼女とそれ以上をすることもなかった。
ただあの時、私が心の中にどろどろと持っていた思いや、ぐちゃぐちゃに絡んだ気持ちが、一瞬にして溶けていった。一瞬にしてほどけていった。「こんな私が好きになってごめんね」という思いが優しく抱きとめられていった。

あーあ、思い出せば思い出すほどアルフィーがうらやましくなってきた。どうしてあの2人は成就しちゃったんだ。人前でキスしようとしたりなんて熱々だしさ。エンディングでアンダインから近づいていたずらっぽくキスしてるなんて、こっちが夢見ちゃうに決まってるじゃん。私の心の中に住んでいる中学生の私が悶え苦しんでいる。あのTPルート世界の中で末永くお幸せになってくれ。あー、良いなぁアルフィー……。


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