経管栄養剤・胃酸分泌抑制薬の相互作用と乳酸Caの適応外使用

◎粘度可塑性流動食とは?

・胃酸のH⁺により液状→ゲル状に形態変化する経管栄養剤

・ハイネイーゲル®…リン酸Caが低pH下でイオン化しCa2⁺が生じ、Ca2⁺がペクチンと反応しゲル化

マーメッド®…アルギン酸Naが胃酸のH⁺と反応しゲル化


◎胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー/PPI/P-CAB)と併用するとどうなる?

・胃内pHが上昇することでゲル化が不十分になる

→液体のままとなってしまうため、逆流・誤嚥性肺炎・消化不良などが起こりうる


◎対策は?

・胃酸分泌抑制薬を中止できない病態の場合は、乳酸Caを併用することでゲル化抑制を防止できる。ただし適応外。

・ペクチンとアルギン酸Naは、H⁺以外にも多価イオン(Mg2⁺、Ca2⁺など)とも反応しゲル化するため、乳酸Caから遊離したCa2⁺とも反応

・ハイネイーゲル®はマーメッド®比べて乳酸Ca併用での粘度上昇が得られやすい


◎注意点

・高Ca血症に注意が必要(特に高齢者や腎機能低下者、活性型ビタミンD服用者など)

・テトラサイクリン系抗菌薬は乳酸Caとの併用で吸収低下するため併用注意

・ゲル化促進が腸内での吸収に影響を与える可能性は否定できないため、乳酸Ca使用時は栄養状態や消化器症状の有無など確認を

(マーメッド®は腸内でpHが上昇することで液状に戻る性質があるが、乳酸Caの併用でそれが抑制される可能性がある)


☆参考文献☆

山本桐絵, 胃酸pHと乳酸カルシウム水和物がハイネイーゲル®・マーメッド®(粘度可変型流動食)の形状変化に与える影響の検証, 日本静脈経腸栄養学会雑誌, 2017 年 32 巻 5 号 p. 1474-1480

https://doi.org/10.11244/jspen.32.1474




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