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【読書記録】愛とためらいの哲学(岸見一郎著)

この本を読もうと思ったきっかけ

恋は盲目という言葉があるように、恋をすると周りが見えなくなることがある。例えるなら、相手が自分の世界の中心になるような感覚。寝ても覚めても相手のことばかり考えている。時に、相手が喜ぶ顔を想像し、幸せな気分になったり、自信のなさから不安が襲って胸が苦しくなったり。果たしてこの想いが相手に届く日が来るのだろうか、さまざまな想いが頭を駆け巡る。いっそのこと恋なんてしなければいいのにと思うこともあるが、好きである気持ちを偽ることはできないし、幸福な未来を望まずにはいられない。
では、幸福な恋・愛とは何なのか。自分の中にないこの答えのヒントを得るために岸見一郎著『愛とためらいの哲学』を読んでみた。

この本から学んだこと、気づき

ネット上には様々な恋愛テクニックが転がっている。恋愛に不慣れな私も、これらの情報を藁をもすがる思いで読み漁った。今振り返ると、自分の状況に都合が良いものばかりを集めていたようにも思える。
この本では相手の心を操る小手先のテクニックではなく、人を愛するということはどういうことなのか、恋愛の原理原則について触れられている。

「幸福」な恋愛ではなく、「成功」としての恋愛

恋愛(結婚)相手を選ぶ際に、その人と一緒に人生を歩むとどのような未来が待ち受けているのか、誰もが想像することだと思う。世間一般では
・社会的地位が高い
・大企業に勤めている
・お金を持ち
・イケメン、美女
などの条件に当てはまる相手と付き合うことが幸せの鍵だと考えられている。幸せな未来が待ち受けていることが容易に想像できるからだろう(本当にそうかは定かではない)。しかし、本書で岸見氏は以下のように述べている。

このように考える人がいう「幸福」というのは、実は「幸福」ではなく「成功」だと私は考える

岸見一郎著『愛とためらいの哲学』(PHP新書、2018年)

この言葉を聞いたときに、ラ・ロシュフコー『箴言集』の中の言葉、「幸福になるのは、自分の好きなものを持っているからであり、他人が良いと思うものを持っているからではない」という名言を思い出した。
世間一般で良いと思われているものを持つことが果たして幸せなのだろうか。自分自身の価値基準で本当にこの人と一緒にいたいと思える人と結ばれることが本当の幸せなのではないだろうか。

恋愛をギブアンドテイクで考えない

自分はこんなに相手のために尽くしているのになぜ想いが伝わらないのか、なぜ同じように愛してくれないのか、思いつめるあまりにこう考えることがあるだろう。岸見氏はこのことについて以下のように述べている。

人に強制できないことが二つあります。尊敬と愛です。

岸見一郎著『愛とためらいの哲学』(PHP新書、2018年)

相手が私をどう思うかは相手が決めることであって、自分でどうにかできるものではないことを私たちはつい忘れがちだ。私たちができることは好きであることを伝えること、好きになってもらえるように努力すること。たとえその想いや努力が伝わらなかったとしても、相手に原因を求めることはできない。

「あなたにこれだけのことをしたのだから、その分、返してほしい」と要求するとすれば、これは取引であって、恋愛とはいえません。恋愛においてギブアンドテイクに固執するとおかしなことになります。

岸見一郎著『愛とためらいの哲学』(PHP新書、2018年)

「私」ではなく「私たち」の幸せ

自分が中心にいる人生のうちは、「私」がどう幸せになっていくかを考える。どのような仕事に就くか、どういった楽しみを持つか、どう生きるか・・・
それが恋愛をすると、自分中心の世界から「あなたと私」すなわち「私たち」が中心の世界へと変わっていく。何をするにしても「私たち」にとって何が幸せなのか、どうしていくべきなのかを主軸に考えるようになる。自分の中の新しい価値観へと踏み出すことになるのだ。

他者が存在しなかった、少なくとも、自分にとって重要な存在ではなかった頃は、何をする時も、人生の主語は「私」であり、追求する幸せは「私の幸せ」です。ところが、誰かを愛し始めると、人はこのような状態から脱却することになります。人生の主語が「私」から「私たち」に変わるのです。

岸見一郎著『愛とためらいの哲学』(PHP新書、2018年)

ただし、相手のことを考えるあまりに盲目の愛となってはいけない。何をすることが本当に相手のためになるのか、「私たち」の幸せにつながっていくのか、稲盛和夫氏の言葉を借りれば『小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり』を肝に銘じ、その場限りでない、将来に渡っての本当の幸せを「私たち」でつくっていくのである。

自分の価値を相手に委ねない

前述した通り、相手が自分のことをどう思うかはコントロールできない。なんとか相手に振り向いてもらいたい、好きになってもらいたいと努力するのは健全な姿勢である。その結果、相手と心が通じ合えば、人生で最高の一日だと思えるほどの幸せを感じることだろう。仮にその反対の結果だとしたらどうか。夢見ていた明日が来ないことを確信し、消えてなくなってしまいたい感情に囚われるかもしれない。
しかし、結果如何に関わらず、そこにいるのはいずれも同じ私である。相手に認められるかどうかに関わらず、そこにいるのは唯一無二の尊い私なのだ。あなたにはあなたにしかない価値がある。相手に自分の存在価値を委ねるのはやめよう。

まとめ

  • 自分の価値基準で幸せと思える恋愛をする。

  • 好きであることを言葉と行動で伝える。

  • 相手に自分の存在価値を委ねない。

この本からはここに書ききれないほど多くのことを学んだ。
この記事をご覧いただいた皆様にはぜひこの本をお読みいただいて、感じたことや気づきを共有していただけるとありがたいです。

今後、どのように活かしていくか

読書は読んで良かったで終わるのではなく、学んだ内容をどう実際の行動に移すかが重要だと思う。この本から学んだことを次のように活かす。

  • 社会の価値基準に左右されず、自分がこの人と一緒にいたいと思える人を見つける。

  • 言行一致。好きであることを行動でも示す。相手からも好きになってもらえるように努力する。

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