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香港 #28

香港に戻る当日。良く眠れないまま朝を迎えた。
私はかつて、これほどまでに自分自身が愛おしいと思ったことはなく、自分の体を両腕でぎゅっと抱きしめた。
彼の側に居たい。もっともっと愛されたい。繋がっていたい。
生まれて初めて沸き起こるそんな感情に少し戸惑った。
鳥のさえずりがどこかから聞こえてきた。ベッドの中で体を丸めながら人生で起きる半分くらいの出来事が、まるで一気に訪れたかのようなこの一週間を振り返った。そして一つ大きな息をついた。

朝食を祖母と一緒にいただいた後、庭の黄色い薔薇を切り、花瓶に生けテーブルに飾った。祖母、私、そして母と3人でいるつもりになって、私は時間の許す限り祖母の話に耳を傾ける事にした。

心を隠したいせいか、いつもより饒舌ぎみの祖母。私の為に無理して朝から笑顔を見せてくれていたが、流石に私が家を出る時間が近づくにつれ、その笑顔も曇り始めた。
「昨年、転職して香港に行くと優亜が行った時、本当は行かないでと言いたかったんよ。美英が辛い思いをした国に、なんの因果で優亜が行くのかと。今日も香港に戻るのはやめてと、本当は言いたいけど・・・」
振り絞るような声で祖母が言うのを聞いてとても心苦しかった。
「おばあちゃん、本当にごめんね。今まで何にも知らずにおばあちゃんに辛い思いをさせてたね。心配かけてたね。でも、私香港が好きなの。まだ向こうで働きたいの。必ず四十九日の法要には帰ってくるから、今は許して」
それしか言えなかった。

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