昆虫食推進がなぜ無駄なのか

実際に昆虫を育てている人や、実際に特定の昆虫を食べる文化のある地域育ちの人はまず昆虫食推進に対して否定的です。

単純な話、育てるのが大変なので。イナゴとか蜂の子も高級食材なんですよね。

餌用コオロギがあるから人間への転用も楽勝みたいな話を実際に育てている人の前でしたら、無限に苦労話を聞かされる事になります。大量にすぐ育つものは大量にすぐ死ぬという鉄則ですね。

大体はコオロギが大変なので餌用ゴキブリをオススメされる羽目になるのですが、あのどこにでも繁殖する厄介者ですらいざ育てようとするとかなり高い温度で保温管理し続けてやらなきゃならず、そして簡単に死なない虫ほど今度は成長が遅く繁殖速度も緩いという鉄則返しが待っています。


それも肉にかわるような食用という事は、安全基準、味や大きさの品質基準、生産量の一定さが現代の食肉レベルに担保された上で肉並みに安価に提供しなきゃならないんです。しかも牛乳製品というチート食材にも対抗しなきゃらならない。

今存在しない生産ラインを莫大な金と手間暇かけて作り上げ、難しい基準をクリアした上で既存のライバルを押しのけて高品質に大量生産しつつ安売りしろって話なわけで、そんなの何らかの巨大な補助金を国から吸いあげないと当然無理だし、ってことはいつもの怪しい団体の出番でしか無く、はいいつものオチという流れでしょうね。


それに、よくコオロギとかの栄養価を高いと勘違いした言説を見ますが、あれは乾燥食品と生の食品を比較しているからです。ずばり水分量の差です。

ビーフジャーキーと生の牛肉を比較したら水分で薄まらないぶんビーフジャーキーのほうがタンパク質の比率が高く栄養豊富と言っているようなもので、どちらかといえば恥ずかしい勘違いに入ります。


プロテインガチ勢や普段料理する人ならすぐ分かると思いますが、汁たっぷりの生のコオロギがタンパク質70%とかになるわけもなく、どの虫も普通に水分が7割くらいです。というか生き物は大体そうです。


そして、定番かつ大敵であるアレルギーと昆虫も無縁ではありません。甲殻類等のアレルギー持ちは当然昆虫なんて食べたらダメです。逆に昆虫食によりカニやエビが食べられなくなる発症ルートも普通に発生します。仮に粉末食品を語る人がアレルギーについてノータッチだったらやっぱり食の素人か悪意があるかの二択でしょう。


まぁこの記事はメリットばかり謳うものへのカウンターなので、逆にこれだけ読むとデメリットしか無いじゃないかというまた別の歪みが発生してしまうので、そういうわけでも無いというのは書き記しておきます。

温暖な気候で保温に光熱費がかからず大量にでかく美味しい虫が育てられる国だったら結構話が変わってくる筈なので。その条件だと美味しい肉や野菜も大量に育てられる気もしますから結局は味や品質での取捨選択になるのでしょうが。

結局どんなネタであっても「正しい話」「良い話」だけを前提にしてる時は大体何か歪んでいるんでしょうね。或いは意図的にそういうことをしている人が居るやつ。

むしろ一昔前まではこういうのって何らかの問題が起きるまで突っ走ってしまい後から公害だのなんだのって騒ぐものだったので、すぐに各所から色々ツッコミが発生するようになったぶん、良い時代になったのかも知れません。

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