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22歳〜26歳くらいまで太宰治をとにかく読みまくっているというかなり痛々しい時期があった。

「御伽草子」とか「走れメロス」とか本当に楽しくて面白い短編集もあるんだけど一番思い入れがあるのは太宰治のデビュー作の「晩年」なんだ。

「晩年」は短編集なんだけど、一つ目が「葉」っていう作品で、ほとんど物語じゃない、散文詩みたいな作品なんだ。

書き始めが
 
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 死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。
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で始まるんだけど、なるほどねって感じじゃん。ふーん、まあまあ、OKOKって感じだよね。

で、「葉」の締めくくりは

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生活。

 よい仕事をしたあとで
 一杯のお茶をすする
 お茶のあぶくに
 きれいな私の顔が
 いくつもいくつも
 うつっているのさ

 どうにか、なる。

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この締めくくりで完全に俺は心を撃ち抜かれてしまった。

こんなにロマンチックで上品で地味で力強くて人間臭くて前向きな文章を俺は後にも先にも読んだことがない。

なんかよくわかんないけど、そういう事が書きたくなったんだ。
今日は良い日だったけど悲しくてさ。100%自分のせいで。
でも頑張るしかないから。
良くなるかわかんないけど。

頑張るしかない。

どうにか、なる。

ならないかもしれないけど。
何にも俺の願いは叶わないかもしれないけど。きっと、今より何かが良くなるかもしれない。

どうにか、なる。

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