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食卓に、笑顔を届ける料理代行。ーー「ベびんず」 主宰 河内 奈津子さん

「笑顔の連鎖が広がる心地よい暮らし」をテーマに、米子市で料理代行サービスを提供する河内さん。管理栄養士として16年間、病院給食に携わり、3人の子育てをしながら「ベびんず」をオープン。管理栄養士のほかに、ベビーマッサージセラピスト、上級食育アドバイザー、ファミリーバランスサポーターの資格を持ち、子育て中のご家庭など、さまざまなかたちのご家族を笑顔にする活動を行っていらっしゃいます。

起業を決意した際の出来事、そして現在のくらしと仕事のバランスについてお話しいただきました。

起業という選択肢
暮らしと仕事のバランスを考えて

__現在は、どのような事業を行っていますか?

事業の9割を占めているのが、ご家庭のキッチンにお伺いして料理を作る料理代行です。栄養のバランスが気になる時や、産前産後、体が不調な時、自由な時間が欲しいときなどいつでも利用していただきたいと思っています。

そのほかには、自然の食材を生のまま使ったロースイーツ講座もやっています。白砂糖や卵・小麦粉・乳製品を使わないなど、こだわりの食材を用いたレッスン。出来上がったスイーツは、贅沢で甘みもあり、たくさんの栄養を含んでいます。

そして、ダイエットプランニングの準備をしています。一人ひとり異なる遺伝的要素に食事指導を組み合わせて、ダイエットをサポートする事業です。

__事業をはじめた経緯を教えてください。

3人目の子どもの出産後にベビーマッサージに出会ったのがきっかけです。家庭で実践しながら、育休中に資格を取得。学ぶのは楽しかったですね。そこで、ベビーマッサージを事業の中心に2019年5月に起業しました。

もう一つ、「自分の家族のごはんを、自分でつくりたい」という思いがあったことも起業の動機です。仕事復帰を考えたとき、家にいる時間や自由になる時間が取りやすい、起業という選択肢が思い浮かびました。それまで起業するつもりは全くなくて......。子育ての時間を考え、稼働時間に余裕をもたせてゆったりと始めていきました。

「やる!」と決めてから、事業のスタートをするまでの期間は、1か月ほど。「とりあえずオープンしちゃえ。」と思い切って、ちょうど元号が令和になった時にスタートしました。

しっかり休んで、しっかり食事を
食のサポートを通して伝えたいこと


__その後、料理代行をスタートしたきっかけは何ですか?

ベビーマッサージをしている時に離乳食の話をすると、お母さんたちはがんばって離乳食を作っているのに、ご自身はきちんと食事を食べていないことに気が付いたんです。「お昼の食事は?」と聞くと、「食べたかな?」とか「お菓子です」と答えが返ってきたり、菓子パンや、ご飯、プロテインを飲むだけで済ませたりする人もいました。

お母さんが栄養のある食事をとらないと、力が出ない、疲れが取れない、眠れない、イライラするなどの形になって表れてきます。

そこで始めたのが料理代行です。お母さんたちにまずはしっかり休んでもらい、十分な食事や栄養をとってもらう。すると、体も心も動きやすくなっていくだろうと考えて、取り組み始めました。

2020年5月に料理代行の勉強を始め、8月から提供をスタート。その後コロナが流行し行動が制限されたため、里帰りできないお母さんや、家族の協力を得られないまま子育てをする人も増えました。こんな時代だからこそ「料理代行を必要とする人が多くいるはず」と肌で感じていました。

一方、ベビーマッサージはコロナ下での実施をひかえることに。事業の柱は、料理代行にシフトしていきました。

__料理代行で、大事にしていることは何ですか?

管理栄養士として病院給食を作っていた頃から、「一人ひとりに合わせた食事を大事にしたい」という考えを持っています。そこで、「ベびんず」の料理代行では、ご家庭のご希望を伺って、レシピを調整するようにしています。味の好み、食べ方、分量がポイントです。

味の好みはもちろん、使用する調味料も家庭によってかなり違います。また魚を中心にするのか、肉を中心にするのか、野菜の量の好みも家庭によって異なりますね。

また、お子さんと大人では食べ方にも違いがあります。子どもは、2日目も同じ作り置きの料理が出ると食べないこともありますよね。なので、同じ食材を味を変えて作ったり、品数を多めにしたりします。

そして、必要な分量も家族によってそれぞれ。一回にたくさんの量を作ってしまうと、2.3人家族だと毎日同じものを食べないといけなくなってしまうので、ご家族に合わせて調整しています。

はじめての起業ととまどい
家族と仲間の存在が、事業の展開を支えてくれた


__起業の後押しになった出来事、助けになったことはありますか?

まずは、夫の存在です。「起業してみようかな」と話すと、「いいんじゃない」と言ってくれたんです。事業を始めることを踏みとどまる人の多くは、“周囲に反対されるかもしれない”、“夫に言い出せない”のが原因だとよく耳にします。なので、夫が背中を押してくれたのは心強かったですね。

そして、料理代行についての講座を受講したことも起業の助けになりました。

事業を始める前は「もしお客様の家で、何かを壊してしまったり、焦がしてしまったりしたときどうするの?」、「保険に入っていたほうがいい?」などの記事をSNSで目にすることもあって、人の家に伺って料理をすることに不安を感じていました。

講座を受講することで、事前にやり方を学ぶことや、同期の仲間や過去に受講した人との情報共有ができました。月に一回、開かれている共有会もあって、実際に料理代行がどのように行われているかなどを理解しやすい環境でした。

__事業をはじめて、困ったことがあった時はどうしていましたか?

もともと、家で一人作業することは苦ではないタイプなのですが、表に出るのは得意でなくて......。ベビーマッサージを始めた時も、ほそぼそとやればいいかなと思っていました。

知り合いから「なにか変わったことをやりはじめたね」と見られることも苦手で、「注目されると嫌だな。どう思われてるのかな」という思いもあり、自分の中に葛藤がありました。

でも、お客様はお金を払ってきてくださるのだから、「その考えじゃダメだ」と徐々に姿勢が変わっていったんです。起業をサポートする人と出会ったり、起業塾に通ったりする中で、情報発信をするようになりました。

Webサイト や SNS(Instagram) で日々の活動を発信しています)

悩んだ時に支えになったのは仲間の存在です。私より少し前に、仲のいい友人が起業していたので、よく相談していました。「周りの人は、他の人のことをそんなに見てない、関心を持ってないって」と言われて気が楽になったんです。

今でも「発信して、予想外の反応があったらどうしよう」と不安になることもありますが、その度に「大丈夫だろう」と、とらえ直しながら前に進んでいます。その友人が仕事に真剣に向き合っているのを見ると、「わたしも頑張ろう」と思うことができるんですよね。

仕事時間は「ぎゅっと濃い時間」に
お伺いする家庭に寄り添って、食のサポートをつづけたい


__起業した当初に思い描いていた働き方は、実現できましたか?

仕事中は、「ぎゅっと濃い時間」を過ごしたいという思いが強いんです。外で働いていると、休憩時間や、業務量の少ない時間帯も職場に拘束されてしまいますよね。勤めていたころは、空き時間を家族のことに使えたらいいのにと考えていました。

今は、子どもたちが小学校から帰ってくる時間には、家にいることができます。行事のときには仕事を入れないなど、自分でスケジュールも立てやすく、ゆったりと暮らしと仕事のバランスをとることができています。

料理代行の仕事をしているのは、基本的に月曜日から金曜日までの9:30から15:30と、土曜日の13:00〜15:00です。日曜日は完全にお休みにしています。
イベントに出店する時もあって、そこではロースイーツを提供しています。

子どもたちの成長に合わせて働く時間帯が変わる可能性がありますが、夫や近くに住む親とも協力しながら、仕事を続けていこうと思っています。

__この先やってみたいことは何ですか?

「ベびんず」の料理代行では、ただ料理を作って終わるのではなく、各ご家庭に合わせたサポートをすることを大切にしています。

ひとりでやっていると体調不良などで対応できない時、お客さんに迷惑をかけてしまいますが、2〜3人のチームで動くことができれば、交代してもらうこともできます。今後は、「ベびんず」の思いに共感してくれる人とチームでお互いをサポートしながら、米子だけでなく、松江や倉吉くらいまで仕事の範囲を広げていきたいと思っています。

一方で、「自分の子どもや家族との時間を守りつつ仕事をやっていく」。それはきっぱりと決めています。食べていただく方の期待に応えたいという思いに応えすぎてしまうと、仕事と暮らしのバランスが崩れてしまいます。私自身も家族との時間を確保しながら、料理代行を通して、子育て中のご家庭に笑顔をお届けしていきたいですね。

ご自身の家族との時間を大切にしながら、自分の強みである「食」についての知識や技術を活かして、仕事にとりくむ河内さん。食を通して、ご自分のご家族、そしてお客様の家族にも笑顔を育てる種を蒔く、素敵な取り組みだと感じました。河内さん、ありがとうございました。

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