愛犬が「余命2、3日」といわれたあの日【さよなら①】
数年前の、ある日のこと。
3日前くらいから愛犬が、黒いうんちをするようになった。それ以外は、食事も散歩も普通にして過ごしていた。
ゴロゴロしたり、私のジェラピケの靴下で遊んだりして過ごすものの、抱っこするとキャン!と鳴いた。
朝ぐったりとし、明らかに様子がおかしくなったので病院へ行った。
先生達が長い間わんこの体を触りながら、神妙な顔してなにか話していた。
そこに呼ばれ、「お腹に大きな腫瘍があるね」といわれた。血液検査の結果も悪く、「余命2、3日かな。」と言った。
青天の霹靂だった。
(え、どうにもならないの…?)
「手術と言っても、このこはもう10歳過ぎてるし、麻酔に耐られるか、それに輸血の問題もある…」「ウチでは何もできない、でも大きな病院に行ってみる選択肢はある。」
一旦家に帰った。
そして徒歩圏内にあった救急病院に電話した。事情を話し、急いで向かった。
通常麻酔をかけてとるCTを、愛犬は麻酔をせずにおとなしく受けてくれた。
おじいちゃん先生の言うとおり、20センチ弱の巨大な腫瘍があった。(ちなみに、わんこは超小型犬で体重は3キロ弱。)
「いつ破裂してもおかしくない状態。破裂した途端、貧血をおこし手遅れになる。」(この辺は曖昧)
手術の説明、値段、リスク、輸血の問題。
「ご友人の犬など、輸血のあてはありますか?」
そう聞かれ、戸惑った。
犬の輸血はもちろん犬から。血液型は関係無いらしい。
一旦待合室に出て、実家の母に相談すると、妹の犬を!と差し出されたけど、北海道からわざわざ連れてくる?…かと言って、友人のわんこになんて頼めない…と途方に暮れていると、お医者さんが来た。
「輸血、こちらで用意できそうです。」
とはいえ、手術をしても、そのまま亡くなるというリスクもあると。
「…どうしたい?」とわんこに聞くと、私の方を見た。「まだ頑張れるよ」と言った気がした。
だから決めた。
そのまま入院して、その日のうちに手術になった。
私だけ一旦帰宅。
当時、私は妊娠してなかったけど「こどもにあって欲しかったな。生まれてくる子供にはわんこのことを知っておいてほしかったな。だから頑張って」と、祈った。
「これから手術をします。」
「無事終わりました。」
連絡を逐一もらった。
翌日から毎日会いに行った。
つらそうな顔がだんだん明るくなり、退院する頃には生まれ変わったようなまるまるなお目々で見つめてきた。
腫瘍は悪性とも良性とも言えない、極めてまれな状態。
血液検査の結果からエヴァンス症候群というのも発症していることがわかり、薬を飲みつつ余後を過ごした。
手術をしても、突然の事はあるかもしれないと言われながら、頻繁に病院にかよい、ワンコはその後、3年ちょっと頑張って生きてくれた。
その間に私の妊娠と出産。娘と過ごしてもらう時間も持てた。
私はこの日々を、ご褒美のような時間だと思ってた。
特別な時間だった。
このご褒美の時間には、ワンコの想いがあった事を亡くなった後知る。