見出し画像

自費出版で小説を出すときの費用と注意点③ 優れた自費出版作品を発掘する活動が続く

情報サイト「プレジデントオンライン」に、日本で最も権威のある美術展の日展と、上下関係が厳しく、金銭体質と言われている書道界の実態を追ったレポートを書きました。お時間のあるときに読んでみてください。

「週刊文春」の取材を受け、宝塚歌劇団を傘下に持つ阪急阪神ホールディングスのコーポレートガバナンス(企業統治)についてコメントさせていただきました(2024年1月4・11日号)。タイトルは「宝塚『闇の金』」です。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、宝塚歌劇団と阪急阪神ホールディングスが改革すべきこと、急務の問題について記事(第2弾)を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、女性の社外取締役や女性のアナウンサー、アスリート、タレントとの関わりについて記事を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、宝塚歌劇団の劇団員の死や宝塚歌劇団の記者会見、阪急阪神ホールディングスの会長や社長の減給処分について記事を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

前回の記事で、大手総合出版社の自費出版部門のあらましを見てきたが、自費出版を中心に出版事業を展開している出版社にフォーカスしてみたい。


日本自費出版ネットワーク

優れた自費出版作品を発掘し、自費出版文化の向上を目指している組織がある。作家、女優、タレント、政治家などマルチな活動をしてきた中山千夏が代表理事(共同代表)を務めるNPO法人日本自費出版ネットワークだ。1996年に設立され、翌年に日本自費出版文化賞を創設。中山は自費出版について次のように語っている。

「私は日本自費出版文化賞の審査のお手伝いをしたのがご縁で、代表理事をお引き受けすることになりました。この賞の選考を続けている中で、驚くほど質の高い作品と出会い、自費出版が果たしている庶民の記録システムとしての貴重な役割を知りました。NPO法人日本自費出版ネットワークはこの他にもいろいろな活動を行っています。一人でも多くの方に、自費出版への興味を持っていただきたい。そして、この社会では独特な、営利にかかわらない文化 NPO 団体としての存在と意義を知っていただきたいと思います」

日本自費出版ネットワークは、講演・イベントなどを開催し、自費出版を振興する事業、自費出版書籍のデータ検索・紹介事業、自費出版に関する情報収集・情報発信などを行ない、2002年から『日本自費出版年鑑』を発行している。

『日本自費出版年鑑』には直近の日本自費出版文化賞の受賞作品の紹介、講評、受賞の言葉、第1回からの受賞作品などが掲載される。日本で唯一の自費出版に関する年鑑で、2021年版が2021年11月に発売された。

日本自費出版ネットワークの会員企業は70社で、その中の自費出版社の何社かを紹介したい。

リーブル出版

高知市に本社を置くリーブル出版(会社名はリーブル)は編集やデザインにこだわり、「写真集、画集、絵本の自費出版」を掲げているが、エッセイや小説などの文章系の自費出版にも力を入れており、累計の出版数は8000書以上に上る。

ホームページには「自動見積もり機能」があり、小説、エッセイなどのジャンル、本のサイズや体裁、装丁のデザインの有無、部数、ページ数、表紙の加工法、カバーやオビの有無、書店販売、ネット販売など流通タイプなどの項目を入力すると、金額が算出されるようになっている。

印刷業からスタートした会社だった経緯もあり、印刷や製本工程も自社で行えることが強みの一つで、比較的安い費用で本を作れる。

リーブル出版の本は、日本グラフィックサービス工業会(略称ジャグラ)が主催する「ジャグラ作品展」で2度の最高賞を含む、3度の受賞をしている。ジャグラ作品展は、ジャグラが設立した1966年から開催されている歴史あるコンクールで、最高賞に輝いたのは、海底の不気味な生き物の絵本『光るもの』(とくひら ようこ著)と『炭都――ときの欠片と追憶の光』(岩﨑拓郎著)。

『炭都』は、国内最大の福岡三池炭鉱や長崎の池島炭鉱、釧路太平洋炭鉱を写した貴重なモノクロ写真集で、これらの重厚感を生かすためには「深い黒を再現する印刷技術」が必要だと、独自の印刷技術「スーパーブラック印刷」を完成させて、ススが手に付きそう、と評される写真集を作った。

これまでにリーブル出版から上梓された書籍には『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』(森田直樹著)、『左遷社員池田 リーダーになる』『出向役員野島、決断する』(いずれも鈴木孝博著)、『花を買う』(畠山理夏著)などがある。

パレードブックス

大阪市北区と東京都渋谷区にオフィスがあるパレードブックス(会社名はパレード)は3つのタイプの自費出版サービスを提供している。自分の本を多くの人に読んでもらいたい場合の「本格タイプ」は書店での販売も視野に入れ、表紙カバーや本文ページまで、書店で目にする本と作り方も品質も同様に制作する。

少ない部数でデザインにこだわり、自分らしさを詰め込んだ本を作りたい人には「少部数タイプ」がある。表紙を150種類のデザインバリエーションから選び、イラストや写真は自由にアレンジでき、30冊から制作できる。

豪華化粧箱付きの「記念本タイプ」は、大切な作品や思い出をまとめたい人に向いており、美しいクロスが貼られた高級感のある表紙に、タイトルや著者名が箔押されていて、俳句・短歌などの作品や故人の遺稿を知人に贈るといった用途に適している。

デザイン制作会社が母体の出版社であるため、装丁のデザインに優れ、写真集や画集、豪華本に強みがある。

書店で販売する場合は、発売日に合わせて新聞、雑誌、Web、TVなど300以上のメディアにアピールする「プレスリリース配信」と、FacebookやTwitterにもリリース情報が投稿され、投稿を見た一般の人が気軽に拡散できる「SNS・ブログ発信」の2種類の無料PRサービスがある(原稿制作費+配信費がゼロ)。

パレードブックスの書籍には、映画化もされた『僕たちは世界を変えることができない。』(葉田甲太著)のほか、『e love smile ~いい愛の笑顔を~ 』(島田妙子著)、『医の旅路はるか 曲直瀬道三とその師田代三喜篇』(服部忠弘著)がある。

青山ライフ出版 

東京都港区に本社がある青山ライフ出版のホームページには、「書店流通タイプ」「インターネット書店 アマゾン販売タイプ」「プライベートタイプ」「絵本・写真集タイプ」「電子出版」の5つの自費出版プランが掲載されている。それぞれの解説が行なうとともに、「自費出版の基礎知識」「書店流通について」「自費出版の価格表」「自費出版マニュアル」などの情報で、分かりやすくナビゲートする。

電子出版や、読者の注文の応じて印刷・出荷するPOD(プリント・オン・デマンド)についても詳しく述べている。電子出版とPODに関しては、この連載の「POD(プリント・オン・デマンド)での出版を探る② 本の設定価格が高くならざるをえない」も参考にしていただきたい。

アマゾンのKindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)に加え、アマゾンPOD(プリント・オン・デマンド)で出版した場合、青山ライフ出版のサービスを利用するといくらになるか。費用の一覧表を掲載しており、336ページの書籍では、以下のような金額になる。

版下制作費が25万9000円、電子化の費用が4万9500円、販売登録料が3万3000円で、合計34万1500円。

電子出版の手順は、著者がテキストファイルでの完成原稿を送付し、出版社側が原稿チェック、簡易編集、文字組み、図版の配置(10点まで無料)、表紙の制作を行い、電子書籍を完成させて著者に送信し、確認・校正作業をする(著者校正は2回まで)。

著者の校正が終わったら、データ変換し、アマゾンに登録して販売される。Kindle出版(電子出版)の登録が完了したら、PODの表紙を制作して登録する。表紙の制作までの作業は、先ほどの価格に含まれている。

オリジナルデザインの表紙を作る場合は3万3000円、定型テンプレート利用の場合は5500円がかかり、イラストや図表の作成は1点5500円~となっている。

青山ライフ出版からは『ぼくがアンモナイトだった頃』(青木ガリレオ&出泉アン著)や『勝てば官軍――敗者のみが知っている歴史の真実』(原口清澄著)などの自費出版作品が誕生している。

風詠社

大阪市福島区と東京都新宿区にオフィスを構える風詠社は、自費出版したい人が出版に何を求めているのかが異なるので、出版の目的、作品の種類、創作のレベル(原稿の完成度)に応じて対応することを基本方針にしている。

原稿募集のための新聞広告や雑誌広告を行っておらず、広告宣伝費用を自費出版の費用に上乗せしない、などのコストダウンを図ってきた。そのためベテランの編集者やデザイナーが本作りに関わっているものの、リーズナブルな価格で、高い品質の出版を可能にした。

委託配本型、注文配本型、私家版、電子出版の4つのタイプに分けて、本の仕様、用紙、発行部数などの解説をし、一定の条件を設定して本の制作費の見積額を掲示している。

紙の書籍を流通させる場合、全国の書店に取次会社を通じて委託配本する方法と、書店からの注文に応じて、取次会社を介して書店に配本する注文配本の2つの方法がある。

委託配本型は、店頭での露出機会を増やし、多くの本を販売するチャンスがあるが、書店からの返本など流通コストが多くかかる。注文配本型は返本のリスクはないが、書店に並ぶチャンスがなく、読者が手に取る機会もない。

書店で販売する際、書店に注文を促す活動をしたり、広告代理店を通じて新聞広告を出すなど、プロモーションのメニューも充実している(有料)。

電子書籍を出版すると、自費出版や専門書を中心とした書籍販売サイトであるBookWayのほか、アマゾンKindle、楽天kobo、iBookstoreなど、20店舗以上の電子書店への配信ができる。

風詠社からは『司馬遼太郎「菜の花の沖」と北前船』(塩見英治著)や『八重の舟』(熊福厚嗣著)といった書籍が出版されている。

日本自費出版ネットワークは、「自費出版ホームページ」という書籍情報サイトを運営しており、自費出版した書籍の著者であれば、誰でも登録できる。書名、著者名、発行所名、印刷所名、サイズ、総ページ数、発行年月日、定価、分類、内容紹介(あるいは著者からのコメント)などが記載されていて、ホームページ掲載費用は5000円(内容公開費用を含む)。

現在7800点を超える書籍が登録されており、このベータベースを基に「自費出版 書籍データ検索」ができる。分類、書名、著者、内容で本が探せる仕組みになっていて、例えば、分類で文芸を選び、内容の欄に「歴史」「恋愛」「冒険」といった任意のキーワードを入力すると、書籍がピックアップされる。

今回の記事では、日本自費出版ネットワークに参画している出版社に焦点を当てたが、このネットワークに所属していない自費出版社は、次回のレポートで紹介したい。(敬称略)

アマゾンのキンドル出版で、2023年8月、ペーパーバックと電子書籍の小説が発売されました。「権力は腐敗する」「権力の横暴や不正を許さない」をテーマにしており、お時間のある方はお読みください。
『黒い糸とマンティスの斧』 前原進之介著

2023年9月25日発売の「週刊現代」で『黒い糸とマンティスの斧』が紹介され、9月27日にネットで配信されました。「現代ビジネス 黒い糸とマンティスの斧」で検索すると、記事が出てきます。時間があるときにお読みいただければ幸いです。


この連載記事は、以下のような流れになっています。
1 小説を書きたいと思い立った「いきさつ」
2 どうしたら小説が書けるようになるの?
3 小説を上手く書くために小説講座を探そう 
4 どの文学賞を受賞すると作家になれるの?
5 文学賞に落選。心機一転再スタートを切る
6 多くの人が小説家を名乗れる時代になった
7 POD(プリント・オン・デマンド)での出版を探る
8 自費出版で小説を出すときの費用と注意点

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?