角を打つ、七。

モリタヤ酒店-南千住

2年近く経とうとしている今だから白状すること、
バイト前に、一杯やってしまった、、

短期バイト、仕事の内容上、都内のあちこちをまわってそこで作業をするものだったのだが、そもそも私の住まいは埼玉で、都内といえば、いつもだいたい行く場所は決まっている。
そのバイトでは、なかなか普段は行かないようなところにも行かざるを得ないわけで。
そこに角打ちがあると聞いたら、見逃すことはできないわけで。。
一応、ちゃんとバイトが始まる前に冷ますくらいの時間はあると確認してから、足はもう角打ちの方へ向かっていた。(許してー!)町屋駅で降り、しばらく歩くと住宅街にふっと湧き出たように佇む酒店に辿り着いた。

ここは酒販スペースと角打ちスペースが入り口から分かれている。角打ちスペースは、テーブルがひとつ、それを囲むように長椅子があり、レジカウンターを挟んで向かい側に酒販スペースが見える。
さらに、二階には予約制で貸し切れる部屋(囲炉裏!)もあるらしい。楽しそう。

立ち飲み屋ならまだしも、角打ちに若い女がひとりで入ると、決まって珍しそうな顔をされることがわかってきた、なんなら一瞬張り詰めたような空気になる、その緊張感もまた高まるのだけど、
きっと、誰かのためにお酒を買いに来ただけか、ノリでふらっと入ってしまったけど間違えたか、なんて思われるのだろうか。

ボードに書かれた日本酒飲み比べの文字にワクワクする。でも、さすがにこの日は後を考えてビールを一杯だけ。えらかった、のか、、
食べ物メニューも豊富。南千住のソウルフードと銘打った"にくまん"が有名らしい。
この日はお昼後だったのでたしか乾き物をつまんだ、にくまんは次のお楽しみ。

先客はいなかった、それはそれでそわそわしてしまう
とおもいながら、ひとりちびちび飲んでいたら、常連らしきおじいちゃんがやってきた
そういえば、その方に、昔JICAで働いていていろんな国に行ったんだという話を聞いたなあ、、いま、思い出した
たしか国境なき医師団、たくさんの怪我人や病人を見てきた、と
私には想像を超える世界
それだけ世界を駆け回ってきた人が、こうして郊外の昔ながらの酒屋さんで軽く引っ掛けていくなんて、なんて素敵なんだ。。
私なんて、誘惑に負けて働く前に来てしまったというのに。。。
そのおじいちゃんはサクッと一杯飲んでサクッと帰っていった、理想的な角打ちの在り方だと思う

自分は普段人見知りだし、愛想もいい方ではないと自覚しているけど、角打ちに来ると、謎に打ち解ける力を発揮するときがある
角打ちという場が、ちょっと、ちがう自分を引き出してくれるのか
単純に、普段関わらないような方たちから、普段聞けないような話を聞けるのがありがたく、おもしろい
ここに来なければ交わらなかった人と交わって、もう一生会わないかもしれなくて、
一方で、静かにそこの空気とともに飲んでいるのもまたいいのだけれど
そういう良さも、場所によって全然ちがうな
ただただ、その町の人が、集える場所、としての角打ち。
日本が残してきた財産なんじゃないか、なんて。

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