ベトナム国家主席がまた解任
昨日(3月20日)、電撃的にベトナム国家主席が解任となり、あわせて兼任していた複数の職を辞任しました。前任のフック首席の更迭から後任として就任、わずか1年でクビになってしまいました。
さっくり、これまでの経緯
1) 2023年1月、グエン・スアン・フック国家主席が辞意を表明
コロナ明けの2022年に始まった汚職撲滅キャンペーンで政府高官や大臣、HOSE証券取引所のトップなどが大量逮捕され、2人の副首相と3人の大臣を含む多くの役人が法令違反などを犯しており、非常に深刻な結果を引き起こした」と責任を追求される形で辞任。一説にはホーチミン市の一等地にあったラーメン屋さんの店舗など不動産も元首席の親族所有で取り上げられた(親族の私財も没収)など、「粛清」という言葉が脳裏をよぎる事態となりました。横領と賄賂がものすごい規模で行われていたこともあり、全く無関係ではなかったのだろうという印象です。
2) 副主席のスアンさんが首席に暫定
「これをうけて、(2023/1) 18日午後、臨時国会を開きグエン・スアン・フック国家主席の辞任手続きを完了した。共産党の最高意思決定機関である政治局は、ボー・ティ・アイン・スアン国家副主席を暫定の代行に指名した。」
3) ボー・バン・トゥオン氏が国家主席に就任
2023年3月10日、汚職撲滅キャンペーンを指揮したといわれる最高権力者グエン・フー・チョン書記長に長く仕えた側近が首席に就任。1970年生52歳(当時)で、見た目も若く、これまで外交の顔だったベトナムの国家主席としては線が細い印象でした。
就任演説では断固として反汚職に取り組むとション書記長の路線をまんま表明しました。
4)突然の解任
昨日突如解任となった国家主席ですが詳しい理由は不明。
…と漠然とした理由で、これは日本でも報道されています。
突然の解任、といってもベトナムにお住まいだったり現地のニュースなどを見ている人はトゥオン首席の就任後、それまで首席が行っていた外遊・外交はチン主席がもっぱら行い、賓客対応は副主席や議長などが対応する様子が多くなる一方、トゥオン首席の活動や露出は少なく影の薄いトップという印象は否めず、段々とその度合いを深めていく1年だった印象があります。
副首相や国会議長が賓客対応をするニュースが目立った1年でもありました。。。
5) 副国家主席ヴォ・ティ・アン・スアンさんが代理首席に (3/21時点)
国家主席が居なくなると、副主席が代理になると法律で定められているそうで、21日木曜日に発表がありました。
その時最高権力者は。。。
18日月曜日のニュースでは、再選したプーチン氏にお祝いメッセージを送ったことが報じられています。記事の写真を見るとふたりとも若いので昔の写真でしょうか。
報道の仕方がベトナム…
と「え、そこですかい?」って感じです(笑
更迭の理由ですが、どうやら「人気がない」ということがあるようです。
最近ニュースでも取り上げられている賄賂問題があるという話も出ていますが、今ひとつ釈然としません。というのもトゥオンさんは実力でのし上がった派閥を有する猛者タイプではなく、汚職撲滅キャンペーンで大規模な粛清をしたグエン・フー・チョン書記長さんの力でその座に(突然)座らされたお飾りの要素がある人だからです。そんな人が就任後にわざわざ恐ろしいリスクを取ってお金をもらうでしょうか。若くして首席になったのですから、そのまま座っていたほうが得なはず。
そんなわけで政争がらみで更迭、おそらく実務的にもパッとしなかったのだろうと推測しています。
前任のフックさんは経済博士ですがオゥオンさんは 「哲学学士、社会科学および人文科学の修士号」で、哲学に教えるのがホーチミン思想なお国柄なので共産党べったり、あまり勉学に興味がある人ではなさそうです。
権力者に付き従うときには良かったですが、リーダーとして任せるには少々物足りなかったのでしょう。民主政を否定するわけでは決してありませんが、ダメだとすぐ交代させることができる制度はよいですね、誰が悪いとかまで言いませんが。(笑
他にも首になっていた…!
ときを同じくして、3月20日にはビンフック省人民評議会前議長のホアン・ティ・トゥイ・ランさんが懲戒処分となりました。
こちらは企業の会計不正の調査から収賄が明るみになり逮捕、ということのようです。
基本が賄賂の国で役所(というかすべて警察ですが)に行けば必ずと行っていいほど賄賂を要求されるので「ふーん」という感じですが。。。
ベトナムあるある賄賂
ベトナムで仕事をすると、会社をやっている人や庶務・総務関連の方と話すと何かベトナム人やベトナムという国に対して「まぁねえ。。。ベトナムですから」という態度を多少なりとも感じることがありますが、しばらく居てわかったのは「役所=賄賂)ということです。
交通取り締まりでは免許や書類のチェックよりまず「払う?それとも面倒にする?)という質問がありますし、住所の届け(社会主義なのでどこに住んでいるか届ける義務がある)などのたびにパスポートにお金を少し挟む必要があります。これは外国人だからではなく、ベトナム人でも同じですがODAバラマキ外交の成果でしょうか、日本の赤いパスポートは高く付くことが多いようです。
ちなみに欧米人が横柄な対応をして?でしょうか、「お待たせ大作戦」の餌食になっているのを税務署でみたことがあります。
わたしも税金の還付などは外国人だと1年近くも様々な意地悪をされて何度も書類を出し直させられ(多分帰国して泣き寝入りを待っている)、1年ギリギリくらいのところで還付されたことがあります。
税金の還付は事がお金なのでそもそも賄賂とかも受け付けず、仕事をしなければ着服できるので、という態度が明白な感じがします。
婚姻届に半年も
あらゆる役所が警察か軍隊なので公務員の形が一般的な欧米スタイルの現代の国とは根本が違うのですが、そうした役所での戸籍などの手続きも数ヶ月から半年かかる場合があり、早くしたいときには賄賂が必要です。5万〜10万ほど渡すと超高待遇に様変わりして即日対応、ということもあるようです。
ベトナムで賄賂や不正の問題は日本の価値観では絶対に図れません。
国の全体のモラルの次元が低すぎるので、政治家とかが悪いということではないのです。 日本もモラルの徹底のために人権無視の血みどろの歴史があるので、何が良いのか判断は難しいですが、こればっかりは先祖には感謝せずにいられません。
市民は太っ腹
勘違いしてほしくないのですが、賄賂は仕事の一環としてすでに既得権・報酬権化していて給与はあまり意味がないほど安いこと、ベトナム人も嫌っていること、私生活では守銭奴というより太っ腹で面倒見が良い人が多いということです。
街やビーチで知らない人たちが飲んで盛り上がっているのと目が合うや、
「おーい、君!ちょっとコッチで一杯やらないかい!?」
と言われたり、飲食店などで知人に遭遇すると支払いがいつの間にか終わっているとか、数年で日本の一生分より多く経験した気がします。
また、露天の屋台で軽食を食べたあとお財布が無い事に気がついて事情を説明すると、隣りに座っている人たちが「ウチで払うよ!」と言い出したかと思うと、お店の人も「イヤイヤ、また来てくれればいいよ!」と、昭和コントですか💧っという展開になったりしました。
そもそもロシアがそうだった疑惑
ちなみにロシアでも同じ状況を見ることが出来ます。VISAなどは形骸化していて、お金を出せばビジネスビザも発行されますし、領事館でのビザ手続きも明確にお急ぎ金額が書かれています。(笑
払わないと7〜10日(か、もっと)、1万円払うと3日以内、みたいなロシア国内と同じ感覚ですね。1党独裁になると自浄作用が無いため、こうした役人ルールに陥るのは避けられないのでしょう。
資料:
賄賂の詳しい記事
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